「於いて」の意味とは?使い方や例文、言い換え表現も解説

フォーマルな場やビジネスシーンなど、幅広い場面で使われる「於いて」という言葉。その意味も一つではありません。「於いて」の意味をはじめ、使い方や例文、言い換え表現を解説。さらに、漢文や古文での意味や使い方、英語表現も合わせて解説します。

「於いて」の読み方と意味とは

「於いて」の読み方は「おいて」

「於いて」は「おいて」と読みます。動詞の「置く」の連用形に、接続助詞の「て」がついた「おきて」の音が変化したものが「於いて」です。

漢字では「於いて」と表記しますが、「於」という字は常用漢字ではないため、一般的にはひらがなで「おいて」とし、「~において」の形で使われます。

「於いて」の意味は「~にて」「~の時に」など

「於いて」には以下の4つの意味があります。

  1. 場所を表す…「~で」「~にて」
  2. 時間を表す…「~の時に」
  3. 場合や事柄を表す…「~に関して」「~について」「~にあって」
  4. 特定の人や事柄の話題を表す(係り助詞「は」を伴う)…「~の場合には」

どの意味で使われる場合でも、「於いて」を使うとややかたい表現になります。そのため、日常会話よりは、ビジネスシーンやフォーマルな場で使われる場合がほとんどです。

「於いて」を使った例文

  • 次の大会は東京に於いて行われると決まった。(場所)
  • 明治時代に於いて、それはとてもデリケートな問題だった。(時間)
  • 彼はすべてに於いて彼女より劣っている。(場合・事柄)
  • 保護者の皆様に於かれましては、大変なご心配をお掛けいたしました。(特定の人や事柄の話題)

「於いて」の言い換え表現とは

「にて」

「於いて」には使われる意味に応じて言い換え表現があります。「にて」は、「於いて」が場所を表す場合に使える言い換え表現です。

「今度の懇談会は各クラスの教室に於いて行います」なら「今度の懇談会は各クラスの教室にて行います」のように、「○○ホテルに於いて開催いたします」なら「○○ホテルにて開催いたします」のように言い換えられます。

「~について」

「~について」は、「於いて」が場所や事柄を表す場合の言い換え表現です。「~に関しては」も同じように言い換えができます。

「英語の成績に於いては彼の右に出る者はいない」なら、「~について」を使って「英語の成績については彼の右に出る者はいない」というように、「この問題に於いては、さらに時間を掛けて精査する必要があるだろう」なら、「~に関して」を使って「この問題に関しては、さらに時間を掛けて精査する必要があるだろう」というように言い換えができます。

漢文の「於」の意味と使い方とは

「於」を置き字とする場合

「於いて」は、元々漢文を訓読する際に使われ始めました。漢文には「於」という字がよく用いられています。

漢文では「於」は「置き字(訓読する時には読まず、ただ置いてあるように見える文字)」として使われることが多い字です。通常、漢文では上にある字が下にある字を修飾しますが、「於」は下から上を修飾する修飾語であり、前置詞でもあります。英語でいう「at」や「in」のように、対象や場所、状況などを表します。

「我見鳥鳴於庭」は、「私は鳥が鳴いているのを見ている」に「於」を使うことで「庭で」という情報が補足で説明されています。この「於」は「鳴」の直後にあるので、「鳥が鳴いている場所」を修飾しており、「私は鳥が庭で鳴いているのを見ている」という意味になります。

従って、「我見鳥鳴於庭」を読み下す場合には「我鳥の庭に鳴くを見る」となり、「於」は読まない字、つまり「置き字」となります。

「於いて」と読む場合

上記のように、漢文では通常「於」は置き字となりますが、「於」が導く前置詞句(前置詞+名詞)が修飾語として被修飾語の前に置かれた場合には、「返読文字」となり「~に於いて」と読みます。

上記の「我見鳥鳴於庭」では、「於」は鳥の鳴く場所が「庭」であると補足して説明していました。これを「私が庭で」「鳥が鳴いているのを見ている」としたい場合には、「我於庭見鳥鳴」とし、「我庭に於いて鳥の鳴くを見る」と読みます。

この場合の「於いて」は、日本語と逆の語順になる漢字「返読文字」になっています。元々外国語である漢文は、日本語とは構文がまったく異なるため、他動詞や助動詞は返読する必要があります。

古文の「に於いて」の意味と使い方とは

意味は「~に」「~にて」「~で」

古文での「に於いて」も、場所や時間、場合などを表す語につけて使われます。「~に」「~にて」「~で」という意味です。「に於きて」ともいいます。

古文の「於いて」は、「置きて」のイ音便です。音便とは、言葉を発音する際に、発音しやすいように言葉が変化することをいいます。「於いて」は中国古代の漢文を訓読する際、時間や場所を表す助字「於」の訓読みとして当てられた語です。

古文の「に於いて」の使い方

吉田兼好の随筆集『徒然草』の九十二段に、「況んや(いはんや)一刹那(いつせつな)のうちにおいて、懈怠(けだい)の心ある事を知らんや」という一節があります。

これは「ましてや一瞬の間に怠けの精神があることを知っているだろうか。いや、知るまい。」という意味を指しています。

「於いて」の英語表現とは

「於いて」は英語で「at」「in」

英語での「於いて」は、「at」や「in」で表します。場所を指す「於いて」の場合、一点としての場所は「at」、囲まれた空間は「in」を使います。例えば、「新宿に於いて」なら「at Shinjyuku」、「東京に於いて」なら「in Tokyo」となります。

時刻や時点を表すなら「at」、 朝晩や週、月、季節、年、世紀、場合を表すなら「in」です。「現時点に於いて」は「at the moment」、「1990年末に於いて」なら「in the late 1990s」となります。

「於いて」の英語表現を使った例文

  • The next committee meeting will be held at school.(次の委員会は学校に於いて行います)
  • The material is inferior in quality.(その材料は質に於いて劣る)

まとめ

「於いて」は「おいて」と読み、場所や時間、場合や事柄、特定の人や事柄の話題などを表す際に使います。「於いて」はややかたい表現になりますので、ビジネスシーンやフォーマルなシーンで使われる場合がほとんどです。漢文や古文での使い方も覚えておくとよいでしょう。