日常会話でよく使われる「とりあえず」という言葉。気軽に使える表現だからこそ、ビジネスシーンや論文などのフォーマルな場面で使ってもいいのか、悩むことがあるのではないでしょうか。「とりあえず」を丁寧に言い換えたい場合の表現をご紹介します。
「とりあえず」の意味とは
「とりあえず」の意味は「まず第一に」「すぐに」
「とりあえず」は、漢字では「取り敢えず」と表記します。「他のことは差し置いて、まず第一に」「何はさておき」「何をする間もなく」「すぐに」という意味があります。「とりあえずの案として」のように「とりあえずの」の形で名詞を修飾する場合もあります。
「とりあえず」を使った慣用句が「取るものも取り敢えず」です。「取るものも取り敢えず」は「手に持つべきものを持っている暇もなく」というところから「他に構う余裕もなく大慌てで」という意味で使われます。
敬語でないためビジネス・論文で使うなら注意が必要
「とりあえず」は敬語ではありません。かといって失礼な表現でもありませんが、居酒屋で最初に生ビールを注文したい時に「とりあえず生」と言う人がいるくらいに、くだけた表現としても使われます。
そのため、ビジネスシーンで「とりあえずこちらを用意しました」のように使ってしまうと、あたかも間に合わせのように感じられ、敬意に欠くと受け取られてしまっても仕方ありません。
同僚や友人に使う分には問題ありませんが、目上の人や取引先の人に対しては「とりあえず」を使うのは避け、別の表現に言い換えるようにしましょう。
また、きちんとした結果や論理に基づいて考察がされているべき論文やレポートなどで使うのにも適していません。
ビジネス・論文で使える「とりあえず」の丁寧な言い換え表現とは
「まず」
「まず」には「始めに」「最初に」「おおよそ」「多分」「どうにも」「いかにも」などの意味の他に「とりあえず」「ともかく」「何はともあれ」という意味があります。「とりあえず」を丁寧に表現したい場合に使える言葉です。
「まずはこちらの資料をご覧ください」「まず、先日保留になっていた件ですが」のように使い、会話の始めを強調する役割も持ちます。
「ひとまず」
「ひとまず」にも「とりあえず」「さしあたって」という意味があります。「一先ず」と表記し、「今後のことは別として、その時点で一応の区切りをつける様子」を表します。
「ひとまず」も敬語表現ではありませんが、丁寧語の「ます」「です」と一緒に使ったり、さらに敬意を表せる「存じます」「いたします」などの謙譲語と一緒に使用したりすることで、「とりあえず」よりも丁寧な印象を与えることができます。
「ひとまずメモを残しておいて、帰社後に対応いたします」「ひとまず上司に相談させていただきます」のように使用します。
「一旦」
「一旦」には「一度」「しばらくの間」「一時」「あの時一度」などの意味があります。一時的に、少し時間を置いて物事に区切りをつけたい時に使います。
「この問題につきましては、一旦持ち帰って検討させていただきます」「時間が来てしまいましたので、一旦こちらで巻き取らせていただきます」のように使います。
使う際に注意が必要な「とりあえず」の類語とは
「取り急ぎ」
「とりあえず」の言い換え表現は上記で紹介したもの以外にもあります。しかし、これから紹介する言い換え表現は「とりあえず」同様、敬語表現ではありませんので、使う際には注意が必要です。
「取り急ぎ」は「とりあえず急いで」という意味で使われる表現で、緊急性の高いシーンで使われます。詳しい内容は決まっていなくても、まずは物事の概要だけでも伝えておきたい時に使えます。
「取り急ぎ、ご報告まで」のように語尾を略して使われることが多いですが、そもそも敬語表現ではないため、取引先や目上の人に対してはあまり使わない方がいい表現です。もしも使いたい場合には「取り急ぎ、ご報告させていただきます」のように、最後まで略さず丁寧に使いましょう。
また、急かしているかのように取られてしまう可能性もあるため、多用しない方が無難です。
「さしあたって」
「さしあたって」も、敬語表現ではありません。「先のことはともかく、今のところ」「今しばらくの間」「当面」などの意味があり、先行きがわからない事柄に対して使います。
物事の決断を先延ばしにしているようにも取られてしまいかねないため、ビジネスシーンではあまり使わない方がベター。「現状ではこのようになっております」のように、他の表現に言い換えましょう。
「一応」
「ひとまずのところ」や「十分ではないが一通り」という意味を持つ「一応」も「とりあえず」の言い換え表現ですが、誠実さを欠く印象を与えてしまう可能性があるため、ビジネスシーンでは使うべきではありません。「おおよそ」「大事をとって」のような別の表現を使いましょう。
「とりあえず」を言い換えた例文とは
メールの例文
- とりあえず資料をお送りします。→まずは資料を送付させていただきます。
- とりあえずサンプルをご用意しますので、ご検討ください。→ひとまずサンプルをご用意いたしますので、そちらをお試しいただき、ゆっくりとご検討くださいませ。
論文・レポートの例文
- とりあえずそうだと仮定して実験を行った。→一旦この理論が正しいと仮定して、実験を行った。
- とりあえずはそう結論づけた。→ひとまず、そう結論づけた。
まとめ
「とりあえず」には「他のことは差し置いて、まず第一に」「何はさておき」などの意味があります。敬語ではないため、ビジネスシーンや論文などのフォーマルな場面では、他の表現に言い換えた方がいいでしょう。また、言い換え表現も、使う場面によっては注意を払う必要があります。
