「足を運ぶ」はビジネスで使えない?正しい使い方と例文

「足を運ぶ」という表現は、日本人であれば一度は聞いたことがあるでしょう。「足を運ぶ」は、意外と使い方が難しい表現です。使い方によっては失礼な発言になってしまうこともありますので注意しましょう。今回は、「足を運ぶ」をビジネスで使いこなせるように、使い方と例文を紹介します。

「足を運ぶ」はビジネスで使えるのか?

ビジネスで使える場面は限られる

「足を運ぶ」とは、「わざわざ出向くこと」、「普通なら行かなくてもいいのに行くこと」という意味です。例えば「足を運んで来ました」は「わざわざ来てあげました」という意味です。使う場面を間違えると、とても失礼な言葉になってしまうので注意が必要です。

ビジネスでは「わざわざ出向くことが大切」と伝える場面や、「わざわざ来ていただいてありがたい」という場面で使われることが多い表現です。

履歴書に書く「足を運ぶ」の例文

履歴書では、自己PRや趣味の欄などで「足を運ぶ」を使うことができます。

  • 商品を使用している家庭の意見を聞くため、1件1件足を運びました。
  • 休日には、遠方の美術館まで足を運び、多くの絵を鑑賞しました。

わざわざ出向いたことで学んだことがあると伝えます。行動力があることや、地道な活動を粘り強く行えることをアピールするのに便利な表現です。

お礼の言葉で「足を運ぶ」を使う場合の例文

わざわざ出向いてくれたことに対して、お礼をいう時に使うことができます。

  • お忙しい中、足を運んでくださりありがとうございます。
  • 足を運んでいただき、大変感謝しています。

「足を運ぶ」の使い方と注意点

自分が「足を運ぶ」ときは注意が必要

「足を運ぶ」には「わざわざ」という意味が含まれていますので、主語が自分の文章で使う時は、特に注意が必要です。「私が足を運びます」という文は、「わざわざ私が出向きます」という意味ですので、目上の人には使えません。

基本的には、足を運んだ先の相手がいない場面で使います。例えば「私は、お客様の自宅に何度も足を運ぶことで気に入ってもらえた」と話すとします。社内で同じ社員に話すことは問題ありませんが、お客様の前では失礼になります。

「足を運びたいと思います」は間違いが多い

間違って使われることが多い表現として、「足を運びたいと思います」という文があります。これも主語が自分です。例えば、先生に対して「先生のご自宅に足を運びたいと思います」と伝えることは、とても失礼にあたります。

間違っていない例文も紹介します。「探している絵があるかもしれないので、遠方の美術館まで足を運びたいと思います」という文であれば、遠方の美術館の人に向かって話してはいませんので、失礼にはあたりません。

「足を運ぶ」は差別用語ではない

「足を運ぶ」が差別用語だと思う人もいますが、差別用語ではありません。差別用語とは、他者を差別し、傷つける言葉のことをいいます。

会社によっては、仕事上で、身体の一部を使った表現を使わないように意識していることがあります。例えば、「甘い物に目がない」という言葉を聞くと目の見えない人が不快な気持ちになるのではないかと配慮して言い換えます。そういった会社では「足を運ぶ」を使わないように意識している可能性もあります。

「脚を運ぶ」とは書かない

「足」という漢字には、「脚」という書き方もありますが、基本的に「脚を運ぶ」とは使いません。「脚」とは足首から足のつけ根までを表しています。「足を運ぶ」のような比喩的な表現では、足全体を指して「足」を使うのが一般的です。

「足を運ぶ」は慣用句なので分けることができない

「足を運ぶ」は慣用句です。慣用句とは、2つ以上の単語が結びついて違う意味を持っている言葉です。「足」や「運ぶ」の片方だけでは、「わざわざ」や「出向く」などの意味にはなりません。ところが、2つの単語が合わさると「わざわざ出向く」という意味になります。

「足を運ぶ」の敬語表現と類語での言い換え

「足を運ぶ」の尊敬語は「足を運ばれる」「足を運んでいただく」

「足を運ぶ」を尊敬語にすると「足を運ばれる」「足を運んでいただく」となりますが、あまり一般的な表現ではありません。「ご足労いただく」「いらっしゃる」「お越しになる」という表現の方がよく利用されています。

「足を運ぶ」は謙譲語で使わない

謙譲語とは、目上の相手に対して自分がへりくだった表現です。基本的には自分が主語の文章で使い、「~をさせていただく」という意味です。「わざわざ出向く」という意味の「足を運ぶ」を謙譲語にするのは難しいでしょう。

「足を運ぶ」を謙譲語にしたいときには、類語で言い換えます。「足を運ぶ」の類語は「行く」「出向く」「訪問する」などがあります。「行く」を謙譲語にし、「伺います」などを使いましょう。

「足を運ぶ」の外国語表現

「足を運ぶ」の英語表現は「go」

「足を運ぶ」は「出向く」「行く」という意味ですので、直訳すると「go」になります。「わざわざ」という意味は文脈で表現しましょう。

・I am going to many places.
より多くの場所に足を運ぶ。

・I visit customer several times.
何度も顧客のところへ足を運ぶ。

「足を運ぶ」は中文で「去」

中国語にするときにも「行く」を意味する「去」を使いましょう。

・我去遠処的博物館。
遠くの博物館に足を運ぶ。

・我多次去杭州。
何度も杭州へ足を運ぶ。

まとめ

「足を運ぶ」は、単純に「行く」という意味ではなく「わざわざ」という意味を含んだ言葉です。使える場面は限られていますが、うまく使いこなすと、わざわざ出向いてがんばったことを暗に伝えることができたり、感謝の気持ちを上手に伝えたりできます。失礼がなく、上手にコミュニケーションをとるために、使いこなせるようにしておきましょう。