ゼロサムの意味や理論とは?ゼロサムゲームやゼロサム思考も解説

経済や投資について語るときに用いられる「ゼロサム」。「ゼロサムゲーム」や「ゼロサム思考」などビジネスシーンで使う関連語も多くありますが、正しい意味を理解していますか?この記事では「ゼロサム」の意味や関連する語の使い方について例文を交えて解説します。

「ゼロサム」の意味とは?

わかりやすく言うと「合計でゼロになること」

「ゼロサム」の意味は、分かりやすく言うと「合計してゼロになること」です。つまり、一方の利益がもう一方の損失になることを意味します。

英語の「zero(ゼロ)」と「sum(合計)」からなるカタカナ語で、漢字で「零和」と表記されることもあります。

「ゼロサム」はゲーム理論の考え方

「ゼロサム」とは「ゲーム理論」という経済理論の中で扱われているモデルのひとつです。「ゲーム理論」とは、複数の主体が互いに影響する中で、最適な行動戦略を分析します。アメリカの数学者フォン・ノイマンと経済学者モルゲンシュテルンによって確立された理論です。

参加者全員の得失点の合計がゼロになるものを「ゼロサムゲーム」と言い、経済や社会学、心理学などに応用されています。

例文
  • 利益の確保のために人件費を削減するのはゼロサムゲームに過ぎず、事業成長が期待できるはずがない。
  • 投資とは期待値の高いものに資金を投じることだ。ゼロサムゲームである投機とは違う。

「ゼロサム」の経済における意味と使い方

「ゼロサムゲーム」の例はFXやギャンブル

「ゼロサムゲーム」の代表的な例とされるのが、FX(外国為替証拠金取引)です。

通貨の価値は相対的であるため、異なる通貨を交換するとき一方の価値が上がれば、必ずもう一方の価値が下がります。つまり、一方が取引で利益を得るともう一方が損質を被るため、ゼロサムゲームと考えられています。

また、勝者が参加者の投じた賭け金を手に入れるギャンブルもゼロサムゲームです。ただし、これらの例は厳密に言うと「ゼロサム」ではない要素もあります。

「ゼロサム社会」ではある者の利益が誰かの不利益に

「ゼロサム社会」とは、富や資源の総量が一定になると、ある階層の利益がその他の階層の不利益となる社会構造を言います。

ゼロサム社会は、アメリカの経済学者サローが説いた理論です。限りある自然に関わる環境問題や所得格差などの解消には、ゼロサム問題の解決が必要になります。

「ノンゼロサムゲーム」に分類される株式

「ノンゼロサムゲーム」とは「ゼロサムゲーム」の対義的な言葉です。「ノンゼロサムゲーム」は、誰かの利益が他の人の不利益になるとは限りません。

株式では、株価が上がれば価値が上がり、株価が下がれば価値が下がります。市場が拡大することで、必ずしも利益と損失の合計がゼロになるとは限らないのです。

「ゼロサム」の心理学における意味と使い方

「ゼロサム思考」とは二者択一に縛られる思考

「ゼロサム思考」とは、一方が得で一方が損という考え方に縛られる認知バイアスのことで「ゼロサム・バイアス」とも呼ばれています。ゲーム理論における「ゼロサム」とは異なり、ゼロサムであるかの判断は個人の主観に過ぎません。

たとえば、自分が損をするときはどんな状況下でも相手が必ず得をするという思い込みがゼロサム思考です。不安なときや完璧を求めるときに陥りやすいとされます。

「ゼロサム思考」はビジネスの停滞も引き起こす

「ゼロサム思考」は、視点が短期的になり常に物事を勝ち負けで考えることで、本質を見失ってしまうことがあります。

交渉においてゼロサム思考に陥れば、両者の折衝点やよりよい結果を見出すことが不可能です。また、ビジネスでゼロサム思考に陥ると、目先の利益に走りがちとなり、将来的には事業停滞を引き起こすリスクがありますので注意しましょう。社内コンフリクトも、背景にはゼロサム思考があるようです。

「ゼロサム」の類語や関連語

「ゼロサム」の類語は「パイの奪い合い」

利益と損失の合計がゼロということは、言い換えれば参加者による「パイの奪い合い」とも言えます。ビジネスにおける市場の奪い合いも、市場の拡大を伴わなければ「ゼロサム」となるわけです。

「プラスサム」「ポジティブサム」は両者がプラス

「ゼロサム」の対義語には「ノンゼロサム」が挙げられますが、さらに、両方がプラスとなる関係を表す「プラスサム」「ポジティブサム」もあります。どちらにも利益となる、「win-win」とよく似た関係です。

企業間のコラボレーションは、「プラスサム」効果を狙ったものと言えるでしょう。

「マイナスサム」は収支の合計がマイナス

「マイナスサム」は、「プラスサム」の対義語で、参加者の収支の合計がマイナスになることです。

たとえば、労使間の交渉は長引くと互いにマイナスになることが多い「マイナスサムゲーム」であり、できるだけ回避すべきものと考えられています。

また、当選金額が販売総額の半分以下に設定される宝くじも、しばしばマイナスサムゲームに分類されます。

「ゼロサムゲーム」は「マイナスサムゲーム」の場合も

「ゼロサムゲーム」の説明例として、よくFX(外国為替証拠金取引)やギャンブルが挙げられます。

しかし、厳密に考えるとFX(外国為替証拠金取引)には手数料としてスプレッド(売値と買値の価格差)が必要です。また、ギャンブルも運営側の取り分が発生することから、視点を変えればこれらは「マイナスサムゲーム」でもあります。

まとめ

「ゼロサム」とは、利益と損失の合計がゼロになることです。経済において、ぜロサムであることは言い換えれば成長がないことでもあります。また、ゼロサムの考え方がときに本質を見失わせることがありますので注意しましょう。