「ごゆるりと」の意味とは?漢字表記や使い方、類語と英語表現も

宿泊施設や飲食店などで「ごゆるりと」という言葉を耳にしたことはありませんか?言葉の響きからもほっこりした雰囲気が伝わってくる「ごゆるりと」という表現。今回は「ごゆるりと」の意味をはじめとして、漢字ではどう表記するのか、方言なのかなどを、類語や英語表現と一緒に解説します。

「ごゆるりと」の意味とは?

「ごゆるりと」の意味は”急がずゆっくり行動する様子”

「ごゆるりと」の意味は、“急がずゆっくり行動する様子”です。また「あくせくせず、ゆったりとした心境でいる様子」や「ゆったりくつろぐ様子」なども意味する言葉です。

また、挨拶語として、他の人を敬い気遣って、その人に対してゆっくりとくつろぎリラックスしてもらえるよう勧める時に使います。ゆとりを表現する言葉として、空間や時間など広い意味で使える言葉です。

「ごゆるりと」は方言ではなく、漢字表記は「御緩と」

「ごゆるりと」を漢字で表記すると「御緩と」になります。地方の方言ではなく、大和言葉に由来した言葉です。大和言葉とは、漢語や外来語が日本に伝わる前から日本にあった単語のことで、「和語(倭語)」ともいいます。

「ごゆるりと」は、副詞の「緩り(ゆるり)」という言葉が原型です。「緩り」に接頭語の「ご」がついて丁寧語になったものが「御緩り」。多くの場合、最後に「と」をつけて「ごゆるりと」として使われます。

「ごゆるりと」の使い方とは?

使い方①「ごゆるりとお過ごしください」

「ごゆるりと」を使った表現に「ごゆるりとお過ごしください」があります。旅館の客室に案内された時や、料亭で席に通された時などによく聞く表現です。

「ごゆるりと」は先に述べたように、空間や時間など、幅広く使える言葉です。「ごゆるりとお過ごしください」という表現は、空間と時間どちらも含んだ意味を持ち、「このお部屋や席などで過ごす時間をリラックスして過ごしてください」というニュアンスを込めて使われます。

例文
「ようこそいらっしゃいました。どうぞごゆるりとお過ごしください」

使い方②「ごゆるりとお楽しみください」

「ごゆるりとお楽しみください」も「ごゆるりと」のよく使われる表現です。絵画の展示会や音楽のコンサート、飲食店などでよく耳にします。ゆっくりと時間をかけて、作品や音楽、料理などを楽しんでほしい場合に使います。

例文
「本日はお越しいただき、誠にありがとうございます。工夫を凝らした展示もございますので、どうぞごゆるりとお楽しみください」

使い方③「ごゆるりとなさってください」

「ごゆるりとなさってください」は、誰かの家に招かれた時や、取引先の会社の応接室に通された時などに聞くことが多い表現です。緊張している相手に、肩の力を抜いてゆっくりとリラックスして欲しい場合に使える表現です。

例文
「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。今お茶をお持ちしますので、どうぞごゆるりとなさってくださいね」

「ごゆるりと」の類語・言い換え表現とは?

「ごゆるりと」の言い換えは”ごゆっくり”

「ごゆるりと」は、「ごゆっくり」と言い換えることができます。「ごゆっくり」は”時間をかけること・スピードが遅いこと”を意味する「ゆっくり」に丁寧語の「ご」をつけた言葉です。

「ゆっくり」は時間に対してゆとりがあることを表す言葉なので、時間に余裕がある場合や、時間をかけていい場合に「ごゆるりと」を「ごゆっくり」と言い換えて使えます。

「ごゆるりと」の類語は”悠然と”

「ごゆるりと」の類語のひとつに「悠然と」があります。「悠然と」には、”ゆったりしていること・落ち着いていること”などの意味があり、「悠然と」は、”ゆっくりしていて落ち着きがある様子”を表す時に使えます。

「悠然と」は、終止形の語尾が「たり」になるタリ活用をする形容動詞「悠然たり」の連用形。「周囲が慌てふためいて逃げ惑う中、彼だけが悠然と現場に向かっていった」のように使います。

「緩徐」も「ごゆるりと」の類語

「緩徐(かんじょ)」は、「緩やかで静かな様子」や「動作がゆっくりしている様子」を意味する言葉で、こちらも「ごゆるりと」の類語です。「地盤の運動は緩徐だ」のように使用します。

「緩徐」は医療の用語としても使われる言葉で、病気の進行の速さを表す際に使用されています。病気がゆっくりと進行することを指して、「緩徐進行性」と表現します。

「ごゆるりと」の英語表現とは?

「ごゆるりと」は英語で”Enjoy your ○○”

「ごゆるりと」を英語で表現する時、「ゆっくりと楽しんでください」というニュアンスを伝えたい場合には“Enjoy your ○○”という表現が使えます。

たとえば、飲食店で料理を提供した際に、「ゆっくりと料理を楽しんでください」という意味を伝えたいのであれば、最後に一言「Enjoy your meal.(食事をお楽しみください)」と添えると良いでしょう。宿泊施設では「Enjoy your stay.(滞在をお楽しみください)」のように使えます。

「There’s no need to rush.」の場合も

「ごゆるりと」を「焦らなくても大丈夫ですよ」「時間がかかっても大丈夫ですよ」という意味の英語で表現したい場合には、「There’s no need to rush.(急ぐ必要はないですよ)」や、「Take your time.(どうぞごゆっくり)」という表現を使います。「There’s no rush.(焦らなくていいよ)」でも大丈夫です。

日本語の「ごゆるりと」は、「ゆっくりと楽しんでください」の意味でも「焦らなくても大丈夫ですよ」の意味でも使うことができますが、英語ではどちらの意味で使いたいのかを明確にして、使い分ける必要があることを覚えておきましょう。

まとめ

「ごゆるりと」は、「急がずゆっくり行動する様子」を表す言葉で、漢字で表記すると「御緩と」になります。大和言葉に由来しており、方言ではありません。ゆっくりとリラックスしてほしい時や、ゆったりくつろいでほしい時に使える柔らかい言葉ですので、是非使ってみてください。