「逡巡する」「逡巡している」と使われる「逡巡(しゅんじゅん)」は、その難解な読みが話題に上ることもあります。「逡巡」の読み方と意味、また使い方について詳しく解説します。単位としての「逡巡」や「逡巡創」などの関連用語に加え、類語・英語訳についても紹介します。
「逡巡」とは?
「逡巡」の意味は”しりごみすること・ためらい”
「逡巡」の意味は、“しりごみすること・ためらい”です。決断がつかずにぐずぐずしている様が「逡巡」です。特に、「深く悩んで前に進めない様・ぐずぐずしている様」を表します。
「逡巡」の読み方は”しゅんじゅん”
「逡巡」の読み方は“しゅんじゅん”です。
「逡巡」は単位としての意味もある
「逡巡」は単位の一つとしても用いられる言葉です。単位としての「逡巡」は、10のマイナス14乗(100兆分の1)を示す単位です。
国際単位系では、「0.01ピコ」または「10フェムト」に相当する単位が「逡巡」で、一分(10のマイナス1乗=0.1)や一厘(10のマイナス2乗=0.01)のずっと先にあるのが「逡巡」です。
「逡巡」の語源は漢字の組み合わせ
「逡巡」の”逡”という漢字は、元々は「田の神を前に頭を下げ進む」様を意味する文字で、転じて”しりぞく”という意味を持ちます。「巡」は「川に沿って進む」という文字の由来から”まわりあるく・一周して戻る”という意味を持つ漢字です。「逡」と「巡」、この二つの漢字を重ねることで「前に進めずにためらっている様」という意味となりました。
「逡巡」の使い方と用例・例文とは?
「逡巡する・逡巡した・逡巡を巡らす」などと使う
「逡巡」は、ためらう様や思い悩む様を表したい場合に「逡巡する・逡巡した」という表現でよく用いられます。「逡巡を見せる(ためらいを見せる)」もよく見られる表現のひとつです。また、文学作品ではしばしば「逡巡を巡らす」という表現も用いられます。
- 転職について彼は長いこと逡巡していたが、ようやく結論が出せたようだ
- 逡巡するのは構わないが、締め切りは守ってほしい
- イレギュラーの発生に、上司もどう舵を取るべきか逡巡しているようだった
「逡巡」は想定外の出来事に対しても使われる
「逡巡」は単に”ためらい”という意味の他、想定外の出来事に対して「尻込みしてしまい、言葉を失う」「気後れしてためらう」というニュアンスでも使用されます。「彼にもらったプレゼントがあまりに高価なもので逡巡してしまった」というと、「高価なプレゼントに尻込みして言葉を失った」という意味にとることができます。
- 突然の大抜擢に、この仕事を受けるかどうか逡巡している
- 目の前で起こった事故に逡巡した
- 会議中に不意を突かれ逡巡してしまい、気の利いた事のひとつも言えなかった
四字熟語「遅疑逡巡・狐疑逡巡」は”疑って決断できないこと”
「逡巡」を用いた四字熟語もあります。「遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん)」はいつまでも疑って決断できないさま、「狐疑逡巡」は、狐のように疑い深くなかなか決心がつかない、決めかねるさまを表します。
「逡巡創」とは”浅い傷”を意味する法医学用語
「逡巡創(しゅんじゅんきず)」は法医学用語のひとつで、自殺者の「浅い切創」を意味します。致命傷となるような傷ではなく、恐怖や未練によって付けられる傷を指す表現で、「ためらい創(きず)」とも呼ばれるものです。
「逡巡」の類語とは?
「逡巡」の類語①躊躇
「躊躇(ちゅうちょ)」とは、”決めかねてぐずぐずすること・ためらうこと”という意味の言葉で「躊躇する・躊躇している」などと使用します。「逡巡」のように「深く思い悩む」というよりは、「最後の一歩が踏み出せずにいる」というニュアンスの強い言葉です。
「逡巡」の類語②葛藤
「葛藤(かっとう)」とは、”二つ以上の考えがぶつかり合うこと”という意味の言葉です。また、「人と人がいがみ合うこと」という意味もあり、「激しく悩む様」を表す際によく用いられる言葉でもあります。「逡巡」のように”ぐずぐずしている”というニュアンスよりも、相反する感情が対立している様・激しく悩む様というニュアンスの表現です。また、「葛藤」は選択肢が複数存在する場合に使いますが、「逡巡」は選択肢がない場合でも使うことができます。
「逡巡」の類語③迷走
「迷走(めいそう)」とは、元々は”定められた道を大きく外れて進むこと”を意味する単語で、転じて「進むべき方向が定まらず、なかなか結論が出ない」という意味で用いられます。「議論が迷走している」という風に否定的なニュアンスで使用されるのが特徴です。
「逡巡」の対義語とは?
「逡巡」の対義語①果断
「果断(かだん)」とは、ためらわずに決断するという意味の言葉です。決断力のあるさまを表す場合にも使われます。「果断の処置・果断に富む」などのように使います。
「逡巡」の対義語②即断・即決
「即断(そくだん)・即決(そっけつ)」はすぐに決断するという意味です。ためらう間もなく決めることから、「逡巡」の対義語になります。
「逡巡」の英語表現と例文とは?
「逡巡」は英語で”hesitate”を使う
「逡巡」を英語で表現する場合には“hesitate”を使うとよいでしょう。「hesitate」には、”躊躇する・行動をためらう”といった意味があります。
「逡巡」の英語表現を使った例文
たとえば、「I hesitated about what I should do.」というと、”どうすべきか逡巡した”という意味です。
また、「どちらにしようか選択を悩んでいる」というニュアンスでは「I can’t make a decision(決めかねている)」という表現を使うこともできます。
まとめ
「逡巡」は”ためらい・しりごみすること”という意味の単語で、「逡巡する」や「逡巡を見せる」という表現でよく用いられます。深く思い悩む様だけでなく、想定外の出来事への戸惑いを示す際にも使える表現です。小説などで目にすることも多いので、ぜひ覚えておきましょう。