2019年11月、東京都 神泉にオープンしたシーシャ専門店Lilac。作業場としても、人との交流の場としても居心地が良いと評判のお店です。今回はLilacのオーナー店長である佐藤有紀恵さんに、お店オープンまでの経緯やお店のこだわりなどをお伺いしました。
通っていたシーシャ屋さんで出会った友達と念願のお店をオープン
ーシーシャ専門店Lilac創業のきっかけや経緯を教えてください。
私はもともと大学卒業後から大手の飲食店で働いていたのですが、いつかお店を出したいなと思って居ました。就職して2年ほど働いた頃には店長職になって、チェーン店の経営や営業の回し方を勉強していたのですが、チェーン店にあって個人店にないものやその逆もあると気付き、もっと勉強するために小さな個人の飲食店に転職しました。
転職したことによってチェーンの枠組みではなく、お店やそのお店で働いている人にお客さんがつく、個人店特有の良さについて学ベた事はとても大きな経験でした。
そんないつかの将来の準備の最中に、家の近くにあった下北沢のシーシャ屋さんに通い始めたんです。
ーシーシャ屋さんに通い始めたのはなぜなのでしょうか?
当時はいつかお店を出すために…と、昼も夜も働いて居て仕事と家の往復ばかりでした。職場の人以外の誰かとずっと話したいと心の底で思っていたんだと思います。そんなときに偶然友達が連れて行ってくれたのが下北沢シーシャ2号店でした。
気付けば通っているうちに自然と友達ができていって、誰かと話せる場所があることがストレス解消にもなっていたし、さまざまなフレーバーがあるシーシャが面白いなと思っていました。
そして週に3〜4回くらいの頻度で通っているうちに仲良くなった友達が、現在Lilacに出資してくれているメンバーです。みんなもいつかは自分たちの店を持ちたいという気持ちはありつつも、すでに他の事業を立ち上げているので、実際にお店に立つことが難しい状況だったんですよね。そこで誰か店長をやってくれないかなとなったときに手を挙げたのが私です。 本当にいろいろな事が偶然重なりました。
渋谷で働く大人のための隠れ家的作業場になることをイメージ
ーLilacは立ち上げ時にクラウドファンディングを行なっていましたよね。
はい、行なっていました。もちろん資金集めの意味もありましたが、大きな目的は集客目的でした。シーシャ屋さんを作る人はもともとどこかのお店で修行してから独立することが多いので、すでにお客さんがついている状態で開く人が多いと思うのですが、私はシーシャ屋さんで働いた経験がなくて、お客さんがいなかったんです。なので宣伝や集客のためにもクラウドファンディングを行いました。
ークラウドファンディングは見事目標金額を達成していますが、何か施策があったのでしょうか?
お客様のターゲット層について、皆んなですごく話し合って明確にしました。渋谷や神泉にはIT系企業のオフィスがたくさんあって、作業場に困っている人も多いので、まずは作業場として使えるお店を作ろうと思ったんです。
内装はレトロチックで落ち着きのある隠れ家的雰囲気にして、年齢層はオーバー25歳の方をイメージしました。実際に来てくださるお客さんもまさにそういった方々なので、そういう場所が欲しい!と思っていた方達にうまく刺さったのではないかなと思います。
ーお店の場所を神泉にしたのは理由があるのでしょうか?
私の中のイメージですが例えば渋谷駅周辺だとわりとチェーン店が多く雑多なイメージがあるのですが、少し離れた神泉はこだわりのある個人店が多いんです。渋谷駅からも来られる距離ですが、渋谷だけど渋谷じゃ無い、少し雰囲気が異なっているような、「大人の雰囲気があるシーシャ屋さんを作りたい」ということで、神泉にお店を構えることにしました。
ーなるほど。物件はすぐに決まったのでしょうか?
当初は文化村通りの物件で考えていたのですが、急に今の物件の空きが出てきて。申し込みが4件ほどあったそうなのですが、オーナーの息子さんが「シーシャ屋さんを将来やりたいからモデル店として見たい」と言ってくださり、契約させてもらえたんです。
シーシャ屋さんは火災の原因になりかねないと倦厭(けんえん)されがちなので、まさに偶然が重なってできたお店です。お店を出す話が本格的に出たのが2019年の3月頃で、それからあっという間にプレオープンを経て、11月末にはオープンしました。
ーわずか半年でオープンなんてすごいですね……!
私はシーシャ屋さんでの勤務経験がなかったので、オープン前の数カ月間はシーシャ屋さんで働いている友達に見てもらいながら、美味しいシーシャを作れるように猛特訓しましたね。初めて友達に吸ってもらった時にボロクソに言われた事もあったのですが、その時の悔しい気持ちが今も毎日上達したい、と思い続けることにつながっていると思います。
一緒に立ち上げたメンバーもお店をオープン当初から盛り上げようとずっと力を貸してくれているので、あの時、迷わず経営を初めて本当に良かったと思っています。
何よりコミュニケーションにこだわった接客を意識
ーお店のコンセプトやこだわりを教えてください。
イメージとしては、上流階級のサロンのような大人の社交場を意識しています。Lilacでは雑談で楽しむだけではなくて、仕事や創作意欲につながるようなちょっと高度な会話ができる場所でありたいなと思っていますね。
お客さん同士の席も近すぎないような距離感になっています。お客さんもそれぞれ自分のやりたいことを持っている人が集まるお店になってきているので集中しつつも、疲れたら隣の人とちょっと話せる、遠すぎず近すぎない、そんな距離感にしています。
あとはとにかく接客をちゃんとやりたいと思っています。挨拶やお礼はもちろん、オーダーにおいても、お客様と向き合う事は意識しています。
例えばカフェで出てきたコーヒーがすごく濃かったけど、「お店は好きだから通いたい」と思ったら、2回目にそのお店に行った時にはちょっと軽めのコーヒーをお願いしますよね。
同じようにシーシャ屋さんでも、きちんと相手の好みに合わせたりコミュニケーションを取るべきだな、と思っているのでお名前を聞いたり、顔だけでなく煙の好みや飲み物の好みはなるべく覚えるようにしていますね。
ーたしかに店員さんに顔や好みを覚えてもらっていたらすごく嬉しいですね。
あとはお客さん同士のコミュニケーションも意図的に発生させるようにしています。例えばお店の端と端でサウナの話題が出ていたら、炭替えのタイミングでスタッフが「向こうでもサウナの話題が出てたんですよね」って言って、帰り際にちょっと紹介するみたいな。
もちろん作業に集中しているときは無理に声をかけることはしません。作業をしても、友達と会話をしても、どちらでも使えるような選択ができる場所であればいいなと思っています。一方で、常連さんが増えて新規の人が入りづらい雰囲気にならないようにと思っています。
なので新規のお客様はとっても、より一層大切に接客をさせて頂きたいです。お店を長く続けるほど忘れてしまう感覚なので、常に意識するようにしていますね。
ーでは最後に今後の目標や展望を聞かせてください。
経営的目標としてはLilacで最大の売り上げを出して、多店舗展開していきたいです。あとは個人的に芸術家にお金を回したいという気持ちが強いので、芸術家とIT企業の方がつながったり、お店で展示やコンサートができるような渋谷・神泉の文化の場所にもなっていきたいなと思っています。
インタビューを終えて
Lilacには私も実際に足を運んだことがあるのですが、2回目の来店時に顔を覚えててくださってたことにとても驚いた覚えがあります。作業もしつつ人とのコミュニケーションも取れる、まさに居心地の良いLilacの空間は一度行ったら「また行きたい」と思う人も多いはずです。もちろん、お一人様やシーシャ屋さんに行ったことがない方でも行きやすいと思うので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
伊藤 美咲
ステキな人やモノを広めるフリーライター。1996年東京生まれ、東京育ち。関心のあるジャンルは働き方・ライフスタイル・美容・邦ロックなど。
1992年生まれ。遂に28歳。
フレンドリーな性格と丸顔の為かいつも年下に見られがち。けど意外と歳とってます。
銭湯ではなぜか子供に人気、犬にはなぜか舐められます。
高校ではクラシック音楽を専攻で学び、そのあと日本女子体育大学舞踊学専攻に入学。
ダンサーになろうと思ってたが、ひょんなことから飲食業に身を捧げることを決意。
多分天職。
人生をとことん楽しんで生き抜きたい。スナック開きたいです。