「正鵠」の意味とは?読み方や語源、使い方や類語も解説

「正鵠」という言葉をご存じでしょうか?慣用句の「正鵠を射る」「正鵠を得る」で耳にしたことがある、という方も多いかもしれません。この記事では、「正鵠」の意味や読み方をはじめ、どちらが正しい慣用句なのか迷うことも多い「正鵠を射る」「正鵠を得る」についても解説。「正鵠」の類義語もご紹介します。

「正鵠」の意味と読み方とは

「正鵠」の読み方は「せいこく」「せいこう」

「正鵠」の読み方は「せいこく」です。慣用読みで「せいこう」ともいいます。

慣用読みとは、誤読をはじめとした原因により、本来の読み方とは異なる読み方が広く使われ、定着した読み方のことです。例えば、「重複」は本来の読み方は「ちょうふく」ですが、「じゅうふく」という慣用読みがあります。

「正鵠」の意味は「弓の的の中心にある黒点」

「正鵠」は、「弓の的(まと)の中心にある黒点」を意味します。弓道の的の中心にある、黒い部分のことです。

また、「物事の肝心な部分・急所・要点」という意味や、「物事の核心を突いていることや、その様子」という意味もあります。

「正鵠」の語源

「正鵠」の「正」も「鵠」も、どちらも中国語では「的(まと)」という意味を持っています。「鵠」は日本語では「くぐい」と読み、「白鳥」を意味します。

古代中国では、的の中心に白鳥が描かれていたため、「鵠」に「的の中心」という意味があったとされます。そこからもわかるように、昔は弓の的の中心は黒ではなく白でした。

「正鵠」の使い方とは

「正鵠」の使い方

「正鵠」は弓道用語として「弓の的の中心にある黒点」の意味で使われる場合と、日常のなかで「物事の肝心な部分・急所・要点」「物事の核心を突いていることや、その様子」の意味で使われる場合があります。

よく目にするのは後者の意味での使われ方です。「正鵠」をそのままで使う場合と、この後ご紹介する慣用句として使う場合の両方があります。

「正鵠」を使った例文

  • どんな時も正鵠を見失わず、探求を続けることが大切だ。
  • 彼の意見は正鵠な批判であると思う。
  • いくら偉大な人物だとはいえ、その考えがいつでも正鵠であるとは限らない。

「正鵠を射る」と「正鵠を得る」どっちが正しい?

先に使われ始めたのは「正鵠を得る」

「正鵠」を使った慣用句「正鵠を射る」と「正鵠を得る」。よく「正鵠を得る」は間違いだという指摘を目にしますが、どちらも間違いではありません。実は日本で先に使われ始めたのは「正鵠を得る」の方です。

「正鵠を得る」には、「的をついている」「核心や要点をついている」という意味があります。明治時代、「物事の急所や要点を正確につく」という意味で「正鵠を得る」が使われ始めました。

「正鵠を射る」も意味は同じ

「正鵠を射る」も、「正鵠を得る」と意味は同じです。「正鵠を射る」が使われ始めたのは昭和時代。「正鵠」に「的の中心」という意味があることが知られるようになり、「的は射るもの」として「正鵠を射る」という表現も普及しました。

「正鵠を失わず」ともいう

「正鵠を得る」「正鵠を射る」と同じ意味を持つもうひとつの慣用句が「正鵠を失わず」です。

「正鵠を失わず」の由来は、古代中国の書「礼記(らいき)」です。「礼記」では、矢を放ち白鳥に命中させることを「不失正鵠(ふしつせいこく:訓読みでは、正鵠を失わず)」と記載しています。

ここから、矢で的の中心を射るように、物事の要点や核心を正確にとらえ、急所をつくことを「正鵠を失わず」というようになりました。

「失う」という言葉の反意語は「得る」です。「正鵠を得る」が「正鵠を射る」よりも先に日本で使われるようになったのは、この「正鵠を失わず」という慣用句が関係していると考えられます。

「正鵠」の類語とは

「核心」

「正鵠」の類語に「核心」があります。「核心」とは、「物事の中心や本質となっている大切な部分」や「中核」という意味です。「ついに事件の核心に触れた」や「彼の言葉はこの問題の核心をついていた」のように使用します。

「本質」

「本質」もまた、「正鵠」の類語です。「本質」には、「物事の根本的な性質や要素」「そのものの本来の姿」という意味があります。

また、哲学では「本質」とは「存在するものの基底や本性をなすもの」とされ、「偶有性と対立し、事物に内属する不変の性質」「実存と対立し、そのものがなんであるかを規定し、その本性を構成するもの」と定義づけられています。

論理学における「本質」とは、「思惟の対象を定義する諸限定」という意味で、類や種のような普遍を指します。

「ポイント」

「ポイント」には「点」や「点数」をはじめとした、たくさんの意味がありますが、そのなかの「要点」「肝所(かんどころ) 」の意味が「正鵠」と類義です。

「いろいろと書かれているが、この単元のポイントはここだ」「あの先生の授業はポイントを押さえた解説でわかりやすい」のように使います。

まとめ

「正鵠」は「せいこく」と読み、慣用読みで「せいこう」とも読みます。「弓の的の中心にある黒点」「物事の肝心な部分・急所・要点」「物事の核心を突いていることや、その様子」という意味があります。「正鵠を射る」と「正鵠を得る」という同じ意味の慣用句があり、どちらも間違いではありません。