ビジネスシーンで耳にする機会が多い「申し送り」という言葉。業務を滞りなく進めるために重要になる「申し送り」には、どのような意味があるのでしょうか。「申し送り」の意味をはじめ、申し送りが重要視される職種や業種、申し送りの目的や方法も解説します。
「申し送り」の意味とは
「申し送り」の意味は「前任者から後任者に情報を引き継ぐこと」
「申し送り」には、進行中の仕事を前任者から後任者へと引き継ぐ際に、それまでの進捗状況や引き継ぎ事項などの情報を伝える、という意味があります。また、前任者が後任者に向けて引き継ぎが円滑に進むようにまとめた必要事項を「申し送り事項」といいます。
「申し送り」の言い換えは「引き継ぎ」
「申し送り」の言い換え表現は「引き継ぎ」です。「引き継ぎ」には、他の人が処理していた仕事や作業などを代わりに行うこと、という意味があります。
ビジネスシーンでは、異動や転職などの理由で、他の人が自分が行っていた仕事や業務を受け継いで担当することになった際に、後任者に仕事や業務の内容を伝えることを「引き継ぎ」といいます。
「申し送り」を使った例文
- このことはちゃんと申し送りしておいてください。
- きちんと申し送りができていれば、このトラブルは避けられたはずだ。
「申し送り」が重要視される職種や業種とは
看護・介護業界
「申し送り」が行われる頻度や重要性は、職種や業種によって異なります。特にシフト制の職場では、申し送りはとても重要になります。
24時間体制でのケアや観察が必要になる看護や介護の現場では、申し送りは頻繁に行われます。看護職では医療ミスを防ぐために、カルテとは別に「申し送り」として患者の情報をまとめて、後任のスタッフが正確に状況を把握できるようにするのが一般的です。
警備業
警備の仕事も24時間対応が必要なケースがある業種のため、警備員は交代制で業務にあたることが多くなります。施設や建物などに問題が生じ、何かしらの対応をした場合には、その内容を申し送り事項として後任者に伝えることで、後任者もその後の経過を意識して観察することができます。
営業職
営業職は看護や介護、警備などの仕事とは違い、一日の中で業務担当者が交代をするというわけではありませんが、異動や配置換えなどがあり、それまで担当していた営業先を別の担当者に引き継ぐことになった場合には、申し送りが必要になります。
「申し送り」の目的とやり方とは
「申し送り」の目的
申し送りの方法は職種や業種、職場によっても違いますが、申し送りの目的は共通しています。申し送りの目的は、業務を適切かつ円滑に進められるようにすることです。
引き継ぎに必要な情報や知識を申し送りによってインプットすることで、間違いのない処置や対応が可能になります。また、申し送りノートに申し送り事項を記載すれば、前任者が完了させた仕事は何なのか、どんな作業が残っているかが可視化され、後任者が取り組むべき業務の把握も簡単に。業務の見える化により作業の優先順位が立てやすくなり、スムーズに仕事を完了させられます。
「申し送り事項」の書き方
「申し送り事項」を書く際には、以下の4つのことを意識しましょう。
- 伝えなければならないポイントを整理しておく
申し送り事項は、誰が読んでも正しく理解できるように、伝えなければならないポイントをあらかじめ整理しておきましょう。
例えば、看護師や介護士の方の場合には、患者や利用者の体調や容態の変化、医師に確認してほしいポイントなどは必ず申し送りします。伝えるべきポイントを網羅できているか不安な場合や、業務に慣れないうちは、先輩や上司の申し送り内容を参考にするとよいでしょう。
- 事実と個人の意見を区別する
申し送り事項には、実際に起こったことを伝えるとともに、それに対する自分の意見も伝えます。ここで気をつけなければならないのは、事実と個人の意見を区別して伝えることです。
事実と個人の意見や推測が混じってしまうと、後任者が状況を正しく理解できなかったり、どう対応すべきかが不明確になってしまったりして、業務遂行に支障が出る場合があります。まずは事実をそのまま伝え、その後「ここからは私の意見ですが」や「ここからは推測となりますが」などの言葉を添えて自分の意見だとわかるように区別をして記載しましょう。データ(事実)の横に「この順序で進めると効率がいいと思います」といったポイントを添えるのも有効です。
- 項目別に分けて伝える
申し送り事項は、「日時」「記入者」「業務内容」「所感」「特記事項」などの項目を立て、誰が読んでもわかりやすいように記載しましょう。時系列で記入してしまうと、受け取り手は情報が整理し辛く要望が伝わらない場合もあります。
項目別に記載することで要点が明確になり、注意点もわかりやすくなります。
- あらかじめテンプレートを作成しておく
申し送りのためのテンプレートは、あらかじめ作成しておきましょう。事前に適切な項目分けがされたわかりやすい体裁のテンプレートを用意しておけば、業務の合間に申し送りすべき内容をメモしていけるため、伝達漏れを防ぐことができるとともに、体裁を整える時間も短縮できます。
業務内容に応じていくつかのテンプレートを用意しておくと、どの業務でも申し送りがスムーズになります。
取引先や上司に「申し送り」はNG
「申し送り」は、社内で使う言葉です。社外の人に対しては使いません。社外の人に対して取引の進行状況などを問う場合には、「この件について詳しくお教えいただけますか?」のように、「申し送り」以外の言葉に置き換えましょう。
また、上司や目上の人に対しても「申し送り」は使いません。上司や目上の人に対して「申し送りさせていただきます」という意味のことを言いたいのなら、「お伝えいたします」や「ご報告させていただきます」などと言い換えるようにしましょう。
「申し送り」の英語表現とは
「申し送り」は英語で「message」
「申し送り」を英語で表現する場合、「message」が使えます。「message」には「伝言」や「言付け」という意味があります。
他には、「言葉を伝える」という意味の「pass the word」、「引き継ぎ」という意味では「handing over」や「transfer」も使うことができます。
「申し送り」の英語表現を使った例文
- Do you have any message for her?(何か彼女に申し送りはありますか?)
- Please pass the word to everyone about this.(この件について全員に申し送りしてください)
- Please do a thorough hand-over to your successor.(後任者にしっかり申し送りをしてください)
まとめ
「申し送り」の意味は、「進行中の仕事を前任者から後任者へと引き継ぐ際、それまでの進捗状況や引き継ぎ事項などの情報を伝える」です。申し送りの目的は、業務を適切かつ円滑に進められるようにすること。看護や介護の業界や警備業、営業職などでは、特に申し送りが重要になりますので、ポイントを踏まえた申し送りができるようにしましょう。