「惚ける」の読み方をご存じでしょうか?実は「惚ける」には、いくつかの読み方があります。「惚ける」の読み方をはじめ、その意味や使い方をご紹介。同じ読み方を持つ「呆ける」との違いも解説します。類語や英語表現も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
「惚ける」の読み方と意味とは
「惚ける」の読み方は「とぼける」「ほうける」「ぼける」「ほける」
「惚ける」には、「とぼける」「ほうける」「ぼける」「ほける」の4つの読み方があります。「惚」という漢字の音読みは「コツ」で、「とぼける」「ほうける」「ぼける」「ほける」の4つは訓読みです。
「惚」自体には、「うっとりする」「ぼんやりする」「ほれる」「恋い慕う」「ぼける」などの意味があります。
「惚ける」の意味は読み方によって違う
「惚ける」の意味は、その読み方によって違います。
「惚ける」を使った例文
- 彼は普段はなんでもしゃべるくせに、肝心なことを聞くと惚(とぼ)ける。
- 起き抜けの惚(ほう)けた顔を見られてしまった。
- あんなにしっかりした人だったのに、年とともに惚(ぼ)けてきた。
「惚ける」と「呆ける」「恍ける」の違いとは
「呆ける」の意味は「ぼんやりと鈍った状態になる」
「呆ける」には、「ほうける」「ぼける」「ほける」という読み方があります。「惚ける」と同様に読み方によって意味が違い、それぞれの意味自体は、上述した「惚ける」と同じです。
「呆」という漢字には「愚か」「ぼんやりした」「あきれる」「あっけにとられる」などの意味があります。
「惚ける」と「呆ける」の違い
「惚ける」と「呆ける」に意味の違いはありませんが、使うシーンに違いがあります。
「呆ける」が、指向性を持たずにただぼんやりとしている様子を指して使われるのに対し、「惚ける」は、はっきりとした指向性がある場面で使います。ただぼんやりと気が抜けているのではなく、何かに夢中になったり、気を取られているあまりに、「心ここにあらず」の状態になってしまっている様子を表したい時には、「惚ける」を使うとよいでしょう。
「惚ける」と「恍ける」の違い
「惚ける」と同じく、「とぼける」と読む「恍ける」。意味は「惚ける」と同じです。「惚ける」と「恍ける」は、多くの辞書で「とぼける」と読み、同じ意味の言葉として紹介されており、使い分けの基準が明確ではありません。
ただし、4種類の読み方がある「惚ける」とは違い、「恍ける」には「とぼける」以外の読み方はありません。そのため「とぼける」を漢字で表したい場合には、「恍ける」を使うとわかりやすいでしょう。
「惚ける」の類語とは
「しらをきる」
「しらをきる」は、「知っているのに、わざと知らないふりをする」「しらばくれる」という意味の言葉で、「惚ける」を「とぼける」と読む場合の類語です。
「しらをきる」を漢字で表記すると「白を切る」となりますが、「しら」は「知らぬ」の略であり、「白」は当て字とされています。他にも、「しら」は「しらじらしい(白々しい)」からとする説や、「真面目」や「正気」を意味する「しら(白)」からとする説もあります。
「切る」は、「見得を切る」や「啖呵を切る」などと同じく、目立つような態度や口ぶりをするという意味です。
「かまとと」
「かまとと」とは、「よく知っているのに、知らないふりをすること。また、そう振る舞う人」という意味の言葉です。一般的には、うぶなふりをする女性に対して使われ、「惚ける(とぼける)」の類語です。
「かまとと」は漢字で「蒲魚」と書き、「かま」は「蒲鉾(かまぼこ)」、「とと」は「魚」の幼児語です。蒲鉾は魚から作られていることを知らないふりし、「蒲鉾はととからできているの?」とわざとらしく聞いたことから、「かまとと」「かまととぶる」という言葉が生まれたとされます。
女性に対して「かまとと」が使われることが多い理由は、江戸時代末期に上方の遊郭で、うぶなふりをする遊女を指して使われ始めたためです。
「老いる」
「惚ける」を「ぼける」と読む場合の類語に「老いる」があります。「老いる」には、「年をとる」という意味の他に、「年をとって心身の働きが衰える」という意味もあります。
老いによる心身の働きの衰えにより、頭の働きや知覚が鈍くなることから、「老いる」は「惚(ぼ)ける」の類語といえます。
「惚ける」の英語表現とは
「惚ける(とぼける)」は英語で「pretend ignorance」
「惚ける(とぼける)」には、いろいろな表現があります。そのなかのひとつ「pretended ignorance」は、「無知を装う」「知らないふりをする」などの意味があります。
「pretended」には「ふりをする」「装う」、「ignorance」には「無知」「知らず」などの意味があります。
他にも、「ものの言えない」「口がきけないふりをする」という意味の「play dumb」を使ったり、「世間知らずの」「単純な」などの意味を持つ「naive」を使う場合があります。
「惚ける(とぼける)」の英語表現を使った例文
- He pretended ignorance, which made me still more angry.(彼は惚けたが、それが私をさらに怒らせた)
- Don’t play dumb.(惚けないで)
- Don’t be naive!(惚けないで)
まとめ
「惚ける」には、「とぼける」「ほうける」「ぼける」「ほける」の4つの読み方があり、読み方によって意味も違います。文章を書く時に使う場合には、どの意味で使っているのかがわかるようにルビを振ったり、読む場合には文脈から意味を理解して読むようにしたりしましょう。