今回インタビューさせていただいたのは、英語を取り入れたキッズコーディネーショントレーニング教室を展開する株式会社TEAMOの仲川ひろみさん。コーディネーショントレーニングとは、運動神経を伸ばすトレーニングのことです。
今回はコーディネーショントレーニングがどのようなものなのか、どのような効果があるのかを伺いました。
運動神経は遺伝ではなく、経験で伸ばせる
ーまずは仲川さんが英語とコーディネーショントレーニングを合わせた教室を始めたきっかけを教えてください。
きっかけとは2つあります。まずひとつ目は、サッカーを軸にサービスを展開している母体の会社の既存のお客様であるアマチュアのフットサルプレーヤーの方達から、「子どもに英語を使ってスポーツを教えてほしい」という要望があがっていたこと。体を動かしながら英語を学習していくというのは、教室でするより楽しそうで、集中力がありそうだな、と思って構想を練っていました。
ふたつ目は「私の子どもの運動神経があまり良くない」と感じていたことです。普段の生活や遊びの中でも動きがぎこちなく、「スポーツで体を鍛えたい!」と水泳教室に通わせたのですが、全然伸びなくて。私自身、あまり運動が得意ではなかったので、私に似てしまったなと悩んでいたのですが、そんなときにコーディネーショントレーニングのことを知ったんです。
コーディネーショントレーニングとは、一言で言えば「運動神経を伸ばすためのトレーニング」です。魅力として感じた特徴は、「運動神経は遺伝ではなく経験で伸ばせること」「トレーニングといえど、体を使った遊びで構成できること」などです。
コーディネーショントレーニングについて、インターネットや本で情報を集めるようになり、最終的にはキッズコーディネーショントレーナーの資格を取得するにいたりました。
「遊ぶことで、運動神経が鍛えられる」って子どもには最大のメリットですよね。そして、弊社では彼らの遊びへのエネルギーと集中力を応用してもう一つ、そこに「英語」という要素を入れることで、英語もぐんぐん伸びる、という私たち親にも嬉しいメリットを追加したカリキュラムを組み立て、スクール開校にいたりました。
ー私も運動が得意じゃないので、子どもの頃にやりたかったです……!ちなみに私が今からやっても運動神経は良くなるのでしょうか?
コーディネーショントレーニングは残念ながら、大人がやってもあまり効果がないんです。なぜなら、神経の発達は20歳が100%だとしたら5歳で80%、6歳で90%、12歳には100%、つまり大人と同じくらいまで発達し切ってしまうからです。
そのあとはトレーニングして技術的に向上することや、体力的に成長することはあっても、運動神経自体を伸ばすことはできません。ですが、ゴールデンエイジと言われる5歳から12歳の間にコーディネーショントレーニングを取り入れてあげると、ものすごく運動能力が伸びるんです。
7つのコーディネーション能力を伸ばすことで、どのスポーツもできるようになる
ー将来自分の子どもができたら絶対に通わせたいです!具体的にはどのようなトレーニングをするのでしょうか?
実際にひとつやってみましょう。
一見は簡単そうですが、実際にやってみると頭ではわかっていても体がついてこないんですよね。しかし、ゴールデンエイジの子どもたちがトレーニングをすることで神経の動きが良くなって、スムーズにできるようになります。
最近は早期教育がブームなので、子どもに早くからサッカーや水泳などの習い事に通わせようとする親御さんも多いです。「このスポーツをやりたい!」とはっきりした意思のあるお子さんはそれがいいと思います。
ですが、「まだ何が好きなのか、何が得意なのかわからない」というお子様ならば、特定のスポーツをさせるのではなく、コーディネーショントレーニングを取り入れてあげると、その後にどのスポーツをやっても、そつなくこなせるようになります。
実際に生徒さんの中には、全く縄跳びができなかったのにコーディネーショントレーニングをすることで、自然にできるようになった子もいました。技術的なことをは全く教えていないので、運動に必要な7つの能力をコーディネーショントレーニングで伸ばした結果だと思います。
ー運動に必要な7つの能力とは何でしょう?
これが7つの能力で、ひとつの遊びのメニューで複数の能力を伸ばすことができます。例えば、よく代表例としてあげるのが「鬼ごっこ」です。
鬼ごっこでは、鬼のタッチを避けるため体をそらせながら走り抜けますよね。それは体全体をスムーズに動かすための「連結能力」と、相手と自分との距離感を把握する「定位能力」が鍛えられます。
また、鬼に捕まった瞬間に、「逃げる動作から追いかける動作に瞬時に動きを変える」ことで「変換能力」が鍛えられます。子どもたちもワイワイ騒ぎながら楽しんでいますね。
ーでは逆に、スポーツの専門性を高めるのは12歳からでもいいのでしょうか?
はい、それでも全然追いつけます。コーディネーショントレーニング発祥のドイツや欧米では体育の授業のベースにもなっていて、いろんなアスリートが通ってきている道です。私の3歳の子どもの水泳が上達しなかったのは、通わせるのが早すぎたのも原因のひとつだと思っています。
欧米のスポーツ選手に中学でやっていたスポーツを尋ねると、現在プロとして活躍しているものではないこともよくありますよね。現在バスケのプロスポーツ選手ですが、中学でやっていたのは陸上競技などという例です。
彼らは、コーディネーション能力があるおかげで、どんなスポーツでもある程度はできるので、専門的なスポーツを選ぶ際も選択肢が広がりますよね。
話がそれましたが、ゴールデンエイジの子どもたちは、神経の発達がいちじるしく、この時に大胆に体を使って遊ぶことが、脳・神経・筋肉にさまざまな体験をさせることになります。そこで作られた神経回路が多ければ多いほど、身のこなしがよくなるということです。
これは、運動神経がよくなるだけではなく、とっさの時に自分の身を守れる柔軟な動きの獲得にもつながります。早くから専門的なスポーツをやらせて技術を伸ばすよりも、楽しみながら、長く運動を続けられるための基礎能力を「遊び」で作る、しかもこれを英語で行います。
それが私たちのスクールの特徴です。文部科学省も毎日60分以上の体を使った遊びを推奨していますよ。
ー幼い頃に始めたものがうまくいかなかったら、運動自体が嫌いになってしまう可能性もありそうですもんね。
そうなんです。子どもって本来は体を動かすのが大好きですよね。それなのに、遊びからスポーツになるととたんに嫌がったりする。それは、まだ体の発達そこまでいっていないのに、ハードルの高いことを無理にやらされたりすることで、苦手意識が生まれてしまうのかなと思いもったいなく感じてしまいます。
体の発達にともなった動きをしていれば、ぐんぐん伸びる時期なのに「自分は運動ができない」と思ってしまいます。
そして、子どもだけでなく親も「この子は運動が苦手なんだ」で終わってしまう。以前に私のようですね。
でも遊びでコーディネーショントレーニングすることで運動能力を伸ばしてから、スポーツを始めたら、何をやってもある程度はできるはずなので、苦手意識を持つことなく今後の人生においてスポーツを楽しめるはずです。ベースができていますから。
楽しみながら運動能力を伸ばすことが一番大事
ー“楽しむ”ことを大事にしているんだなと感じます。
トレーニングという名前ではありますが、遊び感覚でできるのが最大のメリットでありポイントです。3歳くらいの子が特定のスポーツをやろうと思っても、できないことが多いんです。水泳教室に行っても泣いてプールに入れない子もいっぱいいます。
でもコーディネーショントレーニングは遊びでできるから、子どもたちもすごく楽しんでくれています。子どもたちが楽しめるように、一人ひとりの居心地の良さは大切にしていますね。
幼少期から子どもが自ら「これがやりたい」というものがあればすぐに始めていいと思いますが、何が好きで何をやりたいかがわからないうちはコーディネーショントレーニングが最適かなと思います。まずは子どもが楽しんで運動能力を伸ばすことがマスト。さらに外国人の先生が教えているので、英語にも慣れるという付加価値をつけています。
ー楽しんで運動神経も伸ばしつつ、英語もできるようになったら最高だと思います。
コーチをする外国人の方は英語がネイティブレベルであることはマストですが、必ずしもアメリカ人やイギリス人とは限りません。日本の企業が一番進出しているのは中国ですし、今は各国で他国籍の方が同じゴールに向かって協力して働いている時代かと思います。
そのように、はたらく現場ではさまざまなイントネーションの英語が飛び交っているので、ネイティブな英語はそのうちのひとつでしかないんです。幼少期に多様な国籍の方と接することは、いろんなカルチャーがあることを受け入れやすくする背景にもなると思っています。
ーまさに多様性の時代に沿っていますね。
今となっては、私の子どもは初めて会った先生にも、われ先にと英語で自己紹介をしに行くんです。外国人相手にも物怖じせず、伝わらないかもという考えもなしに、とにかく英語を喋りたいという姿勢には驚かされましたね。
今までどの英語スクールに通わせてもダメだった子も、初回はコートの中に入って来れなかったのですが、2回目からは先にやっていたお兄ちゃんにつられて大声出して動き回るようになってくれました。子どもたちが楽しいと言ってくれるのは嬉しいし、私自身も多国籍のコーチたちと一緒にゲームやプログラムを考えるのがとても楽しいです。
これからもっといろんな人に、コーディネーショントレーニングの魅力と多様性(ダイバーシティ)を受け入れる大切さを知ってもらえたらと思います。
インタビューを終えて
今回のインタビューでコーディネーショントレーニングを初めて知ったのですが、率直に「将来子どもができたら絶対に通わせたい」と思いました。運動能力は生まれ持ったものだと思っていたので、トレーニングで伸ばせるというのはまさに目からうろこでした。まだまだ私と同様にコーディネーショントレーニング自体知らない人も多いのではないかと思うので、もっと広まればいいなと思います。
現在は埼玉県の浦和校だけですが、今後東京都の赤坂も開講予定だそうです。無料体験レッスンも行っているので、お子さんがいる方はぜひチェックしてみてくださいね。
キッズコーディネーショントレーナー
神田外語大学 英米語学部卒業。大学卒業後、イベント、アパレル、飲食業のPRを経て広告代理店勤務。2017年株式会社TEAMO 取締役に就任。母になってから、コーディネーショントレーニングに魅せられ独学で勉強をスタートし、2020年、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会NESTAのキッズコーディネーショントレーナー資格取得。同年TEAMO ENGLISH PLAY CLUBを開校。現在浦和校、赤坂校を展開中 TEAMO ENGLISH PLAY CLUBのサイトはこちら
伊藤 美咲
ステキな人やモノを広めるフリーライター。1996年東京生まれ、東京育ち。関心のあるジャンルは働き方・ライフスタイル・美容・邦ロックなど。