今回インタビューさせていただいたのは、都内美容室での勤務を経てフリーランス美容師として独立した伊東咲紀さん。美容師として日々お客様に似合うスタイルを提案しつつ、所属するシェアサロン「SALOWIN」の運営スタッフとしても働いています。
そんな二足のわらじを履く伊東さんに、美容師としてのこだわりや今の働き方について伺いました。
美容師は正社員だけじゃない。他の働き方も知りたいと思いフリーランスに
ーー伊東さんは有名店と呼ばれるお店で働く美容師からフリーランスになりましたよね。まずはその経緯を教えてください。
美容学生のときの同級生がフリーランス美容師になっているのを見て、こんな働き方もあるんだと興味を持ったのが最初のきっかけです。
今でこそフリーランス美容師は増えていますが、学生の頃は美容室に就職して正社員として働く道しかないと思っていました。でも美容師もフリーランスや業務委託などいろんな働き方があることを知って、他の働き方も経験してみたいと思ってフリーランスに挑戦することにしました。
ーー会社員のときは分業制のお店でカラーなどはやらずにカット専門の美容師で働いていましたが、今はカラーなども全て担当されていますね。そういった部分も独立に関係があるのでしょうか?
就職するときは分業制をすごく良いと思っていたんです。学生時代はカットのコンテストによく出ていたので、カラーはスタイルを作るための仕込みだと思っていた部分があって。
良いカラーができていてこそ、コンテスト本番で良いカットができると思っていたので、カラーには正直楽しさを見いだせていなかったんです。だから就職したときはカラーはうまい人に任せて、私のカットでお客様を綺麗に仕上げようと思っていました。
でも就職してからは徐々にカラーへの興味も出てきたり、他の美容師さんのスタイルを見たときに、やってみたいけどお店の雰囲気に合っていないなと思ったりすることが増えてきたんです。それで独立後はカラーもカットも全部やる美容師になろうと思いました。
スタイルはあえて特化させない。オールマイティに対応できる美容師でありたい
ーー最近はショート特化、パーマ特化など特定のスタイルを得意として打ち出す美容師の方も多いですが、伊東さんはこれが得意っていうスタイルを決めていますか?
Instagramにはブリーチなしで透明感を引き出すようなスタイルを中心に載せていますが、これといって「私といえばこれ!」というような特定のカラーやスタイルは決めてはいないんですよね。
ひとつのスタイルに決めると自分でも飽きちゃうと思うし、お客様一人ひとりの気分に合わせた髪型を作りたいので、あえて絞らずオールマイティに対応できる美容師でありたいなと思っています。
ーーたしかに、ショートに特化していたら伸ばしたいときに行きづらくなってしまう可能性はありますよね。技術を施す上でのこだわりはありますか?
お客様の骨格やパーソナルカラー、髪質に合ったスタイルを提案することはもちろんですが、1番はInstagramに載せている写真と実際の髪色にギャップがないようにすることですね。
「この色にしたいです」って写真を持ってきてくれたのに、実際の色と違ったら期待を裏切ってしまうことになるので、綺麗な写真を撮りつつも、リアルとのギャップを作らないことは気をつけています。
ーーInstagramでの集客やブランディングが主流になっている美容師さんならではのポイントですね。接客面で何か意識していることはありますか?
美容師になりたてのころってすごく頑張って話してて、気を遣っているのがお客様にも伝わってしまっていたと思うんですよね。でも取り繕ってるのはバレるし、お客様にとってはかえって居心地が悪くなってしまうんです。
お客様と話すことは大好きですが、あえて話しすぎないように心がけています。話すのが好きな方であれば聞くことに徹するし、雑誌を読んでいる方には邪魔しないように視線が雑誌から離れたタイミングで声を掛けるなどの意識をしています。
あとはお話しするときも、序盤で盛り上がりすぎないようにしていますね。カラーを塗っているときは適度にお話しして、カット中は集中するためにもあまり話さず、最後の仕上げから徐々に盛り上げて、最後お見送りのときに1番盛り上がる、というように。途中から盛り下がらないようにするのは、常連の方でも新規の方でも意識しているポイントですね。
そんな意識もあってか、お客様には「意外と話しやすかったです」と言ってもらうことも多いです(笑)。
骨折という致命的な出来事をきっかけに、シェアサロン運営に携わるように
ーー今では美容師として施術するだけでなく、所属するシェアサロン「SALOWIN」の運営にも携わっていますよね。
SALOWINは独立後からお世話になっているのですが、最初は運営には携わっていなくて、シェアサロンを利用する美容師として所属しているだけでした。しかし、フリーランスになって1年たった頃に腕を骨折してしまって、数カ月美容師として働けなくなってしまったんです。
そのことを社長やマネージャーに連絡したら、運営の仕事を手伝ってほしいと言われたのが運営に携わるきっかけでした。それからSALOWINのマニュアル作成や備品の管理などの業務を任されるようになったんです。
ーー腕の骨折という美容師として致命的な出来事があったからこそ、シェアサロンの運営スタッフという新たな道が開けたんですね。
そうですね、運営として入る前から気づいたことは社長たちに意見を出したり行動したりするタイプだったので、骨折してなくてもスカウトするつもりだったとは社長に後から言われましたが(笑)。
学生時代から部活で団体行動してきたり、前に立つ仕事もやってきたので、周りに必要とされるとやりがいを感じるんですよね。なので美容師復帰後も運営の仕事を続けていますし、美容師の仕事も心から楽しいと思っているので、美容師を辞める気もありません。今後も美容師とSALOWINの運営スタッフの両立をしていくつもりです。
ーー社長やマネージャーがスカウトする予定だったとの話もありましたが、SALOWINに所属するメンバーとは普段から交流があるのでしょうか?
あります!それぞれが持っている情報や技術もバラバラなので、お互いに情報を交換したり相談することも多いです。今SALOWINは全国で店舗展開をしているので、同じ店舗のメンバーだけでなく、他の店舗にいる美容師さんともつながれるようにしていきたいですね。
ーーSALOWINの店舗、今かなり増えてますよね。
SALOWINは全国展開に力を入れていて、私が入ったときには3店舗だったのに、今では14店舗まで増えました。そんな拡大の時期に関われているのは、すごくうれしく感じます。
さらに今SALOWINではフリーランスの次のステップも作っているんです。フリーランス美容師としてアシスタントと一緒に売り上げを伸ばしている方って、ほぼ自分のサロンを持っているような形ですよね。でもそこで店舗を出さない理由は、出店時の資金やいずれつぶれてしまうのではないかというリスクがあるからだと思うんです。
そう考えると、フリーランスの次のステップってすごく難しい。そこでSALOWINが用意したのが、出店時の資金をSALOWINがサポートして、お店の内装や外装などはお任せする仕組みです。
ーー出店時の1番のネックである資金をサポートしていただけるのは、かなり助かると思います。
SALOWINではフリーランスの自由な活躍の場を提供して、そこから自分の会社を立ち上げるサポートまでしています。そして最終的には美容学生の40%がSALOWINの就職を志望する会社にするという目標を掲げているんです。
ーー美容学生の40%!聞いたことないような数字です。
どんなに人気な有名店でもそんな割合聞いたことないですよね(笑)。でもここまで自由な美容室もないし、美容学生に話したらすごく興味を持ってもらえる自信もあります。SALOWINにいるメンバーはみんな勉強にも貪欲だし、美容学生が新卒で入っても学べることはたくさんあるはずです。
ーーたしかに私が今美容学生だったらSALOWINはかなり気になります。では最後に、伊東さんの今後の目標も教えてください。
美容師として常に技術を貪欲に磨いてお客様の満足度を最大限にすることはもちろんですが、施術中に私と話すことで悩みが解決できたり、ポジティブになれたりするような、ひとりの人間として会いたいと思ってもらえるような美容師になりたいです。今リピートしてくださっているお客様はそういう方が多いのかなと思います。
私は求められる方が頑張れるタイプなので、美容師としてもSALOWINの運営メンバーとしても、そういう環境を自分で作っていくことが大事だと思っています。つながった人たちの信頼を裏切らないようにこれからも頑張っていきたいです!
インタビューを終えて
美容師の仕事もSALOWIN運営の仕事も、どちらも本当にやりがいを持って働いていることが伝わってくるインタビューでした。正社員もフリーランスもどちらが良い悪いということはないし、状況によってもどっちが合っているのかは変わってくると思うので、働き方が柔軟に選べるのはすごく良い制度だと感じました。SALOWINがどこまで広がっていくのか、今後も楽しみです!
伊藤 美咲
ステキな人やモノを広めるフリーライター。1996年東京生まれ、東京育ち。音楽・旅・ビジネスなど幅広いジャンルの記事を手がける。
国際文化理容美容専門学校国分寺校卒業後、銀座のサロンで美容師5年間を経て独立。フリーランス美容師になり、現在は美容師と兼任でSALOWINの本部も勤める。