「怒る」の言い換えとは?ビジネスや介護・医療で使える表現

「怒る」は人の感情を表す身近な言葉です。ネガティブな感情を表すため、使う状況によっては言い換えたり、「怒る」という感情自体をうまくコントロールしたりする必要があります。ビジネスシーンで使える「怒る」の言い換え表現や、介護・医療・保育などの現場では「怒る」という感情とどう向き合うべきなのかも解説します。

「怒る」の意味とは

「怒る」は「不満や不快を我慢できない気持ち」を表す言葉

「怒る(おこる)」には「不快や不満などがあり、我慢できない気持ち」「腹を立てる」「よくない言動を強く咎める」「叱る」などの意味があります。

「怒る」は「いかる」と読む場合もあり、「いかる」と読む場合の意味は「腹を立てる」「憤慨する」「激しく動く」「荒れ狂う」「角張ってごつごつしている」「角立つ」などの意味を持ちます。

「怒る(おこる)」と「怒る(いかる)」の違い

「怒る」を「おこる」と読む場合でも、「いかる」と読む場合でも、ほぼ意味は同じです。

二つの違いは、「おこる」が「花瓶を割られて怒る」のように直接的、物理的要因によって腹を立てる場合に使われることが多いのに対し、「いかる」は「母親を侮辱されて怒る」のように精神的、抽象的要因によって腹を立てる場合に使われることが多いという点です。

ビジネスで使える「怒る」の言い換え表現とは

「ご立腹」

ビジネスシーンでは、直接「怒る」と表現するよりも、敬語表現や遠回しな表現に言い換える場合の方が多くあります。怒りや苛立ちといった負の感情はビジネスの場においてあまり表に出すべきではないからです。

「ご立腹」は「腹を立てること」「怒ること」という意味を持つ「立腹」に接頭語の「ご」をつけて敬語表現にしたものです。相手の怒りや不満などを敬意を持って表現する際に使います。

「今回の騒動につきまして、クライアント様は相当ご立腹です」「かなりお待たせしてしまい、お客様も大変ご立腹の様子でしたので、私の判断で料金はサービスさせていただきました」のように使用します。

「ご不満」

「ご不満」は「物足りなく、満足しないこと、また、その様子やそう思う気持ち」「不満足」という意味の「不満」に接頭語の「ご」をつけたものです。

怒りや不満を持つ相手に対して直接使うのではなく、「○○様は契約内容にご不満があるようです」「新サービスへのご不満の声が多数寄せられております」のように、敬意を表す相手からの怒りを他の人に伝える場合によく使われます。

「遺憾」

「遺憾」には「期待したようにならず心残りであること」「残念に思うこと、また、その様子」という意味があります。想定通りにならず計画が狂ってしまった場合や、期待した結果が出なかった場合など、思い通りにならずに残念だという際に使います。不祥事を起こし釈明する場合や、相手の言動を非難する場合にも使われます。

「まさか御社があのような不祥事を起こされるとは、大変遺憾です」「契約を守っていただけない現在の状況は、甚だ遺憾でございます」のように使用します。

「怒る」を言い換える熟語とは

「叱咤(しった)」

「叱咤(しった)」の意味は「大声をあげて叱りつけること」「叱りつけるようにして励ますこと」です。「叱」には「強い口調で怒鳴る」という意味があり、「咤」には「舌打ちする」という意味があります。「叱咤激励(しったげきれい)」で「大声で励まし、奮い立たせること」を意味します。

「彼は部下を頭ごなしに叱咤した」「キャプテンは怪我をした選手に代わって突然試合に出ることになった一年生を叱咤激励した」のように使います。

「叱責(しっせき)」

「叱責(しっせき)」は「叱る」と「責める」の両方の意味が込められた言葉で、「他人の失敗や過ちなどを叱り、咎めること」という意味があります。責任者や上の立場にある者が、下の者の失敗や過ちなどをきつく非難する場合に使用します。

「上司に叱責を受けた」「彼の部下に対するあまりに激しい叱責を止めた」のように使います。

「譴責(けんせき)」

「譴責(けんせき)」には「叱り責めること」「過失や不正などを厳しく咎めること」という意味があります。法令上では現在は「戒告(かいこく)」といい、懲戒処分のうち最も軽いもので、職務上の義務違反について警告をし、将来を戒めることを指します。

「職務規程違反で譴責される」「譴責処分を受け、始末書を提出した」のように使用します。

「業腹(ごうはら)」

「業腹(ごうはら)」の意味は「非常に腹が立つこと」「癪に障ること、また、その様子」です。「業腹」の「業」は仏教用語の「業火(ごうか:悪い行いをした者が自分の罪を報いるため地獄で火に焼かれ苦しむことを意味する)」からきており、「怒る」という感情のなかでも、かなり激しい怒りを抱いた時に使う言葉です。

「あいつに負けるとは業腹だ」「これほど業腹な仕打ちを受けて、黙ってなどいられない」のように使います。

介護や医療・保育現場ではどう「怒る」?

「怒る」時に避けるべき表現

ビジネスシーン以上に、介護や医療、保育の現場では、特に感情的に「怒る」ことは避けるべきです。これらの現場では、小さなミスが人命に関わる深刻な事態を招きかねません。感情的に怒りをぶつけて相手を追い詰めるのではなく、何に怒っていて、どうしてほしいのかが相手に伝わるようにする必要があります。

怒る時につい使ってしまいがちな表現のうち、避けるべき表現をご紹介します。

「怒る」時に避けるべき表現

  • 「前から~」
  • 「いつも~」「必ず~」「絶対~」
  • 「なんで~」

「前から思っていたけど、どうしてすぐに片付けないの?」のように、「前から~」と過去を持ち出すのはやめましょう。前から思っていたのであれば、その時に注意すべきであり、関連することだからと便乗して言ってしまうと、今回の出来事から焦点が逸れてしまいます。

「いつも同じミスをするよね」「いくつか業務を頼むと、必ず一つはやり忘れるね」など、悪い行動を繰り返すと一方的に決めつける言い方は避けましょう。怒られる側も「いつもではないのに」と反発する気持ちが先立ち、注意を素直に聞けなくなる可能性があります。

「なんでできないの?」のように、相手を否定する言い方はNGです。「なんで」と言われても答えようがなければ、ただ謝るだけになってしまったり、言い訳や反論をするだけになってしまったりと、建設的なやり取りにはなりません。頭から否定するような言い方ではなく、慎重に言葉を選びながらできない理由を探りましょう。

「怒る」ことを減らす言い換え表現

イライラと怒りを募らせると、つい相手を否定する言葉を言ってしまいがちですが、相手を肯定する言葉に言い換えることで、相手も怒られることが減り、自身も言いたいことを言えてストレスを抱えることが少なくなります。

「なんでできないの?」→「どうすればできる?」
「しゃべらないで」→「静かにしよう」
「ダメ!」→「止まって」「ストップ」
「走らないで」→「歩こうね」「座っていてね」

肯定する言葉を掛けられることで、自己肯定感も高まり、前向きな気持ちになれます。注意する側もされる側も、ストレスが減り穏やかに過ごせるでしょう。

まとめ

「怒る」は「不快や不満などがあり、我慢できない気持ち」「腹を立てる」「よくない言動を強く咎める」「叱る」などの意味を持つ言葉です。「怒る」という感情はストレートに表してしまうと人間関係の不和を生んだり、相手を傷つけたりする可能性があります。状況に応じての言い換えや、「怒る」感情をコントロールする必要があります。