「空隙」はすきまを意味し、文学作品や化学や歯科などの専門用語として用いられることの多い言葉です。日常会話ではなじみが薄いため、細かなニュアンスや使い方が良く分からない方もいるでしょう。
この記事では、「空隙」の意味や例文、類語「間隙」や「隙間」との違いや英語表現を紹介します。
「空隙」の意味と読み方とは?
「空隙」の意味は”ものとものの隙間”
「空隙」の意味は、“ものとものの間に生じた隙間”のことです。また、物理的なものだけではなく、非物理的である心理的な隙間な隙間を表す際にも使われます。
「空隙」の「空」には、”何もない・からっぽ”、「隙」には”すきま・間”の意味があり、似た意味の言葉を重ねた二字熟語に分類されます。
「空隙」の読み方は”くうげき”
「空隙」の読み方は“くうげき”です。「隙」は音読みで”げき”と読むほか、訓読みで「すき」とも読むため、「くうすき」と誤読しないようにしてください。「隙間」は”すきま”と読むため、混同しないよう正しく覚えておきましょう。
また、「隙」を「障」と見間違えて”くうしょう”と読んでしまうこともあるようですが、こちらも誤りですので注意してください。
「空隙」の使い方と例文・関連語とは?
「空隙を埋める」「空隙が生じる」などと使う
「空隙」は、主に書き言葉で「空隙を埋める」「空隙が生じる」のように使われます。また、単独や複合語での専門用語も数多くあります。
- 強度を高めるには、素材の空隙を埋めなければならない。
- 私は彼を失った心の空隙を埋めるべく、新しい趣味に没頭した。
- 学生生活最後の試合に出場が叶わなかったことで生じた心の空隙は、計り知れないほどの大きさだろう。
歯科での「空隙歯列」はいわゆる「すきっ歯」
「空隙歯列」とは、歯並びに隙間が生じている状態を言います。「すきっ歯」と呼ばれる不正咬合のひとつで、歯が小さいあるいは顎が大きく、歯と顎のバランスがとれていないことなどが原因です。
「空隙歯列」は見た目のほか、隙間から息が漏れるため聞き取りにくい発音になったり虫歯や歯周業リスクが高まるなどの機能的な問題も生じます。
土木や化学・薬学での「空隙率」の意味と求め方
「空隙率」とは、土壌や岩石・粒子などの体積に対する隙間の割合をパーセンテージで示したものです。分野によって、間隙率や多孔度などとも呼ばれることがあります。
空隙率は、「隙間の体積÷総体積」で求められます。隙間の体積が測定できない場合には、空隙の体積も含めた「見かけ密度」を用いて「1-見かけ密度/真密度(物質本来の密度)」で求めることも可能です。
「毛細管空隙」とはコンクリート硬化で発生する微小な空隙
コンクリートは、セメントと水の反応によって発熱・硬化します。このとき、反応せず残った水分が蒸発した後に残る微小な空隙が「毛細管空隙」です。
毛細管空隙に水や塩化物イオン、二酸化炭素などが入り込むとコンクリートが劣化する原因となるため、コンクリートの耐久性を高めるには適切な防水対策が必要になります。
「空隙」と類語「間隙・隙間」の違いとは?
類語①「間隙」には時間的な隙間や隔たりの意味がある
「間隙(かんげき)」も、空隙と同様に隙間を意味します。空隙とほぼ同じように使うことができますが、「間隙」は時間的な隙間や人間関係の不和の意味も持つことが特徴です。
「空隙」にも心理的な隙間という意味がありますが、どちらかと言えばぽっかりと空いた隙間というニュアンスです。二者の隔たり・不和という意味や、時間について言うときには「間隙」が適しています。
類語②「隙間」は一般的に使われる言葉
「隙間」は「空隙」に比べて口語で一般的に使用される表現です。「空隙」を使うとき、「隙間」と言い換えても多くの場合問題ありません。
「空隙」は文学作品や書き言葉、専門用語としての用法が多くなっています。日常的な会話で「空隙」を使用すると、なじみがなく相手に伝わらない可能性もあります。適宜「隙間」との言い換えも活用しましょう。
「空隙」の英語表現とは?
「空隙」は英語で”gap”や”void”など
「空隙」の英語表現には、“gap”や“void”などが用いられることが多いです。
「gap」は物理的な隙間や隔たりを、「void」は何もない空間やぽっかりと空いた穴を意味します。心の空隙について言うときには、「the void in my heart」のように「void」を使うのが一般的です。
「空隙率」の英語は”porosity”や”void fraction”
「空隙率」の英語表現は“porosity”や“void fraction”などが挙げられます。「porosity」は”多孔性”、「void fraction」は”空間や穴の割合”という意味です。
このほか、自由体積という意味の「free volume」が用いられることもあります。
まとめ
「空隙」は「隙間」とほぼ同じ意味の言葉ですが、文章としての書き言葉や化学や土木領域、歯科などで専門用語として用いられることが多いです。日常的なシーンでは一般的に「隙間」を用いて問題ありません。
「空隙」というと物理的な隙間をイメージしがちですが、非物理的である心の隙間について言うときにも使えるので、覚えておきましょう。