一般的に「褒める」という行為はポジティブな行為ですが、言葉の使い方を誤ると、上から発言をしているようにとらえられてしまったり、本来の意味が伝わらなかったりしてしまう場合があります。「褒める」のシーンに応じた言い換え表現や、「褒める」際に気をつけたい表現と、その言い換え例をご紹介します。
「褒める」の意味とは
「褒める」の意味は「行いに対していい評価をする」
「褒める」には「人のしたことや行いを、優れていると評価して、そのことを口にする」「称える」「祝う」「ことほぐ」などの意味があります。
「教師は課題に一生懸命取り組んだ生徒を褒めた」「大会に入賞したことを父から褒めてもらえた」のように使います。
「褒める」と「誉める」の違い
「ほめる」には「褒める」だけでなく「誉める」という表記もあります。一般的に「褒める」の表記は、目上の人が目下の人を褒める場合や、同等の相手を褒める場合に使います。
一方「誉める」の表記は、社会的に評価される状況で使われるのが一般的です。「世界平和に貢献した彼の行動は、今なお誉め称えられている」のような場合です。また、「誉める」は常用外漢字のため、公用文では使用できませんので、覚えておきましょう。
ビジネスで使える「褒める」の言い換え表現とは
「称賛」
「称賛(しょうさん)」の意味は「褒め称えること」です。「事故から子どもを救った彼は、称賛の的となった」「彼女の行為は称賛されるべきだ」のように使用します。
「称賛」と混同しやすい言葉に「賞賛(しょうさん)」があります。「称賛」が「褒める」と同じく行動や品質などを評価して、それを口にするものであるのに対し、「賞賛」は相手の行動や能力などに対して感謝や尊敬の意を表し、口にすることを指します。
「賛美」
「賛美(さんび)」にも「褒め称えること」という意味があります。「讃美」とも表記します。「称賛」との違いは、「賛美」には「偉大なもの、もしくは神聖なものとして称えること」というニュアンスが含まれることです。
「神を賛美し、信仰の気持ちを込めて歌う」「彼女の美しさを賛美する」のように使います。
「礼賛」
「礼賛(らいさん)」は「素晴らしいものとして褒め称えること」「ありがたく思うこと」「仏教用語で、仏・法・僧の三宝 を礼拝 して、その功徳を称えること、また、その行事」という意味の言葉です。「礼讃」とも表記します。
「健康を礼賛する」「彼の偉業を礼賛する」のように使用します。
目上の人を「褒める」際のNG表現と、OK表現への言い換えとは
「さすがですね」→「素晴らしいですね」
本来「褒める」という行為は目上の人から目下の人に対して行うものです。目上の人に「褒める」気持ちを伝える場合には、偉そうに聞こえてしまわないように配慮する必要があります。
「さすがですね」の「さすが」には「評判や期待通りの事実を確認して改めて感心する様子」「なるほど、たいしたもの」という意味があります。「さすがですね」は感心した気持ちを表しストレートに相手を褒める言葉になるので、目上の人に対して使うのは避けた方が無難です。
例えば、目上の人に「さすがプレゼンテーションが上手ですね」と伝えたいなら、「先程のプレゼンテーションは素晴らしかったです。大変勉強になりました」のように言い換えましょう。
「通ですね」→「お詳しくていらっしゃいますね」
「通(つう)ですね」の「通」は「ある領域の趣味や道楽について精通していること」という意味で使われます。
しかし、目上の人にご馳走になった時に「さすがワイン通ですね」のように言ってしまうと、どうしても偉そうに聞こえてしまいます。「ワインにお詳しくていらっしゃいますね」のように敬語表現に言い換えるようにしましょう。
「すごい上手ですね」→「腕前に感服いたしました」
「すごい上手ですね」の「すごい」は、副詞的に用いられる新しい使い方ですが、そもそもこれは誤った使い方で、「すごく」が正しいと認識する人が多い言葉です。誤った使い方をしていると思われてしまう可能性があるばかりか、偉そうに聞こえてしまう言葉でもあるので、言い換えた方がベターです。
例えば「ゴルフすごい上手ですね」なら「ゴルフの腕前に感服いたしました」と言い換えてみましょう。
保育・看護で使える「褒める」の言い換え表現とは
「認める」
保育や看護の現場では、「褒める」という表現をあえて使わないようにする傾向があります。例えば、保育士が保育日誌に「褒めてあげました」と記載した場合、その子どもの保護者が上から発言されているように感じ取ってしまう可能性もあるからです。看護の場合も同様です。
「褒める」の言い換え表現としてよく使われている言葉に、「認める」があります。「○○くんが率先してお片付けをしてくれていたので、褒めてあげました」という内容を伝えたいのならば、「○○くんが率先してお片付けをしてくれていたので、その行動を認めて声かけをしました」のように言い換えが可能です。
「受け止める」
「受け止める」もまた、「褒める」の言い換え表現として保育や看護の現場でよく使われます。
「リハビリの時間をもっと増やしたいという意欲的な姿勢を褒めた」ではなく、「リハビリの時間をもっと増やしたいという意欲的な姿勢を受け止めた」とした方が、より同じ目線で看護者と被看護者が向き合えているように感じられます。
「励ます」
「励ます」には「気持ちが奮い立つようにしてやること」「元気づける」「力づける」という意味があります。「褒める」のもう一歩先、評価するだけでなく、やる気も引き起こすような言い方ができれば、「励ます」ことができたといえるでしょう。
「発表会の劇の台詞を全部覚えていたので、褒めてあげました」というようなシチュエーションでは「発表会の劇の台詞を全部覚えていたので、本番も頑張ろうねと励ましました」のように言い換えができます。
まとめ
「褒める」の意味は「人のしたことや行いを、優れていると評価して、そのことを口にする」「称える」「祝う」「ことほぐ」などです。一般的には「褒める」という行為は目上の人から目下の人に対しての行為であるため、自分が目下の場合や立場が同等な相手の場合には、失礼がないように言い換え表現を使ったり、偉そうに聞こえてしまわないように配慮したりしましょう。