普段の生活の中で、私たちは「話し言葉」と「書き言葉」という二種類の言葉を使っています。この記事では、特に「話し言葉」にスポットを当て、その定義をはじめ、特徴や使う時の注意点なども解説。代表的な「話し言葉」と「書き言葉」の違いも一覧にしてご紹介します。
「話し言葉」とは
「話し言葉」は口頭でのやり取りに使う言葉
「話し言葉」は「口語」ともいい、口頭でのやり取り、つまり会話で使う言葉のことです。カジュアルで少しくだけた表現を指し、たとえ同じ会話であっても、ビジネスシーンやフォーマルな場では「話し言葉」を使うのは適切ではありません。
「書き言葉」は文章を書く時に使う言葉
「書き言葉」は「文語」ともいい、文章を書く時に使う言葉を指します。「書き言葉」は伝えたいことを正確に伝えるための、文法に沿った丁寧な表現です。簡潔で堅苦しい印象を与える言葉で、一般的な新聞や書籍、ビジネスシーンなどで使われます。
「話し言葉」の特徴とは
文法が曖昧でも許されることが多い
「話し言葉」は相手に伝えることを一番の目的としているため、文法にはさほどこだわらず、文法が曖昧でも許されることが多いという特徴があります。
語順の乱れや倒置法、中断なども、「話し言葉」ではよくみられます。コミュニケーションを円滑にすることに重きを置いた言葉といえるでしょう。
柔らかくくだけた表現が多い
「話し言葉」は、方言を使ったり、「ああ」「うん」「まあ」などの感嘆詞(感動詞ともいう)や、「どっち」「どれ」などの疑問詞を使ったりと、柔らかくくだけた表現が多いのも特徴です。
また、直接的な表現を避け、柔らかみを持たせた言い回しをすることも多く、角が立たないように配慮されています。
「話し言葉」と「書き言葉」の違いの例とは
代表的な「話し言葉」と「書き言葉」の違い一覧
よくみられる「話し言葉」と「書き言葉」の違いを一覧で紹介します。
話し言葉 | 書き言葉 |
ちょっと | 少し |
すみません | 申し訳ございません |
すごい | 素晴らしい・とても・非常に |
ちゃんと | きちんと |
やっぱり | やはり |
どうして | なぜ |
いつも | 常に |
いっぱい | 多く |
一応 | 念のため |
~じゃない | ~ではない |
こっち・そっち・あっち・どっち | こちら・そちら・あちら・どちら |
ですから・だから | そのため・したがって |
でも・だけど | だが・しかし・けれども |
使い分ける際のポイント
「話し言葉」と「書き言葉」は、大きく「会話で使う言葉」と「文章を書く時に使う言葉」と分けられますが、文章であっても「話し言葉」が使われる場合もあります。以下は「話し言葉」が文章で使われることが多いものの例です。
直感的に理解しやすい「話し言葉」は、決まったターゲットに訴えたいキャッチコピーに使うと、目に留まりやすくなるため効果的とされています。
「話し言葉」を「書き言葉」に言い換える場合の注意点とは
接続詞に注意
「話し言葉」を「書き言葉」に言い換える場合には、接続詞に注意する必要があります。「だから」や「なので」は「話し言葉」でよく使われますが、くだけた表現にあたるため「書き言葉」としては適切ではありません。「書き言葉」に言い換える場合には「したがって」や「そこで」などの正しい接続詞に直しましょう。
「昨日は新規事業の企画書を作成していましたが、まだ完成していません。だから、今日完成させたいと思います」を「書き言葉」に言い換えるなら、「昨日は新規事業の企画書を作成していましたが、まだ完成していません。したがって、本日完成させたいと思います」となります。
「い」抜き・「ら」抜き言葉・「さ」入れ言葉に注意
「い」抜き言葉とは、「食べている」を「食べてる」と言ったり、「見ている」を「見てる」と言ったりなど、「している」という言葉を「してる」と表現するもののことです。
また、「食べられる」を「食べれる」と言ったり、「見られる」を「見れる」と言ったりと、可能性を表す「できる」という尊敬語表現から「ら」を抜いた言葉が「ら」抜き言葉です。
「さ」入れ言葉とは、「聞かせていただく」を「聞かさせていただく」と言ってしまうように、謙譲語を使う際に不要な「さ」を入れてしまう言葉のことです。
会話ではそれほど気にならない「い」抜き言葉や「ら」抜き言葉ですが、「書き言葉」では間違いです。ビジネス文書では注意してチェックしましょう。「さ」入れ言葉は「話し言葉」としても間違った表現ですので、使わないように気をつけましょう。
ただし「さ」入れ言葉には、「着させていただく」「食べさせていただく」などのように、「さ」が入る形が間違いでないものもあります。
曖昧な表現・二重表現を避ける
「私は多分○○なんだと思います」や「私的には」「弊社的には」などのように、曖昧に単語の意味を伝えようとする曖昧な表現や、「一番最初に」や「はっきりと明言する」のように同じ意味の言葉を繰り返す二重表現は、「書き言葉」に言い換える場合には避けなければなりません。
「私は○○だと思います」「私としては」「弊社としては」と簡潔に表現したり、「最初に」「明言する」のように二重表現を使わないようにしたりと、適切な表現を使いましょう。
若者言葉・消極的表現は使わない
「マジ」や「ヤバい」「超」「めちゃめちゃ」など、若者言葉やカジュアルな表現は、老若男女問わず不特定多数の人が目にする可能性がある「書き言葉」として適切ではありません。
「全然大丈夫」や「全然早い」などの本来の使い方と違う使い方をされることも多い「全然」も、「話し言葉」としては浸透してきていますが、「書き言葉」としては不適切。「全然」の後ろには否定の表現がくるのが正解ですので、注意しましょう。
「~みたいな」や「~たり」「~かな」などの明言を避ける消極的な表現も、「書き言葉」に言い換える場合には避けましょう。「実際には彼が店長みたいな感じです」なら「実際は彼が店長のようなものです」、「そういう時もあったりします」なら「そういう時もあります」、「知っておいた方がいいかなと思います」なら「知っておいた方がいいと思います」など、きちんと言い切る表現にします。
「話し言葉」の英語表現とは
「話し言葉」は英語では「spoken language」「colloquial language」
「話し言葉」は英語では「spoken language」や「colloquial language」と表現します。「colloquial word」や「colloquialisms」ともいいます。「colloquial」は「口語の」という意味の単語です。
また、「話し言葉」は「書き言葉」に比べくだけた表現であることから、「フォーマルでない」という意味の「informal」を使って「informal language」と表現することもあります。
「書き言葉」は「written language」や「a literary expression」「formal language」などで表現できます。
英語の「話し言葉」を使った例文
- There is a difference between spoken language and written language.(話し言葉と書き言葉には違いがある)
- You should write a report with written language because informal language can sound impolite.(話し言葉では失礼に聞こえるかもしれないので、レポートは書き言葉で書くべきだ)
まとめ
「話し言葉」は「口語」ともいい、口頭でのやり取りで使う言葉を指します。カジュアルで少しくだけた表現で、相手に伝えることを一番の目的としているため、文法が曖昧でも許されることが多いという特徴があります。「書き言葉」に言い換える場合には注意点を踏まえて言い換えましょう。