「倣う」の意味と使い方を解説!熟語と類語も例文を用いて紹介

「伝統に倣う(ならう)」や「前例に倣う」という表現、日常やビジネスシーンの会話で使用したり、耳にしたりすることも多いでしょう。他にも「習う(ならう)」という表現がありますが、両者に違いはあるのでしょうか?間違わずに使い分けができるよう、「倣う」の意味と使い方を解説し、熟語や類語も紹介します。

「倣う(ならう)」の意味と使い方

「倣う」の読み方は「ならう」です。

「倣う」の意味は「先の例をまねし、その通りにする」

「倣う」の意味は、「先の例をまねし、その通りにする。手本としてまねをする」です。もうひとつ「慣れ親しむ。習慣になっている」という意味もありますが、こちらは近年あまり用いられることが無いため、「先の例をまねする」という意味について、ここでは解説してゆきます。

「倣う」を使うときは必ず対象となる事柄が存在する

ある特定の対象や出来事に対してそれを「倣う」と表現するため、「倣う」を使用するときは必ず対象となる事柄が存在します。その事柄を手本として、近づいてゆこうとする動きを表したい時に「倣う」を用います。

「倣う」を使った例文

「倣う」は次のように用います。

「Aプロジェクトに倣ってBプロジェクトの企画書を仕上げてください」
「Cさんに倣って態度を改めてください」
「D社の戦略に倣って我が社も方向転換することにした」
「伝統に倣った色使いを大切にしている」

「倣う」と「習う」の違いとは?

「手本としてまねする」という意味であれば、「習う」と書いても意味は同じなのでしょうか?誤用しないよう、「習う」の意味と使い方についても説明します。

「習う」の意味は「おそわる、教えを受ける」

「習う」は「繰り返しやってみて知識や技術を覚え、身につけようとする」という意味です。また単に「おそわる。教えを受ける」という意味もあります。

「習う」は学習することを表現したい時に使う

「ネイティブスピーカーから英語を習う」「先輩から資料の書き方を習う」「先生に習ったとおりに実践する」など、学習することを表現したい時に用います。

「倣う」と「習う」の使い分け方

両者の違いをわかりやすくまとめると次のようになります。

【倣う】⇒ある事柄を手本にすること、まねすること。
【習う】⇒ある事柄を学習すること、繰り返して身につけること。

「繰り返して身につける。学習する」という意味合いは「倣う」には無く、「手本にする、まねする」という意味は「習う」には無い、と逆から考えても理解しやすいかもしれません。

両者の違いを押さえておくことで、「他社に倣う」とするところを「他社に習う」としてしまうなどのミスを未然に防ぐことができます。

「倣」の字がつく熟語

「倣」の字がつく熟語にはどんなものがあるのでしょうか。また、「倣う」と同じ意味で用いることができる熟語はあるのでしょうか。「倣」のつく熟語について説明します。

「倣」の字がつく熟語:「模倣」

「倣」の字がつく熟語として「模倣(もほう)」があります。「模倣」は「 他のものをまねること」という「倣う」と同じ意味はあるのですが、同時に「今までにあることをそのまま踏襲し、創意工夫を示さないこと」という意味もあります。そのため、ある対象を手本としてブラッシュアップしていくという動きも含む「倣う」の意味と「模倣」とでは、意味合いが違っています。

「A社の戦略に倣う」と「A社の戦略を模倣する」とを比較してみると、前者からはポジティブな改革の意味をくみ取れるのに対し、後者からは他社の戦略の横取りのようなネガティブなイメージが読み取れます。このように、ある対象を手本としてまねすることで状況を改善してゆくことを表す場合には「模倣」は不適切となります。

「倣」の字がつく熟語:「右へ倣え」

「右へ倣え」という言葉、誰でも一度は聞いたり読んだりしたことがありそうです。その意味は「無批判に人のまねをする意」となり「主体性を欠き、他者に追随するさま」という意味合いを持ちます。

「君はいつでも右へ倣えばかりだ」「右へ倣えというだけの戦略ではだめだ」などと、主体性が無いままに他者のまねをするだけの状況を表すため、「右へ倣え」は手本に向かって状況を改善してゆく場面で用いることはありません。目標とする対象を手本として業務を改善したいときなど「A社の右に倣って業績を改善してゆきます」などとすると「A社に単に追随する」ことを表明することになるので、注意しましょう。

「倣う」の類語

「倣う」の類語は「規範とする」「模範とする」など

「倣う」の類語は「手本とする」「見本とする」「規範とする」「模範とする」などがあります。それぞれ「それにならって行動すべき行為のよりどころ」という意味を持ち、シチュエーションにより、適宜使い分けます。「倣う」と同じ意味合いで用いることもできます。

優れた事例を参考にしたい時⇒
「A社の製品を手本として商品開発を行う」
「A社の製品に倣って商品開発を行う」

従うことが求められる行動などの型を示す時⇒
「B君を規範として行動する」
「B君を倣って行動する」

類語についても確認することで、ビジネス文書で使える語彙を増やしてゆくことができます。

まとめ

「倣う」は「ある事柄を手本としたりまねしたりして、現状をブラッシュアップしてゆく」というポジティブな意味の言葉です。単に学習して習得するという意味の「習う」とは意味が異なります。また「模倣する」「右へ倣え」の熟語になるとネガティブな意味合いになりますので、適切に使い分けができるよう、それぞれの意味を確認しておきましょう。