「浪漫」の意味とは?読み方や使い方、「ロマン」との違いも解説

歌のタイトルや小説、ドラマなどで目にする「浪漫」という言葉。どこか抽象的で、実際の意味は何なのか、わからないという方も多いのではないでしょうか。実は「浪漫」にはいくつかの意味があり、関連する言葉もたくさんあります。使い方や類語なども知って、正しく使えるようになりましょう。

「浪漫」の意味とは

「浪漫」には3つの意味がある

「浪漫」には、以下のような3つの意味があります。

  1. 「ロマンス」と同じ。恋愛や愛情を意味する言葉であり、動詞では恋愛感情を築くこと、形容詞では恋愛に関することや感傷的な雰囲気を持つもの。
  2. 外国語で小説、特に長編小説のこと。
  3. 感情的、理想的に物事をとらえること。強い憧れを持つこと。

②の意味のように、小説のことを指して「浪漫」が使われることはあまりなく、ほとんどの場合で①か③の意味で使われています。

「浪漫」の読み方は「ろまん」「ろうまん」

「浪漫」の読み方は「ろまん」です。「ろうまん」と読む場合もあります。フランス語の「roman」が語源で、英語の「romance(ロマンス)」も、このフランス語の「roman」を起源としています。

「roman」に「浪漫」の漢字を当てたのは、多くの当て字を使った作家として知られる夏目漱石だとされています。1907年に『ホトトギス』という雑誌に掲載された中編小説『野分』の中に「浪漫」が使われたのが初出とされています。

「浪漫」の使い方

前述のように「浪漫」の意味は3つあります。①のように、空想的な恋愛やそうした傾向があるものに対して「浪漫」を使う場合には、「浪漫の類い」や「浪漫がある」などのように使います。

②のように、「小説」という意味で使う場合には、「小説」と「浪漫」を置き換えて使います。

③の強い憧れを持つことの意味で使う場合には、「浪漫が詰まっている」「浪漫が駆り立てられる」などのように使います。

「浪漫」を使った例文

  • 彼女が彼に向ける熱い視線は、間違いなく浪漫の類いだろう。
  • それはあの作家の初期の浪漫作品だ。
  • その古地図を見た瞬間、僕の心の中の浪漫が駆り立てられた。

「浪漫」と「ロマン」「ロマンス」「ロマンチック」の違いとは?

カタカナの「ロマン」との違い

カタカナで「ロマン」と表記する場合、「夢や憧れ」「冒険」といった意味で使われます。ごくまれに「roman」の英訳「ローマの~」の意味で使われることもありますが、これはかなり限定的な使われ方です。

漢字で「浪漫」と表記される場合には、カタカナの「ロマン」と同じ意味で使われるほか、「浪漫主義」や「浪漫文学」などの学術的な意味で使われる場合もあります。

「ロマンス」「ロマンチック」との違い

「ロマンス」には、「中世ヨーロッパにおける、恋愛や武勇談などを中心とした空想的、伝奇的な通俗小説」「恋物語、恋愛長編小説、恋愛がテーマの劇や映画」「恋愛に関すること、恋愛沙汰、艶聞(えんぶん)」などの意味があります。

「ロマンチック」の意味は「現実離れしていて、情緒的で甘美なさま。また、そのような事柄を好むさま」などです。

「ロマン」の意味に「夢や憧れ」「冒険」とあるように、「ロマン」がどちらかといえば逞しさや荒々しさを含む意味で使われるのに対し、「ロマンス」は空想的で恋愛にまつわる甘美な世界観を指します。「ロマンチック」は「ロマンス」の形容詞として、現実離れした甘く理想的な情景や雰囲気を指して使われます。

「浪漫」に関連する言葉とは

「浪漫(ロマン)主義」

「浪漫(ロマン)主義」とは、18世紀ヨーロッパで興った文化、精神運動です。それまでは、理性的、合理的で「完全な美」を求める古典主義や教条主義が主流でしたが、これに反発し、個人の主観を重視した自我の解放と確立を目指しました。

「浪漫主義」の特徴は、恋愛や自然賛美をはじめ、過去への憧憬や民族意識の高揚など、抒情的かつ感情的な表現にあります。この潮流は文芸や美術、音楽、演劇など、様々な分野に及ぶことになり、西欧近代国民国家の形成にも貢献しました。

「大正浪漫(ロマン)」

「大正浪漫(ロマン)」は、大正時代、近代化に勤しんだ独特の雰囲気を漂わす芸術や文化、思想などを指します。

明治時代の中頃、上記の西欧浪漫主義の影響を受け、森鴎外(もり おうがい)の小説『舞姫』によって日本の浪漫主義文学が始まりました。その後、樋口一葉(ひぐちいちよう)の『たけくらべ』や、国木田 独歩(くにきだ どっぽ)の『武蔵野』、泉鏡花(いずみ きょうか)の『高野聖』、与謝野晶子の『みだれ髪』など、「浪漫主義文学」は多くの作家に広がりをみせます。

しかし、日本の浪漫主義文学は、大正時代初期には自然主義への移行によって衰退。「浪漫主義が終焉した大正時代」という意味で、当時の文化世相を「大正浪漫」と呼びます。

楽曲名としての「浪漫」

「浪漫」という言葉は、楽曲名としても多く使われています。1990年にリリースされた米米CLUBの楽曲『浪漫飛行』や、2019年にリリースされた椎名林檎の『浪漫と算盤』などが有名です。

そのほかにも、バンド名に使われたり、韓国ドラマのタイトルに使われたりするなど、「浪漫」という言葉には、人々を引きつける魅力があるといえるでしょう。

「浪漫」の類語・言い換え表現とは

「夢」

「浪漫」の類語はいくつかありますが、そのなかのひとつが「夢」です。

「夢」には、以下の5つの意味があります。

  1. 睡眠中に、まるで現実の経験のように感じる一連の観念や心像。

  2.  将来実現させたいと思っている事柄。

  3.  現実からはなれた空想や楽しい考え。

  4.  心の迷い。

  5.  はかないこと。たよりにならないこと。

上記の意味のうち、③が「浪漫」の類語としての意味になります。「彼女は夢見がちだ」のように使います。

「理想」

「理想」には、「人が心に描き求め続け、そうあってほしいと望むところ最高の状態」という意味があります。現実離れした強い憧れを持つという意味で「浪漫」を使う場合に、「理想」を使って言い換えることができます。

まとめ

「浪漫」は、「ろまん」「ろうまん」と読み、フランス語の「roman」が語源となっています。3つの意味があり、なかでも、「恋愛や愛情を意味する言葉で、恋愛に関することや感傷的な雰囲気を持つもの」としての意味と、「感情的、理想的に物事をとらえ、強い憧れを持つこと」という意味で使われることが多い言葉です。