退職の際の挨拶は、円満に退職し、次の仕事や生き方につなげていくためにとても大切なものです。新しいスタートを気持ちよく切るためにも、しっかりとした挨拶をしておきたいもの。今回はメールでの挨拶や、一言スピーチを求められた際の挨拶、手紙での挨拶などのマナーを、例文も交えながらご紹介します。
退職の挨拶、メールでする場合は?
〈社内〉メールでの退職の挨拶マナー
退職の挨拶はできる限り直接伝えるのが望ましいですが、社員数が多い場合や取引先が多い場合には、メールで挨拶をしても問題はありません。社内の人に退職の挨拶メールを送る場合には、以下のことに気を付けましょう。
- メールを送るタイミングを把握する
- タイトルは退職の挨拶であることが一目でわかるようにする
- 一斉送信の場合は、BCCに先方アドレス、TOに自分のアドレスを
- 退職理由は詳細に書かない
メールを送るタイミングは最終出社日の夕方が一般的ですが、会社によってタイミングが違う場合があります。過去に受け取ったことのある退職挨拶メールの送信時間を確認したり、事前に直属の上司に相談したりしておくと良いでしょう。
社内向けの退職挨拶メール例文
タイトルを見れば退職の挨拶であることがわかるようにし、一斉送信する場合にはメールアドレスが開示されてしまわないよう、先方アドレスをBCCに入れる配慮を忘れないようにしましょう。特にお世話になった人や、同じ部署の人には、個別に連絡することをおすすめします。
退職の理由については詳細に書かず、「一身上の都合」でとどめます。これまでの感謝の気持ちや、今後の抱負、会社や部署の活躍を祈る言葉を交えて、簡潔にまとめましょう。
件名:退職のごあいさつ ○○部◎◎(名前) お疲れ様です。○○部の◎◎です。 この度一身上の都合により、本日をもって退職することとなりました。 本来であれば直接ご挨拶に伺うところ、メールにて失礼いたします。 在籍中には大変お世話になりました。皆様からの温かいご指導、本当にありがとうございました。 この会社での経験を今後も活かしていきたいと思っております。 退職後の連絡先は以下の通りです。今後とも何卒よろしくお願いいたします。 メールアドレス:△△△△ 携帯電話:×××× 最後になりましたが、皆様のご活躍とご発展を心よりお祈り申し上げます。 今まで本当にありがとうございました。
〈社外〉メールでの退職の挨拶マナー
取引先など、社外の人への退職の挨拶をメールでする場合には、社内へのメールとはまた違った気を付けるべきポイントがあります。重要な顧客や取引先には後任と一緒に直接訪問し、挨拶をしましょう。
- 退職日を明記し、2~3週間前までには送る
- 後任者を紹介する
- 私用の連絡先は書かない
社外への退職挨拶のメールは、余裕をもって送信します。相手からの返信や引き継ぎに問題があった場合に対応できるよう、退職日の2~3週間前までには送るようにしましょう。退職日を明記することも大切です。
社外向けの退職挨拶メール例文
自分が退職した後も、在籍していた会社と取引先との付き合いは続きます。退職の挨拶の際は必ず後任者の名前、所属部署、メールアドレス、電話番号などの情報を伝え、自分の退職後に取引先が困らないようにします。
私用の連絡先を書き退職後も連絡を取ってしまうと、個人情報の不正使用をしているという誤解を与え、トラブルを生む可能性があります。どうしても退職後の連絡先を書かなければならない場合には、上司と相談をしましょう。
件名:退職のごあいさつ □□株式会社○○(自分の名前) 株式会社△△ ◇◇様 いつもお世話になっております。□□株式会社の○○です。 私事で大変恐縮でございますが、一身上の都合により✕月✕日をもちまして□□株式会社を退職することとなりました。 ◇◇様には在職中に多大なるご協力をいただきまして、心より御礼申し上げます。本来であれば直接ご挨拶に伺うべきところを、メールでのご挨拶になりまして申し訳ございません。 今後の貴社の担当は、同部署の◎◎が担当させていただきます。後日改めて◎◎がご挨拶に伺いますので、変わらぬお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。 最後になりましたが、貴社の益々のご発展と◇◇様のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
コロナ禍の退職の挨拶例文
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、本来なら直接挨拶できる場合でも、リモートワークや行動の制限により会えないまま退職を迎えてしまうこともあります。その際にはメールにも一言その旨を伝える文言を入れておくと印象が良くなります。
本来であれば直接ご挨拶をさせていただくところですが、コロナ禍の状況を踏まえまして控えさせていただきます。
退職の挨拶メールへの返信は「基本はしなくていい」
退職挨拶メールを受け取った場合、返信をする必要はありません。ただし、お世話になった人や仲の良い同僚などからのメールであれば、返信しても問題はなく、相手にも喜んでもらえるでしょう。退職挨拶のメールに返信をする場合には、以下のことに気を付けましょう。
- 転職理由や転職先は聞かない
- 感謝の気持ちを伝えることを心掛け、できるだけ質問はしない
退職の挨拶メールへの返信では、相手の今後のことを色々聞くのではなく、感謝の気持ちを伝えることを心掛けます。実際のエピソードや相手の長所を交えながら丁寧な返信をすれば、今後のお付き合いにつながる場合もあります。
退職の挨拶、一言スピーチを求められたら?
退職の挨拶スピーチのマナーと例文
最終出社日には、大勢の前でスピーチを求められる場合があります。どんなシーンでスピーチを求められても大丈夫なように、マナーとポイントを押さえておきましょう。
- 約3分程度を目安にし、長く話しすぎない
- ゆっくりはきはきと
- 次の職場の話題は出さない
- 具体的な退職理由は言わない
- 批判的な意見や愚痴を言わない
- 思い出に残るエピソードを織り交ぜながら、感謝の気持ちをしっかりと伝える
お忙しい中お時間をいただきましてありがとうございます。一身上の都合により、本日をもちまして退職をさせていただきます。 この業界は未経験で入社したため、何をしたら良いか戸惑うことも多く、ご迷惑をおかけしたことと思います。皆様のサポートのおかげで業務に慣れ、成長することができました。 特に、教育を担当してくださった□□さんをはじめ同じチームの皆さんには、悩みに寄り添い根気強く指導をしていただき、感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。 ここで培った経験を財産とし、今後も頑張っていきたいと思います。皆様のご健康とご活躍を心よりお祈りしております。本当にお世話になりました。
朝礼で退職の挨拶をする場合
朝礼で挨拶をする場合には、その後に業務が控えているため特に短く済ませるように配慮します。30秒から1分程度に話をまとめ、同僚へのメッセージは個別に伝えるようにしましょう。
おはようございます。朝礼の貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。 私事ではございますが、本日をもって退職をすることとなりました。皆様にはこれまで大変お世話になり、本当にありがとうございました。本日も最後までどうぞよろしくお願いいたします。
定年退職の挨拶をする場合
定年退職の挨拶の場合には、長年支えてくれたことへの感謝の気持ちを伝え、退職後の目標や新しく始めることなどを簡潔に述べます。思いが溢れて長くなりすぎないよう、伝えたいことがたくさんある場合には手紙にするのも良いでしょう。
私事ではございますが、本日をもって定年を迎えることとなりました。おかげさまで△△年勤め続けることができました。皆様には長きにわたり支えていただき、本当にありがとうございました。 今後は趣味の◇◇をはじめ、新しいことにも挑戦しながら、第二の人生を過ごしていきたいと思っております。 皆様のご活躍とご健康をお祈りして、退職のご挨拶に代えさせていただきます。本当にありがとうございました。
パートでも挨拶はした方がベター
パートや派遣の場合でも、退職の挨拶はしておく方が無難です。皆の前で挨拶をした方が良いか、どんなタイミングで挨拶をすれば良いかなどは、上司に確認を取りましょう。皆の前で挨拶をするタイミングがない場合には、お世話になった人に個別に挨拶をします。
本日がパートの最終日となります。今まで大変お世話になりました。 わからないことも多く、ご迷惑をおかけしたことも多かったと思いますが、楽しく働かせていただき感謝しております。皆様もお体に気を付けて、これからも頑張ってください。
ユーモアのある退職の挨拶をしたい場合
業務時間内の退職の挨拶では、それほどユーモアを意識する必要はありません。しかし、送別会では少しのユーモアを取り入れるのも良いでしょう。ユーモアのある退職の挨拶をしたい場合のポイントは以下の通りです。
- 「緊張している」とあえて言う
- 「笑わせよう」と変に気負わない
- ユーモアは少しだけにする
- 芸人のネタを使ってみる
あえて「緊張しています」と言うことで、「だから多少おかしなところがあっても許してほしい」という気持ちを伝えることができます。変に面白いことを言って笑わせようと気負わず、笑ってもらえたらいいな、くらいの気持ちでいましょう。大切なのは、丁寧に感謝の気持ちを伝えつつ、ほんの少しユーモアを交えること。匙加減がコツです。
退職の挨拶、手紙でする場合は?
手紙での退職の挨拶マナーと例文
直接会って退職の挨拶ができない場合で、相手が年配の方の場合や、より丁寧に挨拶をしたい場合には、手紙を書くことをおすすめします。
- 「拝啓」で始め「敬具」で締める
- 時候の挨拶を前文に入れる
時候の挨拶はその月や時期によって相応しいものがあるので、事前に調べておきましょう。手紙ならではのルールを押さえておくことが大切です。
株式会社△△ ◇◇様 拝啓 ◎◎の候 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 私事で大変恐縮でございますが、この度○月□日をもちまして、株式会社××を退職することとなりました。在籍中には何かとお力添えをいただき、格別のご高配を賜りましたこと、誠にありがとうございました。 新たな勤務先では、現職での営業経験を活かし、新規顧客への商品提案を行っていく予定です。◇◇様からの薫陶を胸に、次の職場でも精進してまいります。 略儀ながら、書面でのご挨拶となりましたことご容赦ください。 末筆になりますが、◇◇様のご健康とご活躍を心よりお祈り申し上げます。 敬具 令和●年○月○日 株式会社○○ △△部 ○○○○(自分の名前)
手紙で退職の挨拶をもらった場合の返事
退職の挨拶の手紙を受け取った場合、それが中途退職や起業によるものであれば、返事にはこれからの活躍や成功を祈る言葉を贈りましょう。定年退職の場合は、これまでの勤務や業績を労う言葉を贈ります。ただし、相手の方が目上の場合は、お世話になったことへの感謝の言葉を伝えましょう。
返事を出す場合にも、手紙のルールに則ったものにすることが大切です。
まとめ
退職の挨拶はできる限り直接伝えるのが望ましいですが、社員数が多い場合や取引先が多い場合、遠方の場合などには、メールや手紙で挨拶をしても問題はありません。スピーチをする際には長くなりすぎないよう注意し、感謝の気持ちを簡潔に伝えましょう。