映画ライター 北村有が語る、映像作品の魅力の伝え方

今回インタビューさせていただいたのは、「cinemas PLUS」 などの映画やドラマのメディアで映像作品関連の記事を書き、「映画ライター」として活躍する北村有さん。

 

2018年にフリーライターとして独立したあとはさまざまなジャンルの記事を手掛けていた印象ですが、現在は映画関連の記事を多く書いています。なぜ北村さんが「フリーライター」から「映画ライター」という肩書きに変わったのか、文章を書くうえで意識していることなどを伺いました。

 

「cinemas PLUS」での執筆をきっかけに、映画ライターへ

 

ー2018年にフリーライターとして独立したときは「映画ライター」ではなく、「フリーライター」でしたよね。フリーランスという働き方は変わらずですが、なぜ肩書きが変わったのでしょう?

 

映画ライターという肩書きにしたのは、「これからは映画ジャンルに絞って記事を書いていくぞ」という決意の現れではなく、映画ライターと名乗った方が、今の実情に合っていると思ったから。いわば、結果論ですね。

 

ーつまり映画ライターを目指したのではなく、映画ジャンルの記事を書くことが多くなったから名乗るようになったと。

 

そうなんです。きっかけとなったのは、映画やドラマのメディア「cinemas PLUS」がサイトのリニューアル時に新しくライターを募集していたこと。もともと映画やドラマは趣味としてよく観ていたので、好きな作品について書けたら楽しいだろうなと思い、試しに応募してみたら採用していただけて。

 

それから「cinemas PLUS」だけでなく、「リアルサウンド映画部」などの他の媒体でも、映画やドラマ関連の記事を書かせていただけるようになったんです。正直、それまでは映画やドラマの記事を書いていきたいとは考えていませんでした。

 

ー映画ライターを志していたわけではないとは言っても、もともと映画やドラマはよく観ていたんですね。

 

母親が映画や舞台をよく観る人だったので、私もよくついて行ってたんです。なので昔から映画を観にいく習慣ができていて。ジャンルで言うと、コメディや熱くなれる青春ものが好きですね。具体的な作品名を挙げると『帝一の國』や『飛んで埼玉』がお気に入りです。

 

ー北村さんが思う、映画の好きなところや魅力ってなんですか?

 

映画って観ている間の2時間、自分の知らなかった世界に連れてってくれるんです。作品の世界に入り込んで、登場人物に感情移入したり、自分だったらどうするか考えたりするきっかけにもなる。現実世界ももちろん楽しいですが、何もかも忘れて違う世界で擬似体験ができるのも楽しい。その延長線で物語性の強い小説も好きですね。

 

軽はずみな発言で傷ついてしまう人が出ないことは大前提

 

映画ライター 北村有が語る、映像作品の魅力の伝え方
▲取材時や映画鑑賞時にメモしてるノート

ー映画やドラマのレビューを書くときに意識していることはありますか?

 

どうしても「面白い映画」と「面白くない映画」があるじゃないですか。でも、自分がつまらないと思った作品でも、たまたま私に合わなかっただけで、面白いと感じる人もいるはずなんです。

 

だから作品の悪いところを書くのではなく、うその感想を書くのでもなく、「このシーンはよかった」とか「こんな展開が好きな人にはおすすめ」など、見方や表現を変えて、作品を貶めないような書き方をするように心がけています。

 

ー面白くないと感じた映画のことを書くのってかなり難しくないですか……?

 

 

たしかに悩みます。でも、映画って作品のストーリー、演出、出演する俳優さん、監督さんの演出、音響など、あらゆる要素が組み合わさってできているんです。それぞれの角度から注目してみると、何かしら引っかかる部分はあるはず。

 

たとえストーリーがいまいちだと感じても、主演となる俳優さんの役作りが素晴らしいのであれば、俳優さんの動きや表情にフォーカスしてみる。演出が印象的だったのであれば、監督さんの過去の作品と比較してみる。いろんな角度から作品を分析して書くようにしていますね。

 

ーこれまでたくさんの記事を書いてきて、失敗してしまったと思うことはありますか?

 

自分が書いた記事が炎上するというような、大きな失敗や問題はありませんが、ネガティブなコメントがついてしまったことはあります。ある俳優さんに注目した記事だったのですが、一部の読者の方にはその俳優さんを否定したように捉えられてしまったようなんです。

 

記事の最後まで読んでもらえれば否定していないと伝わるはずなのですが、おそらく最後まで読んでもらえず、誤解されてしまったんだと思います。読者の誰しもが最後まで記事を読んでくださるわけではないし、本当に言葉遣いは気をつけないといけないなと改めて反省しましたね。

 

今は映画のレビューに限らず、どんなジャンルの記事を書くにしても、炎上させないことは1番意識しています。特に今の時代は言葉遣いひとつで、誰に何が引っかかってしまうかわからない時代。自分の軽はずみな発言で傷ついてしまう人や、嫌な気持ちになる人が出ないように気をつけています。

 

ニッチなニーズでも、届くべきところに情報が伝わるように

 

ー映画の文章を通じて読者に伝えたいことはなんでしょう?

 

仕事柄、試写会などで公開前に作品を観せていただく場合もあるのですが、そういった場合でも「早めに観られてラッキー!」というよりは、早く観せてもらったからには、正しくその作品の魅力やおすすめしたい人などの情報を発信できるようにしたいと心がけています。

 

例えば出演している俳優さんは好きだけど、ホラー映画は絶対に観たくないと言う方もいますよね。ちょっと極端な例ですが、そういうニッチなニーズに届けられたらいいなと思います。映画1本観るのもお金がかかるし、失敗したくないと思うので(笑)。

 

ー最後に映画ライターとして、またご自身のキャリアに関しての目標を教えてください。

 

ひとつの大きな目標としては、大好きな菅田将暉さんに取材したいです。でも実現したら燃え尽き症候群のように目標を見失ってしまう気がするので、かなわない方がいいのかなとも思いますが……(笑)。

 

今は作品を観てレビューを書く側ですが、映画の配給会社さんのような宣伝側のポジションにも興味があって。ライターとはまた違った形で映画に携わるのも、面白そうだなと思っています。

 

もっと言えば、映画とは関係がなくなってしまうのですが、教育分野にも興味があります。学校の取材など、教育分野に関するお仕事もできたらいいなと考えているので、何かあったらぜひお声がけください!

 

インタビューを終えて

映画ライターを志したわけではなく、ご縁があり、結果論として映画ライターになった北村さん。その経緯には少し驚きましたが、お話を伺っていると映画が好きであることや文章に込める心意気がしっかりと伝わってきました。私自身も、もっといろんな角度から作品を観て楽しんでいきたいです。

北村有さんプロフィール

映画ライター 北村有が語る、映像作品の魅力の伝え方邦画を愛するフリーWebライター。 映画館でしか映画を観られない病気。週に2回は映画館へ行かないと貧乏ゆすりが止まらなくなる。 好きな俳優は菅田将暉、北村匠海、田中圭。

Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_

この記事を書いた人
講師は全員現役アーティスト。バンドマン たなべあきらさんが音楽教室「Tees Music School」作った理由

伊藤 美咲

ステキな人やモノを広めるフリーライター。1996年東京生まれ、東京育ち。音楽・旅・ビジネスなど幅広いジャンルの記事を手がける。