今回インタビューするのはフリーランスの料理人として働く、さらさん。料理人と聞くと専門学校を出てお店で修行して……というイメージを持つ人も多いと思いますが、さらさんは一般企業への就職や韓国でのワーキングホリデーを経てから料理の道に進んだそうです。
今回はそんなさらさんに、料理人になるまでの経緯や料理の魅力について伺いました。
営業職や韓国でのワーホリを経て、フレンチレストランの厨房へ
ーさらさんは大学を出て一般企業への就職を経験していますが、なぜその後、料理人になったのでしょうか?
私は大学を卒業するまでは実家住みで、一切料理はしてきませんでした。大学卒業後に子ども英会話教室の営業の仕事に就いて、愛媛で1人暮らしを始めると同時に自炊もするようになったんです。
当時の夢は世界一周で、そのために3年働いてお金をためようと思っていました。お金をためるために削れるのは食費だと思って、毎日自炊するようになったんです。
ーもともと料理が好きだったのではなく、節約のために作るようになったんですね。
はい。でも、もともと物作りは好きだったし、この食材でこれだけの料理が作れるんだというのが面白くて、料理にハマっていきました。
一方で営業の仕事は合わず数カ月で退職して、アルバイト期間を経て韓国にワーキングホリデーに行きました。韓国語の翻訳の仕事をしながらゲストハウス生活をしていたら、そこのスタッフをしていた料理人の子と仲良くなったんです。
私はそれまで料理は趣味だと思っていたので、料理を仕事にするというのは私にとって新たな選択肢になりました。韓国語翻訳の仕事は韓国か日本でしかできないけど、どこの国の人でもみんなご飯は絶対に食べるから、料理の方が世界中で仕事ができると思ったんです。
ーでは韓国から帰国して、レストランに修行に行ったのでしょうか?
帰国後はすぐにレストランに入るのではなく、料理動画で有名なクラシルに入社しました。レシピ考案がしたくて入ったのですが、まずはレシピについた質問に答えていくカスタマーサポートの仕事からのスタートでした。プロの料理人の方に聞いたり調べながら答えていたので、たくさんの料理の知識をつけることができたと思います。
でもここで学べるのは家庭料理だけだったので、1年弱くらい働いた後にもっと本格的な料理を学ぶために、青山のフレンチレストランで働くことにしました。
ー料理にもさまざまなジャンルがあると思いますが、なぜフレンチを選んだのでしょうか?
料理って、和食だったら肉じゃが、イタリアンだったらパスタ、中華だったら酢豚みたいなイメージがありますよね。でもフレンチって言われてもあまりわからないじゃないですか。せっかく勉強するなら、可能性が広がっているところに行った方が絶対に面白いと思ったんです。
あとケータリングをやりたいと思ってSNSを見ていると、フレンチで経験を積んでいる人が多かったので、私もフレンチを学ぼうと思いました。
ー実際にレストランの厨房に入ってみていかがでしたか?
レストランで働くなら、最初からお皿洗いや雑用だけでなく料理をやらせてくれるところがいいと思って、事前に20〜30くらいのお店を回ったんです。
その成果もあって未経験の私でも基礎から教えてくれて、すぐにお魚もさばかせてもらったし、シェフも優しくてすごくいいレストランでした。でも数カ月後に閉店することになってしまって……。その後はフレンチのお店2軒で経験を積みました。
フランス修行が中止になり、フリーに。イベントやロケ弁の受注を開始
ーその後、フリーランスの料理人になったのはなぜですか?
2020年の3月にレストランを退職したのですが、本当はその後フランスで旅をしながら郷土料理の修行をする予定だったんです。でもコロナで行けなくなり、働いてたお店も閉じてしまっていたので、そのままフリーになってしまった感じなんです。
ーフリーランスにならざるを得ない状況だったんですね。どんな活動から始めたのでしょうか?
最初はよくイベントを開催していました。もともとパーティーのような人が集まる場所はすごく好きで。今までは参加するだけだったのですが、料理という手段を手に入れたことで自分でも開催できるようになったのは嬉しいです。
旅も好きなので、貸し切りキッチンで世界の郷土料理のコースや、その国にまつわるゲーム大会、シンガーのパフォーマンスなどで楽しめる「旅するキッチン」と題したイベントなどをやっていました。
あとは間借りでお店を開いたり、ロケ弁などのお弁当も作ったりしています。友達やSNS経由で依頼が来ることが多く、最近は好きな芸人さんのロケ弁の注文もあって嬉しかったです。
料理はみんなが幸せになれるすてきな仕事。料理を通じて、すてきな空間を作りたい
ー料理の魅力はなんだと思いますか?
料理は自分の頭でデザインしたものが出来上がるところが好きで、完成したときの達成感と、食べた人が美味しいと喜んでくれることが嬉しいです。料理はみんなが幸せになれる、すてきな仕事だと思ってます。
ー料理をする上でのこだわりはありますか?
私の料理は化学調味料を一切使いません。フレンチ料理は、作るときには普通なら捨てちゃうような野菜のくずや皮も、サラダやスープなどに全部使うんです。
化学調味料はうまみを出すものだと思うんですけど、うまみって、キノコでもあさりでも野菜のクズでも出せるんですよね。だから化学調味料もいらないし、食材を活かすことで料理もグッと美味しくなるんです。そういうところもフレンチの魅力だと思います。
あとお弁当は、フレンチのプレートをボックスに収納するイメージで作ることで、他とは違うものになっていると思います。フランス料理のメインの周りに付け合わせがあるのと同じように、野菜を入れたり、料理に合うようにバターライスにしたりと工夫しています。
ーさらさんのお話からは料理が好きなことが伝わってきますが、これまでの活動の中で大変だったことはありますか?
初めて間借りでお店をやったときには、もう2度とお店をやりたくないと思うほど失敗してしまったんですよね。レストランってただ料理を出すだけじゃなくて、カトラリーの準備やテーブルの大きさが適切か、掃除ができているかなど、料理以外の空間まで気を配る必要があります。
でも私は料理さえできればいいと思っていたので、全然準備ができていなくて。しかも全部ひとりでやっていたので、せっかく来てくれたお客さんをすごく待たせてしまったんです。
お店を開くということが全然わかっていなかったのに、やりたいという気持ちだけでやってしまったので、もっと人に頼ることが大事だと気づきました。2回目以降は反省を活かしてお手伝いさんも呼んで、ちゃんとうまくできたのでよかったです。
ー最後に今後の目標を教えてください。
今後もロケ弁を作ったり、ホームパーティーなどの出張料理、料理教室などを通じて、すてきな空間を作っていきたいなと思っています。私は常に輝いている場所にいたいという願望があって、有名になりたいという思いもあって。もっと料理などで私のことも多くの人に知ってもらえたら嬉しいです!
インタビューを終えて
冒頭にも書いたとおり、料理人といえば専門学校を出てレストランで修行して……という印象があったので、さらさんが一般企業への就職やワーホリの経験をしていることを聞いたときはすごく驚きました。
また化学調味料を使わないことも、健康面はもちろん、素材を無駄にしないという面でもすごくすてきだなと思います。ぜひパーティーのケータリングやお弁当など、さらさんの料理を一度味わってみてください!
伊藤 美咲
ステキな人やモノを広めるフリーライター。1996年東京生まれ、東京育ち。関心のあるジャンルは働き方・ライフスタイル・美容・邦ロックなど。
Sara/フードデザイナー、料理人
料理動画のクラシルからフレンチレストラン数店舗経てフリーランス料理人に。
ロケ弁,ケータリング,レシピ考案など。
フレンチをベースに素材を生かした温かみのある料理を作ります。
Instagram: https://www.instagram.com/saragohan_kitchen/