「ピープルアナリティクス」の意味とは?具体事例や書籍も紹介

大規模データやAI(人工知能)を活用した事例が広がる中で、人事(HR)の領域では「ピープルアナリティクス」と呼ばれるデータ活用の手法が注目を集めています。

今回は、HR領域で成果を上げるための「ピープルアナリティクス」について、意味や背景、導入のメリット・デメリット、また事例や活用できるサービス・ツールをまとめて紹介します。



「ピープルアナリティクス」とは?

「ピープルアナリティクス」の意味

「ピープルアナリティクス」(People-Analytics)とは、「HR領域(ピープル)において、“データ”を活用(アナリティクス)して成果を向上させる手法」のことです。似た言葉にHR Tech(HRテック)がありますが、「ピープルアナリティクス」はよりデータの利活用にフォーカスしている言葉です。

用いられるデータには、「性別」「年齢」といった基本的な情報から、「面接結果」「評価結果」「勤怠情報」「アンケート結果」などの人事情報、またウェアラブルセンサーなどを用いて取得した「行動データ」など幅広いデータが活用されています。

これらのデータを、機械学習やAI(人工知能)で解析することにより、「人の採用・配置・登用」や「従業員業績・満足度の向上」、また「人材育成」や「離職の予防」などに対し、改善施策を生み出していきます。

またAIを活用することで、これまで人間が行っていた業務を自動化し「生産性向上」させる方法としても、ピープルアナリティクスが使われる場合があります。

「ピープルアナリティクス」の背景と方向性

ピープルアナリティクスは、海外で注目を集め、特にGoogleなどでの先進的な取り組みが公開されることによって、広まり始めました。(Googleにおける「People Analytics」という名前のついた組織が基になっていると言われています。)

日本では人事領域にまだまだ主観的な部分も多く、海外と比較すると広がりが遅い状況ですが、現在では、後述の事例のように、さまざまな取り組みがいろいろな機関で行われており、人事領域でのデータ活用によって、新しい事実が明らかになり始めています。

「ピープルアナリティクス」のメリット・デメリット

メリット

人事領域では、これまで「勘・経験・気合い(3K)」で意思決定を行うことも少なくありませんでした。「勘」や「経験」は、一定当たる確率はあるものの、俗人化する部分が多く、組織を長期的に継続させていくための再現性の観点では、不十分と考えられます。

ピープルアナリティクスを導入することで、これまで「勘」や「経験」など、不確かな要素に依存していた部分が定量化され、わかりやすい形で意思決定を行うことができるようになります。

特にAIや機械学習を用いた分析では、これまで人間では見つけられなかった傾向が見つかることもあり、より精度の高い意思決定を行える可能性が増えています。

デメリット

ピープルアナリティクスのデメリットとしては、「データの収集・集計」を行い、「傾向をなんとなく掴む」だけで終わってしまう場合があることです。(人事領域だけでなく、他分野の「分析」でも同様ですが。)

マーケティングなど分野と比べると、データの数が少ないため、適切にデータを集め、適切な分析を行わないと、成果につながりません。また分析が適切でない場合には、間違えた意思決定を誘発してしまう場合があります。

データ分析やAI(機械学習)を理解し、ピープルアナリティクスを利活用できる人材・経営人材が増えないと、メリットを享受することが難しいかもしれません。

「ピープルアナリティクス」の分類

ピープルアナリティクスは、様々な人事(HR)領域での活用が期待されていますが、具体的に進んでいる内容は、以下のように分類することができます

分析対象

ピープルアナリティクスは、主に以下の内容になります。

  • 採用
    • 人材の発掘
    • 人材の評価(書類面接の評価/面接時の評価/入社後の評価予測)
    • 会社と人材の適合度予測
  • 配置(登用)
    • 配置・異動による業績の最大化
    • ハイパフォーマーの特徴抽出
    • 後継者育成計画(サクセッション・プランニング)の立案
  • 育成
    • 研修内容・方法の最適化
    • キャリアパスの設計・提示
    • 従業員満足度・幸福度の最大化
  • 退職
    • 退職リスクの予測

上記以外にも、HR領域におけるのデータ活用は全てピープルアナリティクスと呼ばれることが多いです。また、人事関連領域の業務最適化や効率化の取り組みも、ピープルアナリティクスと呼ばれることがあります。

使用データと分析手法

ピープルアナリティクスで主に用いられるデータと分析手法には、以下のようなものがあります。

  • 使用されるデータ
    • 能力データ(IQ、EQなどの能力特性)
    • 性格データ(適性試験結果などの性格特性)
    • 行動データ(勤怠データやセンサーデータなどの行動特性)
  • 分析手法
    • 集計(有意差や相関などの傾向を見る方法)
    • 分類(カテゴリ(クラスター)によって傾向をみる方法)
    • 比較(類似性によって傾向をみる方法)
    • 予測(モデルを構築し、未来を予測する方法)

特に、機械学習(AI)を用いて、「予測モデル構築」し「未来を予測できる」ことが、大きなトレンドになっています。(「人材の発掘」では、インターネット上のより広範なデータを用いる場合もあります。)

「ピープルアナリティクス」の事例

「Google」の事例

Googleでは、
・採用面接手法の効率化・高度化(面接官によるブレの最小化)
・マネージャーに求められる8つ要素の発見
・チームの生産性を高めるための「心理的安全性」の発見
など、数多くの取り組みが行われています。

re:Work」のサイトでは、取り組みの成果が公開されているので、参考にしてみるとよいでしょう。

「ソフトバンク」の事例

ソフトバンクでは、新卒採用選考において、AI(IBM社のWatsonを利用)を用いてES(エントリーシート)選考の合否を判断する取り組みが行われています。

これまで人事担当者が行っていた内容を「AI」が行うことで、「公平」な選考を行うとともに、75%の工数削減に成功しました。(ただし、「せっかく応募したのに人が見ていないの?」という応募者からの不満を避けるために、担当によるチェックも並行しているようです。)

日本の新卒採用では、大量応募・大量選考が行われているため、ピープルアナリティクス(AI)を、業務効率化に用いる事例は今後も増えていきそうです。

「日立製作所」の事例

日立製作所では、データ分析を活用して「採用における人材ポートフォリオの変更」する取り組みを行っています。これは社内の「ハイパフォーマー」人材をいろいろな角度から分析し定量化することで、将来の「ハイパフォーマー」を増やす取り組みです。

加えて、組織マネジメント手法の1つとして、ウェアラブルセンサーデバイスを用いて、従業員の行動データを計測し、「ハピネス(幸福度)」を計測する試みも行われています。「ハピネス」を高めることで、「従業員の成果」を高めることができると考えられており、「ハピネス」を数値化して改善していく取り組みとなっています。

「セプテーニ・ホールディングス」の事例

セプテーニ・ホールディングスは、「人的資産研究所」という組織を作り、「採用」「適応」「育成」「アルムナイ」の各領域でピープルアナリティクスを行い、その結果を公表しています。

特に人材育成においては、以下の「育成方程式」を提唱し、採用後の人材のパフォーマンスを予測する取り組みを行っています。

育成方程式 : 成長【G】=個性【P】×環境【E】(チーム【T】+仕事【W】)

「PERSOL(パーソル)」グループの事例

パーソルグループ(パーソルホールディングス、パーソル総合研究所)では、「適正配置モデルの構築」「退職予測モデルの構築」「マネージャーのクラスタリング」など、幅広いテーマに対し、ピープルアナリティクスを実践しています。

パーソル総合研究所では、自社内での研究結果をもとに、複数のピープルアナリティクスのソリューションを提供しており、外部企業のサポートも行っています。

「PwC Japan」の事例

PwC Japanでは、データアナリティクスのコンサルティングの1つとして、ピープルアナリティクスを提供しています。具体的には「採用分析」「配属マッチング分析」「ハイパフォーマー分析」「ワークスタイル分析」「退職分析」など、幅広い領域に対し、サービスを提供しています。

※そのほかのピープルアナリティクスの事例は、こちらの記事でも紹介しています。

「ピープルアナリティクス」のサービス・ツール

コンサルティングサービス

ピープルアナリティクスについては、事例で上げた「パーソル総合研究所」や「PwC Japan」などがソリューションを提供しています。

ウェブサービス・ツール

海外では、カナダの「Visier」という企業が、ピープルアナリティクスのサービスを提供しています。

※株式会社トランスでは、ピープルアナリティクスサービス「TRANS.HR」を提供しています。
入社から退職までのHRデータの一元管理を行うことができ、採用時のハイパフォーマーの見極めや退職リスク予測を行うことができるサービスです。

「ピープルアナリティクス」の関連団体・資格

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会」は、「ピープルアナリティクスの普及・推進」を目的とした、一般社団法人です。

「ピープルアナリティクスラボ」というセミナー(勉強会)を開催したり、ワーキンググループ・スタディーグループの活動を行い、会員企業がピープルアナリティクスを学べる場を提供しています。

HRテクノロジーコンソーシアム

HRテクノロジーコンソーシアム」は、「経営・人事分野におけるテクノロジー・データ分析活用の啓発・推進」を目的とする団体です。

コンソーシアムが取り扱う対象分野は幅広いですが、2018年より「ピープルデータアナリスト (People Data Analyst)」の資格を取得できる養成講座を開講し、ピープルアナリティクスを実践できる人材の育成に力を入れています。

「ピープルアナリティクス」の本・書籍

日本において、ピープルアナリティクスは比較的新しい領域のため、まとまった書籍については、出版されていないのが現状です。

少し広範な人事関連の内容にはなりますが、Googleの事例を取りまとめた、以下の2冊はピープルアナリティクスの最初の一歩を知ることができます。

※前述した「re:Work」のサイトにも、最新事例が掲載されていますので、参考にしてみてください。

まとめ

ピープルアナリティクスの意味から、いろいろな事例までを紹介してきました。新しく注目が集まっている分野なので、今後より発展していくことが予想されます。

データという苦手な人も多い分野ですが、しっかりと理解を深めて、会社の将来的な優位性構築に役立ててみてはいかがでしょうか?

ABOUTこの記事をかいた人

アバター

大学院卒業後、コンサルティングファーム、ITベンチャーで勤務。 得意分野はビジネス系全般とスポーツ。