多職種が手をつなぐことで未来を豊かに。ますがたみきさんに聞くフリー管理栄養士の働き方

今回インタビューしたのは、新潟県のフリーランス管理栄養士・ますがたみきさん。主宰する「はれいろごはん」では、“ママと子どもの健康”をテーマに栄養講座や料理教室で食の大切さを伝えています。

一般的に管理栄養士といえば病院や学校で働くイメージですが、ますがたさんが選んだのはフリーランスの道。食で悩んでいる人に情報を届け、柔軟に活動するためには、このワークスタイルがぴったりだと話します。

フリーランス管理栄養士とはどんな仕事をしているのでしょうか?フリーになったきっかけや仕事内容をお聞きしました。

フリーランスの管理栄養士だからこそできること

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―現在のフリーランス管理栄養士になる前は、どこかに勤めていたのでしょうか?

大学卒業後、地元の総合病院に就職して6年間働きました。そこでは入院患者さんの献立を考えたり、栄養指導をしたり、仕事自体は充実していましたが、妊娠・出産をきっかけに仕事を続けることが難しくなって……。わが子としっかり向き合いたいと退職を決めました。

―フリーランスとして活動を始めるきっかけはありましたか?

子育て支援センターで出会ったママ友たちが、子どもの食に関していろんな悩みをもっていることに気づいたんです。離乳食を食べてくれない、お菓子ばかり欲しがる、栄養が足りているか不安と、キリがないくらいに。それで、自分の管理栄養士資格を活かして、ママたちに食の情報を伝えたら良いのではと考えました。

「子どもの頃からの食習慣が大事」というのは、病院勤務時代から頭にあったことです。若くして病気になるリスクを減らすには、小さい頃からの食習慣がカギを握っています。つまり、子育て中のママは子どもの一生に渡る健康を左右する、大事な役割を担っているんです。

―公務員の道もありますが、選択肢にはなかったのですか?

うーん…ありませんでしたね。保健所や学校、給食センターの仕事は安定しているんですけど、自分が目指す「食に悩む子育てママに伝える」を実現するには難しいかなと。

―フリーランスの道以外ありえなかったのですね。フリーになった直後はどんな活動をしていたのでしょうか?

まずは市で臨時募集していた管理栄養士の仕事を始めました。赤ちゃんの定期健診で栄養指導をするんですけど、その時ママたちに「何か困ってることはないですか?」って聞くんです。すると困りごとが次々と出てくる。自分の子どもの食に関して、心配事は尽きないんですよね。このママたちの悩みを解決するのが、私の役割なんだなと改めて感じました。

「はれいろごはん」の活動とコロナ過での変化

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―2019年2月に“子どもの食”を伝える「はれいろごはん」を立ち上げたそうですね。どんな活動からスタートしたのですか?

活動を始めた当初は、子どもの食に関する講座を月に数回開いていました。例えば、幼児の好き嫌い、腸内環境、離乳食の進め方、妊婦さんのための食講座も好評でしたね。ママたちのリアルな悩みが耳に入ってくるので、テーマは尽きません。

―集客はどのようにしていたのですか?

Facebookページでイベント告知をしたのと、あとは手作りのポスターを作って市内すべての子育て支援センターに貼らせてもらいました。そこでママたちの口コミでじわじわと「はれいろごはん」の存在が広まっていった感じです。

―地道な活動は大切ですね。講座依頼は増えていったのでしょうか?

はい、ありがたいことに講座依頼が増えていきました。これまでに、保育園や児童館、支援センター、カフェ、企業のほか、県や市のイベントなど、たくさんの方へ食の大切さをお伝えする機会をいただけたことを嬉しく思います。

―講座だけでなく、子どもやママ向けの料理教室も始めたそうですね。

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子どもにも食材に触れてもらおうと思いまして、2019年10月に自宅で料理教室も始めました。サラダやマッシュポテトといった簡単な調理のときは、2歳の子でも包丁を使った料理にチャレンジしてもらったんですよ。

―それはすごいですね! ママ向け料理教室の反響はどうですか?

赤ちゃん連れのママに喜んでもらえました。私がこだわっているのは、基本はデモンストレーション形式にすることで、赤ちゃんをお部屋で遊ばせながら、ママたちには話を聞く、メモを取るのに専念できるようにしてもらうんです。

そして、試食の時にはお腹いっぱい食べてもらいます。ママたちからは「こんなにゆっくりランチをしたのは久しぶり!」「おかわりしてもいいですか?」「ふだん食べない子どもが今日はパクパク食べてびっくり!」と胸が熱くなるような感想をもらいまして、食を楽しむ場をつくることの意味をかみしめています。

―講座も教室も盛況だったとのことですが、コロナ禍になってから活動内容を変えたそうですね。

そうなんです。コロナが流行り出した頃、感染リスクが心配だったので、リアルの講座や料理教室をいったんお休みにしました。それに代わって、オンラインでお悩み相談会や栄養講座をやってみたのですが、オンライン会話ツールを使うことが苦手なママも多くて……。届けたい人へ情報を伝えることの壁を感じましたね。現在は、少しずつ講座や教室を再開しています。

多職種が手を携えることで「未来」を明るくしたい

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―コロナで世の中の常識が変わったからこそ、見えてきたことはありますか?

世の中が変わったことで、「はれいろごはん」が目指すものを改めて見直そうと思いました。最終的な目標は「この地域の健康的な未来をつくること」。具体的には、10年後、健康寿命が延びて幸せに暮らす人たちが増えているといいなと。

これまではその夢を実現させるため、講座や料理教室の活動に力を入れてきたんですが、「子どもの食にまつわる専門家を増やしたい」と考え方が変わってきたんです。

私は病院勤務時代、多職種連携したチームとして患者さんをサポートしてきました。同じように、子どもやママを中心に、いろいろな分野の専門家たちが集まって、サポートする形がベストだと思うんです。そのため「同じ志をもつ仲間を集めたい」「若手管理栄養士を育てたい」との考えにシフトしていきました。

―以前から、「同じ志をもつ仲間」との情報交換会をしていたそうですね。

はい、2019年に「はれいろごはん」を立ち上げた時から、月に1回ほどわが家で専門家が集まる勉強会をしています。管理栄養士、薬剤師、スポーツトレーナー、看護師、歯科医、言語聴覚士といった多職種が集まって、毎回テーマを決めて話し合うんです。例えば、子どもの熱中症、アレルギー、便秘、口腔問題、しつけなど、いろんな目線からの意見を言い合っています。

―管理栄養士の知識を広めるために、現在はどんな活動をしていますか。

数カ月前から、県内歯科のスタッフさんに、栄養や食事指導の際のアドバイスをすると同時に、歯科分野の知識を学ばせてもらっています。むし歯を作らせないためには予防が大事になりますが、患者さんから「甘いものがやめられないんです」との悩みをよく受けるそう。そんな時こそ、管理栄養士の知識をお伝えする出番なんです。

歯科以外にも、管理栄養士の知識が活用できる場はたくさんあります。薬剤師や小児科医などが、患者さんから食に関する質問を受けた時に、きちんとした対応ができるようになるため、管理栄養士の知識を伝えていきたいと思っています。

多職種が手をつなぐことで未来を豊かに。ますがたみきさんに聞くフリー管理栄養士の働き方

―フリーといえども、いろんな職種と関わってチームで活動を進めているのですね。

はい、ですが、先輩管理栄養士さんからは「他職種の人に専門知識を教えたら、“管理栄養士という職業の価値”が下がるからやめた方がいい」と忠告を受けたこともあります。

確かにそんな考え方もできますが、私はまずは“食”に目を向けてもらうことが大事だと思います。お医者さんや薬剤師さんが、食の問題で悩んだとき「管理栄養士のますがたさんに聞いてみよう」と頼ってくれるような関係になっていきたいです。

“世界一の美食のまち”として知られるスペインのサン・セバスチャンは、バスク料理全体の成長をめざすために、料理のレシピをオープンソース化しています。それと一緒で、私も管理栄養士に関する情報を出し惜しみしませんし、いろんな職種の人たちが知識をシェアし合って協力すれば、きっと“大きなパワー”になると信じています。

めざすは5年先、10年先の未来を明るくすること。アクティブな健康のスペシャリスト仲間を増やして、地域の人たちが元気に過ごせるまちにしていきたいです。

ますがたみきさんのインタビューを終えて

 

多職種が手をつなぐことで未来を豊かに。ますがたみきさんに聞くフリー管理栄養士の働き方

ますがたさんは目の前の仕事を着実にこなしながら、いつでも遠くの「叶えたい未来」に向かって走っているのが印象的でした。

フリーランスは他者との関りが薄くなるイメージがありますが、ますがたさんの場合は正反対。身軽になったことで、“子どもの食”問題に困る人たちとの距離が縮まり、異なる職種の人たちと軽やかにつながっていく――この行動力とバイタリティーに圧倒されます。

さらに、2児の母でもあり、育児と仕事をバランス良くこなす姿にも尊敬してしまいました。今後も彼女の活動から目が離せません。

ますがたみきさんプロフィール

多職種が手をつなぐことで未来を豊かに。ますがたみきさんに聞くフリー管理栄養士の働き方フリーランス管理栄養士

自身の考えた「食能」をキーワードに、「はれいろごはん」で活動を行う。ママや子どもたちに向けた講座、料理教室、離乳食・幼児食の相談のほか、農家とコラボしたおやつ開発、飲食店のコンサルティング、医師や薬剤師に向けた講習会などを実施。2児の母として、日々の育児にも奮闘中。

HP: https://www.hareirogohan.com/

この記事を書いた人

多職種が手をつなぐことで未来を豊かに。ますがたみきさんに聞くフリー管理栄養士の働き方渡辺まりこ

新潟県在住の取材ライター兼ブロガー。通算取材は500件以上。ヒト、暮らし、まち、趣味など多岐に渡るジャンルの記事を執筆中。取材時の感動を読者に届けられるような記事づくりを心がけている。

 

ポートフォリオ:https://www.watanabemariko.com/

ブログ:https://fooddelivery-love.com/