「憚られる」の意味とは?類語や敬語としての使い方を例文で解説

「憚られる」(はばかられる)という言葉を使ったことがありますか?何となくへりくだった表現ということはわかっても、「られる」が付いていることで混乱してしまいます。今回は「憚られる」についての解説です。意味や読み方、類語や使い方の例文などについてご紹介しますので、この機会に「憚られる」を正しく理解しておきましょう。

「憚られる」の意味や類語は?

「憚られる」の意味は「自分のの立場を下げて遠慮する様子」

「憚られる」の意味は、「自分のの立場を下げて遠慮する様子」です。「遠慮」「ためらい」「気が引ける」などとほぼ同じです。読み方は「はばかられる」です。「自分のようなものが」という姿勢を「憚られる」という言葉だけで相手に伝えることができるので、とてもスマートに相手を立てる言葉として使われます。

「憚られる」という言葉は一見他動詞のように見えますが、この場合の「られる」は相手の行動を表すものではないため、自動詞として使います。同じ自動詞として「憚る(はばかる)」という言い方もありますが、意味は「憚られる」と同じです。

「憎まれっ子世に憚る」は意味が別

ことわざの中に「憎まれっ子世にはばかる」というものがあります。意味は「憎まれっ子ほど、世間では幅をきかせてのさばっている」というもので、憎まれっ子の勝手気ままな様を表しています。

この場合の「憚る」には「幅をきかせる」「のさばる」という意味があり「憚られる」とは根本的に意味が異なるので注意しましょう。

類語・同義語は「出過ぎたこと」「遠慮」など

「憚られる」という言葉の意味だけを考えれば「僭越」「遠慮」「気後れ」など、他の言葉も類語としてあげられますが、その言葉だけでは意思が伝わらないという点で考えてみると「出過ぎたこと」が良いでしょう。「憚りられる」と同じように、強い恐縮の気持ちを表す言葉です。

また、「出過ぎたことですが申し上げます」「出過ぎたことですので遠慮しておりました」など、「憚られる」と同じように後に続く言葉がなければ意思を読み取ることができません。

「憚られる」の正しい使い方

目上の方へ反対意見を伝えるとき

自分が相手よりも下の位置にいなければならない状況で、相手の意見に反対するというのは勇気が要るものです。そんなときに「憚られる」を使うことができます。

たとえば「私のようなものが意見するのは憚られるのですが」と、これから話すことの前置きとして使うことができます。これから発言することの非礼をあらかじめ詫びるという使い方です。

実力以上の要求を引き受けるとき

相手からの要望で、自分の実力以上のことをしなければならない状況でも「憚られる」を使うことができます。この場合は「憚られる」を少し変えて「憚りながら」などとすると良いでしょう。

「お力になれるかわかりませんが、憚りながら謹んでお受けさせていただきます」などと伝えれば「大変恐縮している」という様子が伝わります。この場合の「憚りながら」は「恐れながら」と同じ意味で、相手への敬意を表すことができます。

目下の人や身内を叱るとき

自分の部下や身内が、相手に対して失礼な振る舞いをした場合に注意を促すことがあります。その際にも「憚りながら」を使うことができます。この場合は「憚りながら」を「憚り」「憚る」と変化させます。

「お客様の前でそんなことをするんじゃない、少しは憚りなさい」などとすると、「ちゃんとしなさい」「きちんとしなさい」などでは言い表せない「身を律する」ということを伝えられます。

「憚られる」を使った例文

「憚られる」という言葉を使った例文には以下のようなものもあります。

 ・「お忙しいところに、お願いばかりで憚られるのですが…」
 ・「私のような若輩者が、こんなことを申し上げるのは憚られますが…」
 ・「こちらの都合ばかりではございますが、憚りながらお願い申し上げます」
 ・「本日部長の田中が急な出張となりましたので、憚りながら私からご説明いたします」
 ・「なんという無礼な振る舞いだ、少しは憚りなさい!」
 ・「そんな失礼なことを先方に言ったとは、憚るということを知らないのか!」

「憚られる」を使うときの注意点

「憚られる」に合った状況で使う

「憚られる」という言葉は、遠慮の気持ちや謙虚な姿勢を出すことができるので、使い慣れるとつい多用してしまいそうになります。しかし「憚る」という言葉が相応しい状況かどうか、というのは考えるようにしておきましょう。

たとえば、日頃から顔を合わせている上司などとの会話で「憚られる」という表現はあまり合いません。強い遠慮の気持ちを表したい場合は、「出過ぎたことかもしれませんが」「生意気なようですが」などの言葉を使うと良いでしょう。

まとめ

目上の相手に対して、自分が恐縮している心情を伝える言葉はたくさんありますが、普段使いすぎていると何となくその格式が薄れてしまうものです。「憚られる」という言葉は、日常的でない分、改まった場や状況で気後れする自分の気持ちを表してくれます。ぜひこの機会に「憚られる」を語彙のレパートリーに加えておきましょう。