コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

今回お話を聞いたのは、東京から氷見に移住し、魚料理を提供する出店やオンラインでの料理教室をしている魚料理研究家の昆布(近森光雄)さん。

「サカナとサウナ」という屋号を掲げ、「富山県氷見から、サカナとサウナによる新しく豊かな食とライフスタイルを提案する」をコンセプトに、出店や料理教室だけでなく、InstagramやZINEで新鮮な魚を美味しく食べる方法や大好きなサウナの魅力を発信しています。

魚とサウナはシンプルに昆布さんの好きなことだそう。そんな昆布さん、実は移住前は大手スーパーの売り場で3年半働いていました。

縁もゆかりもなかった富山県の氷見に移住を決めたきっかけはなんだったのでしょうか?その理由と今後挑戦していきたいことを聞いてみました。

コロナ禍ではじめたオンライン料理教室「昆布の台所」

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

—コロナ禍で色々なオンライン化が進む中、昆布さんはオンライン料理教室「昆布の台所」をしていらっしゃいますよね。

はい、まさにコロナ禍の中、開業したんです。その中でオンライン料理教室は既にいくつかありましたが、魚をさばくことを中心とした料理教室はありませんでした。そんな折、富山の氷見から魚を直送して、お魚さばきから料理のコツまでを学べる料理教室があったら面白いんじゃないかと思い事業化したんです。

コンセプトは「魚をさばくって、おいしい。」新鮮な魚の美味しさだけでなく、魚の調理法のオイシさ(豊かさ)を学んでほしいという想いを込めています。

WEBシステムを使って、常に講師の手元を映す形で、同時に3名程度に一緒にレッスンを行っています。お客様の手元も見ながら魚のさばき方や調理法をお伝えして、最後はみんなで料理を見せ合います。

—ライブ感があり、移動する手間も省けますね。しかも、自宅から参加できてすぐに食べられるのもいいですね。

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

はい、YouTubeだと分かりやすくても、どうしても発信が一方向になってしまいます。コミュニケーションが生まれず、視聴者側から質問などもできないと感じていました。

その分、オンライン料理教室ならつまずく部分を細かく伝えられますし、固定した角度で魚をさばく手元を見られるので、「分かりやすい」などのいい部分もあります。

魚を丸ごと買ってさばきたてを食べると、身の本来の旨味や食感の豊かさに驚きます。魚一匹から、多くの身が取れることはもちろん、アラ汁やカマの塩焼きなど様々な魚料理を作ることができるんです。お財布にも優しく、お魚を美味しく食べることができて、食卓をより豊かなものにできると考えています。

魚をさばくのは少しコツと知識がいりますが、その分得られる「おいしさ」は想像以上です。

都会から地方へ移住し、独立をきめたきっかけとは

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

—昆布さんは富山の氷見の魚に惚れて移住してきたとのことですが、コロナ禍の中、移住して独立した経緯を教えて下さい。元々魚が好きだったんですか?

大学時代から、留学やバンドをしていて好きなことに興味を強く持つ性格でした。でも、その中で最も好きなことはご飯を食べること・お酒を飲むことでした。

なので就活ではお酒や食品のメーカーを中心に活動しました。その結果大手スーパーに就職したんですが、配属先が偶然魚の部門だったんです。そこでは、3年半で2店舗をまわりながら働いていました。

—独立する前は大手で就職が決まって安定した仕事をしていたんですね。

実は、最初は仕事として割り切っていたので、最初から魚に思い入れが強かったわけではありません。でも、2店舗目のお店で魚の仕入などの責任者を担当するようになってから、魚に興味を持つようになりました。

それがきっかけでいくつかの漁港を旅行で回っていく中、氷見にたどり着いたんです。旅行したら、とてもいい場所で半年後には移住していましたね。

—直感と行動力がすごいですね!移住を決める動機が何かあったんですか?

実は、「何かをしたい」じゃなくて、「ここに住みたい」と思いました。魚の新鮮さや人の温かさ、景色の素晴らしさに完全に一目ぼれしてしまったんですよね。当初仕事は、今までの魚に関する知識や技術が活かせればいいなというレベルで考えていました。

「就職か、独立か」でフリーランスを選んだ理由

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

—移住して、独立することも決めていたんですか?

当初は魚関係の会社への就職を考えていたのですが、富山でで自営業している人に「わざわざ氷見にきて会社員になるの?」って言われて、そこでハッとして…。そこから「確かに。では自分には何ができるだろう」と考え始めたんです。そのことがきっかけで、魚の料理教室をはじめました。

—すごいスピードで色々と決まって、そして氷見の人々とも繋がっていったんですね。

はい。「魚好きで移住してきた」と話すと、皆さん好意的に受け入れてくれました。年末には、富山県内にある個性的な店と人が集結した施設「SOGAWA BASE」にて、「サカナとサウナ POP UP KITCHEN」として一ヶ月限定で出店させていただきました。

ランチタイムには魚をふんだんに使ったサンドイッチを、夜のバータイムにはお酒に合わせた魚のおつまみやシーフードフォーを提供しました。

—地元の人にとっては当たり前の魚も、昆布さんが手掛ける新しいサンドイッチという食べ方で新鮮に楽しめそうですね!

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

コース料理などは持ち歩けませんが、サンドイッチのいいところはどこへでも気軽にその料理を持っていけるところです。具材はスパイスや調味料を駆使して、魚臭さなどを消したうえでパンにはさんでいるので、普段魚を食べない方にも好評でした。

サカナの魅力を届ける情報発信と今後の夢

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

—そんな風に移住してコロナ禍で独立し、新しい試みをしている昆布さんですが、移住で辛かったことはありましたか?

最初はお風呂のない部屋に住んでいたので、それは少しきつかったですね(バイト先の銭湯で風呂に入っていました)。エアコンもない部屋だったので、冬の寒さや夏の暑さは結構しんどかったですね…。それ以外だと、自分の今まで学んだこと・好きなことを何とか事業として形にしていくことはしんどいですけど、楽しさのほうが勝っていますね。

—昆布さんは自分の強みと好きなことが明確な分、やりたいことを具体化していく力が強いように感じます。今後、「サカナとサウナ」でやっていきたいことはどんなことですか?

サカナとサウナは「魚とサウナによる新しく豊かな食とライフスタイルを提案したい!」というのがテーマです。

これまでのサービスを進化させてより多くの方に利用していただくことに加えて、今後は、大好きなサウナに関しても事業を拡大していきたいと思っています。例えば、合間に食べる食事「サウナフード」を魚で作る、などです。

その情報発信のためにも、Youtubeでの動画撮影やInstagramでのレシピ提案をより強化していく予定です。

—今後は好きな土地でどういう未来を作っていきたいですか?

魚のサンドイッチなどを販売することはもちろん、リアルでの料理教室もできるようなお店兼アトリエを氷見に作りたいと思っています。そこを拠点に富山県内外に出張も行って、日本中、世界中で魚とサウナの魅力を伝えていきたいですね!

インタビューを終えて

昆布さんが富山で活動している動機がシンプルに「ここが好き」だから、地元の人たちにも伝わる。応援してくれる人も多いのも納得です。

「ワーケーションとか、移住にはいろいろな動機があると思うんですけど、根本的に自分がその土地をどれだけ好きになれるか、だと思います。

このご時世、人口密度が低いからみたいな、『それならどこでもいいじゃん』みたいな理由だとしんどくなるというか。僕はとことんこの土地が好きなので、出来ればずっとここで暮らしていきたい」

そう語ってくれた昆布さんは、移住した氷見で、取材の日も朝サウナに入って、サカナを使う仕事をしていました。

地方は仕事がないと言われがちですが、したいことを決めれば、逆算でやるべきことは決まっていきます。移住や独立を決める際、自分の直感や好きなことへの想いを伝えながら「何ができるか」を探して動いてみることが、そこで暮らす道が開けるコツなのかもしれません。

コロナ禍で地方移住&開業をした魚料理研究家の昆布さんインタビュー

東京都出身の料理研究家。魚の新鮮さに一目ぼれしたことをきっかけに氷見に移住し「サカナとサウナ」を開業。Instagram(@kombu_s.t.s)では200品近くの魚料理のレシピを投稿中。一晩で三十三品もの魚料理を作るイベントなどの主催や、オンライン魚料理教室「昆布の台所」、魚料理メインのオードブルの提供を行っている。12月には富山市総曲輪の商業施設「SOGAWA BASE」にて、1か月限定で「サカナとサウナ POP UP KITCHEN」を出店。活動はInstagram(@sakana_to_sauna)でチェック。

 

この記事を書いた人
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さかもとみき
1986年高知生まれ。広告代理店や旅館勤務を経て、ライター・恋愛コラムニストをしています。