今回インタビューさせていただいたのは「株式会社NaraDeWa」の代表、奥村政哉さん。「奈良の魅力を世界に広めること」を軸に、メディア事業やコンサルティング事業を行っています。今回は奥村さんに、起業までの経緯やどのように奈良の魅力を発信していくかを伺いました。
「奈良」をもっと世界の人に知ってもらいたい想いから起業
ーまずはNaraDeWaで行っている業務内容を教えてください。
NaraDeWaは、大きく分けるとメディア事業とコンサルティング事業を行っています。
メディア事業は奈良を多言語で発信する「Nara-Travel.com」(準備中)、“橿原市を楽しむ”をテーマとした「カシュー」、テイクアウト・デリバリー対応の奈良県内の飲食店を紹介する「奈良テイクアウト」(運営支援)の3つがあります。コンサルティング事業の方は、経営戦略の策定から業務改善などを実施しています。
ー創業のきっかけや経緯を教えてください。
学生時代に世界一周旅行をしたときに、旅先で知り合った海外の方が大阪や京都のことは知っていても「僕の出身地である奈良のことは誰も知らなかった」ことがあり、悔しくて。その体験が根底にあります。
それから奈良という地元に向き合うようになり、「奈良の魅力をもっと多くの人に知ってほしい」と思うようになったんです。大学卒業後、東京のコンサルティングファームに勤めた後に起業しました。
ーなぜ奈良ではなく東京の企業に就職したんですか?
もちろん奈良で経験を積み上げる良さもあると思いますが、東京でスピード感を持って成長したいと思ったからです。最先端を走っている部分もあるからこそ、東京で得た知識や経験を奈良に還元できたらと。
ーなるほど。就職先にコンサルティングファームを選んだのはなぜですか?
将来事業を立ち上げるにあたって早く実力を付けたいと思って、就職活動をするときにもベンチャー企業かコンサルティングファームで考えていたんです。
ベンチャー企業でひとつの事業に特化したスキルを身に付けるか、コンサルティングファームで、さまざまなビジネスモデルの知識を得るかの二択だったのですが、まだ自分がどんなビジネスモデルで起業するかを決めていなかったので後者を選んだ形ですね。
ーかなり将来を見据えての就職だったんですね。東京の企業に勤めていたときにも、奈良とのつながりはあったのでしょうか?
そうですね、定期的に奈良に帰ってイベントに参加したり、人に会ったりしていました。でもどちらかというと、東京で奈良関連のことをやることの方が多かったです。例えば、奈良の大和野菜や大和肉鶏を仕入れてふるまうイベントを開催することもやってました。
ー東京の企業で実力を付けながらも、奈良にまつわる活動を並行して行っていたということですね。その後、独立されたということでしょうか?
2社をトータル4年半勤めた後に、独立しました。2018年10月の創業から1年は個人事業主として活動して、その後法人を設立したという流れです。
奈良を好きな人が、自身の言葉で多方面に発信していく
ーNaraDeWaの事業のひとつであるメディア運営について、詳しくお伺いできればと思います。まずNara-Travel.comの内容や背景について聞かせてください。
Nara-Travel.comは創業のきっかけともなった、海外の人にもっと奈良のことを知ってもらうことを目的として、多言語で奈良を発信するメディアとして立ち上げました。サイト自体はできていて、記事もあるのですが、新型コロナウイルスの影響もあってリリースがまだできていないのが現状です。
ー今はなかなか、海外から観光客の方が来られない状況ですもんね……。
そうなんです。サイトはまだ非公開ですが、記事は奈良に住んでいるライターさんや奈良で事業を行っている人にそれぞれの視点で奈良の魅力を紹介してもらっています。
Nara-Travel.comはまだリリースできないのもあり、今は橿原市にフォーカスしたメディアの「カシュー」の運営がメインになっています。
橿原市民を含めて、奈良県民って「奈良は何もない」と言いがちなんですよね。加えて今はコロナの影響で旅行になかなか行けないので、地元の人が地元を散策する機会が増えたと思うんです。
今後海外や外向きの発信をしていくにしても、もっと地元の人が地元に何があるかを知って、もっと好きになってもらいたいと思って立ち上げました。
ーNara-Travel.comが海外を中心とした外向きの発信に対し、カシューは地元民向けの発信ということですね。
橿原市の中でも、よく観光雑誌などで紹介されるようなメインの地域よりも「実はこんなところもあるんですよ」と言えるような、他の地域を中心に取り上げるようにしています。
奈良県民は大阪や京都で働いている人も多いので、奈良に住んでいても奈良のことをあまり知らない人も多いんです。そういった方にも、もっと奈良の魅力を知ってもらえたらと思っています。
ーカシューに掲載する橿原市内のお店は、どのようにピックアップしているのでしょうか?
カシューはWEBメディアの他にフリーペーパーと動画でも発信していて、フリーペーパーの方はお散歩マップのようにもなっています。それもあり、毎号ごとに橿原市内のエリアを決めて作成しているので、そのエリアの中から選んでいます。
いろいろな場所を巡れるように食べ歩きできたり、ちょっと立ち寄れるようなお店が中心ですが、判断基準としては純粋に“自分たちが行きたいと思うか”を大事にしています。
ー奈良が好きな人たちが選ぶお店だと信頼性も高そうですし、地元の人も足を運びたくなりそうですね。
カシューは広告枠を別で設けているので、オリジナルコンテンツとして掲載させていただくお店からはお金をいただいていません。だから本当に自分たちが紹介したいお店やスポットを紹介することができています。
ー事業の中でも収益化のポイントを分けるのは良いですね。全部を収益化してしまうと、本当に紹介したいところが紹介できなくなってしまうこともありそうですし。
もっと言うと、メディア単体での収益化はそこまで目指していません。僕自身にコンサルティングのスキルがあるので、そこで収益も出しつつ、最終的には奈良のいろいろなお客様の課題解決のお手伝いができればと思っています。
さまざまな角度から奈良を発信していく
ー会社の経営形態はどのようになっているのでしょうか?
自分とは別に社員が1人いて、あとは業務委託メンバーで運営しています。プロジェクト単位で携わってくれている業務委託のメンバーなども含めて10人くらいです。僕はコンサルティング業務とメディアのディレクションを担当して、実運用は他のメンバーに任せていることも多いです。
ーコンサルティング業務も、クライアントは奈良の方が多いのでしょうか?
もともと東京で働いていたので、独立したときは東京や大阪のクライアントさんが多かったですが、徐々に奈良の企業さんとの接点も増えてきていますね。以前は東京・大阪・奈良の3拠点を行き来していましたが、最近はリモート対応するところも増えているのでオンラインで対応することも多いです。
ーまさに各方面から奈良に携わっていますね。最後に、NaraDeWaで大切にしていることを教えてください。
押し付けないこと、自分の軸を持ち込まないようにすることですね。奈良には土地柄上、これまでの長い歴史にこだわりを持っている方もいれば、もっと最新のものを取り入れたいという方もいます。どちらか正しいということもないし、それは人それぞれの価値観なので、会社としては”こうでなくてはならない”とは定めないようにしています。
各メディアでもライターさんなりの感性を大事にして、さまざまな角度から奈良の魅力を発信していければと思っています。
ーたしかにメディア側が定義したものがあると、受け取り側も同じように感じなくてはならない感じになってしまいますもんね。
“これが読者に刺さる”というものがあれば、徐々にその方向にシフトしていくのも良いと思います。ですが、まだ初期で読者に何が刺さるかもわからないですからね。僕自身も会社も“奈良の専門家”ではないので、あくまでも自分の手の届く範囲で奈良の方達のお手伝いができたらと思っています。
奈良の人たちをつなげるハブのような存在、あるいは何かあったら相談しようと思える縁の下の力持ちの役割を目指していきたいです。
インタビューを終えて
奈良を多角的に多方面に発信しつつも、あくまで”押し付けない”と言っていたことが印象的でした。自分の好きなものこそ、魅力を伝えたいと押し付けてしまいがちになってしまうと思うので、それぞれの価値観を大事にする姿勢はとても素敵だと思います。
海外の方からすると、日本の都市といえば東京や京都のイメージがあると思いますが、そこに奈良が並ぶ将来もある気がしてくるインタビューでした。
伊藤 美咲
ステキな人やモノを広めるフリーライター。1996年東京生まれ、東京育ち。関心のあるジャンルは働き方・ライフスタイル・美容・邦ロックなど。
1990年 奈良県橿原市生まれ。
株式会社NaraDeWa代表取締役。
奈良県橿原市の観光大使。
学生時代に世界一周旅行をした際の経験がきっかけで、地元奈良を世界に発信したい、と志す。現在は、奈良県橿原市を拠点に、経営・ITコンサルティング業と地域メディア運営を中心に、地域に関わる活動を行う。
趣味は、Jリーグ観戦・旅行・読書。