「木偶の坊(でくのぼう)」の意味とは?語源や類義語と例文も紹介

「木偶の坊(でくのぼう)」は、宮沢賢治の作品でも使われている表現ですが、どんな意味があるのでしょうか。今回は「木偶の坊」の意味をはじめ、語源や例文、類語と対義語もご紹介します。あわせて英語表現も紹介していましょう。

「木偶の坊(でくのぼう)」の意味とは?

「木偶の坊」の意味は「人形」「役に立たない人」

「木偶の坊」には、大きく分けて2つの意味があります。1つ目は、「人形」「操り人形」「木偶」です。「木偶」とは、木彫りの操り人形を指します。

2つ目は、「役に立たない人」「気の利かない人」「人の言いなりになっている人」という意味です。また、そのような人を罵る言葉としても使われます。

広く使われているのは2つ目ですが、人を批判する意味合いがあるため相手に直接使わないようにしましょう。

「木偶の坊」の由来・語源は「木彫りの操り人形」

上記で述べた通り、「木偶」は「木彫りの操り人形」のことです。木偶は、人に操られるだけの人形で、自分では何もできません。これが語源となり、役に立たずぼうっとしている人や、人の言いなりになっている人のことを「木偶の坊」と例えて言うようになりました。

「木偶」のみでも「木偶の坊」と同じ意味で使われることがあります。「坊」とは、「朝寝坊」「暴れん坊」と同じく、「人」という意味を表す言葉です。親しみや、軽い嘲りを含む表現として使われます。そのため、「木偶の坊」の「坊」を「棒」と表記するのは間違いです。

「木偶の坊」の使い方と例文

「木偶の坊」は宮沢賢治の詩にも

宮沢賢治の有名な詩「雨ニモマケズ」にも、「木偶の坊」という表現が使われています。

「ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ(みんなに木偶の坊とよばれ ほめられもせず)」という一節です。

「木偶の坊」を使った例文

  • あの人は本当に役に立たない。まるで木偶の坊だ。
  • どうしたらいいのかわからず、私はただ木偶の坊のように彼について行った。
  • どんなに木偶の坊と罵られても、その時の僕はどうすることもできなかった。

「木偶の坊」の類語(類義語)とは?

「木偶の坊」の類義語①「独活の大木」

「木偶の坊」の類語に「独活の大木(うどのたいぼく)」があります。「独活の大木」とは、「体ばかり大きくて役に立たない人」という意味です。

植物のウドは、若い茎は食用ですが、そのまま成長すると樹木のように成長し、食べることができません。また、大きくなっても柔らかくて建材や薪などにも利用できないことから、「体ばかり大きくて役に立たない人」をたとえて「独活の大木」と言います。

類語「独活の大木」を使った例文

彼はそこにいても何もしない。まるで独活の大木だ。

「木偶の坊」の類義語②「唐変木」

「唐変木(とうへんぼく)」も「木偶の坊」の類語です。「唐変木」とは、気の利かない人やわからずやを指して使われます。

類語「唐変木」を使った例文

この唐変木!早くここから去れ。

「木偶の坊」の類義語③「ぼんくら」

「木偶の坊」の類語「ぼんくら(盆暗)」は、「ぼんやりしていて見通しがきかない様子や、そのような人」という意味です。「ぼんくら」はもともと、博打で盆の上の勝負に暗いという意味で使われていました。

「木偶の坊」の類語は、「木偶の坊」と同じく人を罵ったり、侮蔑の意味を込めて使ったりする言葉になるため、相手に直接いわないようにしましょう。

類語「ぼんくら」を使った例文

あの家のぼんくら息子が、また何かやらかしたようだ。

「木偶の坊」の対義語とは?

「木偶の坊」の対義語①「敏腕」

「木偶の坊」の対義語には「敏腕(びんわん)」があります。「敏腕」の意味は、「物事を正確かつ素早く処理する手腕があることや、その様子」です。「腕利き」や「凄腕」「辣腕(らつわん)」と同じ意味があります。

対義語「敏腕」を使った例文

彼は敏腕の弁護士だ。任せておけばきっと何とかしてくれる。

「木偶の坊」の対義語②「切れ者」

「切れ者」も「木偶の坊」の対義語です。「切れ者」には、「頭の回転が速く、物事を効率よく処理する才能がある人」という意味があります。

対義語「切れ者」を使った例文

彼女は、警視庁の中でも切れ者と呼ばれている。

「木偶の坊」の英語表現とは?

「木偶の坊」は英語で「good for nothing」

「木偶の坊」を英語で表現する場合は「good for nothing」や「useless」を使います。どちらも「何の役にも立たない」という意味があります。

「木偶の坊」を「操り人形」という意味で使う場合には「puppet」を使います。

「木偶の坊」の英語表現を使った例文

  • She is good for nothing.
    彼女は木偶の坊だ(彼女は役に立たない)
  • I am useless.
    私は木偶の坊です(私は役立たずです)

まとめ

「木偶の坊(でくのぼう)」には、「人形」「操り人形」「木偶」という意味と、「役に立たない人」「気の利かない人」「人の言いなりになっている人」という意味があります。類語には「独活の大木」や「ぼんくら」があります。悪口になってしまう場合があるので、人に使う時には注意しましょう。