「ナマポ」の意味とは?使い方や特徴、条件や金額も解説

「ナマポ」という言葉を聞いたことはありますか?「ナマポ」はインターネット上で誕生したネットスラングのひとつです。この記事では、「ナマポ」の意味や使い方の例文だけでなく、「ナマポ」というネットスラングが生まれた理由や問題点なども解説します。

「ナマポ」の意味とは

「ナマポ」の意味は「生活保護」「生活保護受給者」

「ナマポ」とは、「生活保護」や「生活保護受給者」を意味する蔑称です。生活保護を略した言葉「生保(せいほ)」を「ナマポ」と読んだ言葉で、ひらがなで「なまぽ」と表記する場合もあります。

「生保(せいほ)」という略語は、「生命保険」の略語として使われることが多いため、生命保険と生活保護を区別するためにネット上で「ナマポ」が使われるようになりました。

「ナマポ」を使った例文

「ナマポ」は生活保護の略語ではなく、蔑称として使われる言葉なので、ほとんどの場合でネガティブな意味として使われます。

  • ナマポでパチンコとかクズじゃん。
  • ナマポになれるなんて勝ち組じゃん。ある意味強運でしょ。
  • あいつナマポらしいよwww

「ナマポ」という言葉が生まれた理由とは

生活保護受給者の増加と制度の矛盾への批判

生活保護という制度は、本来ならば生活に困窮している人を救済するための大切な制度です。その生活保護に対し「ナマポ」という蔑称が生まれた背景には、複雑な事情があるといえます。

厚生労働省が令和4年6月に発表した「生活保護制度の現状について」によると、生活保護受給者数は令和4年3月の時点で約204万人。平成27年3月をピークにやや減少に転じていますが、それでも最も生活保護受給者が少なかった平成7年の約88万人に比べれば、かなりの数といえます。こうした生活保護受給者数の多さが、ネットユーザーの関心を高めた要因のひとつと考えられます。

さらに、批判が集まる要因になっているのが生活保護制度の矛盾点です。生活保護は扶助の額によっては、その地域の最低時給を上回ってしまう場合があります。

派遣やアルバイトなどで一生懸命働いている人が生活保護受給者より収入が少ないという状態に不満を持つ若者が増えてきたうえに、特定の国の外国人には審査が甘かったり、生活保護受給者がパチンコや競馬に行っているという目撃談がインターネットで拡散されるようになったりといったこともあり、批判が高まっていきました。

若者の貧困

若者の貧困問題も、生活保護受給者への批判が集まる要因と考えられます。「ナマポ」という言葉がインターネット上で使われるようになった2000年以降は、非正規雇用者が増加し、それに伴って稼ぎたくても稼げない若者も増加していた頃です。

家賃すら払えず賃貸物件を追い出され、日雇いのアルバイトを転々としながらネットカフェに住む「ネットカフェ難民」となる若者たちが生まれてしまうような状況。当然、生活保護制度に不公平感を持つ層が増加したと考えられ、インターネット上では生活保護制度の実態についての意見が飛び交いました。その中で、「ナマポ」というネットスラングも使用されるようになりました。

不正受給例の発覚

「ナマポ」という言葉が広く知られるようになったきっかけが、2012年に収入が十分にある芸能人の家族が生活保護を受給していると報道されたことです。

それまでも、働きたくないという理由で健康状態や収入を誤魔化して生活保護を不正に受給したり、車がないと仕事ができないという理由でマイカーを手元に残したまま生活保護を受給したりする例が報告されており、生活保護制度に対し批判的な意見があったなかでこの報道がされました。

世間の生活保護に対する印象はどんどん悪くなり、バッシングの対象に。「ナマポ」は完全に蔑称となってしまいました。

そもそも「生活保護制度」とは?受給額はいくら?

「生活保護制度」は生存権を守るための公的扶助制度

「生活保護制度」の目的は、生活に困窮する人にその困窮の程度に応じて必要な保護を行って、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するとともに、自立を助長することです。この憲法25条に明記された国民の生存権を守るための公的扶助制度こそが生活保護制度なのです。

生活保護の原理と原則

生活保護制度がどのようなものであるかを定めた「生活保護法」には、4つの基本原理が示されています。

生活保護の権利

  • 国家責任の原理…国は困窮者の生活を支え、自立させる責任がある
  • 無差別平等の原理…生活保護制度は社会的身分や性別、困窮の原因に関係なく適用される
  • 最低生活保障の原理…国民は健康で文化的な水準に至るまで保護を受けることができる
  • 保護の補足性の原理…国民は生活保護受給の前に、資産や自身の能力などの活用が求められる

これらの原理を踏まえたうえで、尚且つ生活の困窮が続いていた場合、生活保護を受けることができます。

生活保護の受給条件

生活保護は世帯単位で行われ、世帯員全員が利用できる資産や能力などのあらゆるものを最低限度の生活の維持のため活用することが前提です。

預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却して生活費に充てなければなりませんし、働ける人は能力に応じて働かなければなりません。年金や手当など他の制度で給付を受けられるならば、そちらを先に活用することが求められています。

扶養義務者の扶養は生活保護法による保護に優先されるため、親族からの援助が受けられる場合は、援助を受けます。

保護が適用されるのは、上記を踏まえて世帯収入と厚生労働大臣が定める基準で算出した最低生活費を比較した際に、収入が最低生活費に満たない場合となります。受給額もこの最低生活費が基準になっており、住んでいる地域や年齢、世帯人員などにより異なりますが、月に10万円から20万円程度が目安です。

生活保護制度の重要性とは

本当に困っている人のために必要な制度

本来、生活保護制度は病気や障害、親や扶養者の介護などの理由で、働きたくても働けない事情を抱え困窮する人たちを救済するための制度です。

一部の不正受給者や、芸能人の家族のスキャンダルなどによって悪い印象が強くなってしまった生活保護ですが、本当に困っている人が命を繋ぐために必要な制度だと正しく理解することが大切です。

生活保護の申請方法

生活保護を申請する場合には、住んでいる場所や近くの自治体の福祉事務所に相談します。福祉事務所が設置されていない町村に住んでいる場合は、町村役場の生活福祉課でも申請の手続きができます。

窓口で「生活保護申請書」を提出し、受給したい旨を伝えると、担当の相談員やケースワーカーがつき、ヒアリングと調査が行われます。調査の内容は以下の通りです。

  • 生活状況を把握するための家庭訪問をはじめとする実地調査
  • 預貯金、保険、不動産などの資産調査
  • 扶養義務者による扶養(仕送りなどの援助)の可否の調査
  • 年金をはじめとする社会保障給付、就労収入などの調査
  • 就労の可能性の調査

上記のヒアリングや調査が終わり、約14日から30日で生活保護を受けられるか決定がなされます。申請が却下された場合には、その理由が伝えられることになっています。申請が却下された場合、不服があれば審査請求をしてみましょう。却下の理由にきちんと返答し説明ができれば、審査が覆る可能性もあります。

まとめ

「ナマポ」とは、「生活保護」や「生活保護受給者」を意味する蔑称で、ほとんどの場合でネガティブな意味として使われます。「ナマポ」という蔑称が生まれた背景には複雑な事情がありますが、生活保護制度は本来、働きたくても働けない事情を抱え困窮する人たちを救済するための制度だと正しく理解しましょう。