「是非もなし」の意味と使い方とは?信長の心情についても解説

「是非もなし」という表現は時代劇や舞台などでよく聞く言葉ですが、どのような意味を込めて放たれるのか知っていますか?武将・織田信長が言った言葉としても知られる「是非もなし」には、覚悟を決めた信長の心情が浮き彫りになっているとも言われています。

ここでは「是非もなし」の意味と使い方を中心に、類語と英語表現を紹介しています。早速、例文と併せてみていきましょう。

「是非もなし」の意味や使い方とは?

「是非もなし」の意味は”良し悪しを言っている場合ではない”

「是非もなし」の意味は、“良し悪しを言っている場合ではない”です。

「是非もなし」は”是非”と”なし”という二つの言葉が組み合わさった言葉です。「是非」は”良いことと悪いこと・道理があることとないこと”という意味があり、「なし」という言葉が後続について「是非」を否定する意味合いとなります。

「是非もなし」は”道理のありなしを言っていられない”、つまり広い解釈をすれば「仕方がない」ということです。

「いまさらものごとの良し悪しや善悪を判断したとしても手遅れであり、意味を成さない」というニュアンスがあり、今まさに自分に起こっていること、自分が置かれた状況に対して「いた仕方がない」と切羽詰まった思いを指しています。

「是非もなし」は諦めと前向きな気持ちが交差する

「是非意もなし」は自分が今直面していることに対し、「善し悪しを言っているより、目の前のことに対処していかなければならない」という気持ちを表す言葉です。

たとえ好意的ではない状況やものごとが起きていても、全く投げ出してしまうのではなく、むしろ、改善への選択の余地がなくとも「状況に対応していく」という前向きな決意を含む表現でもあると解釈できます。

「是非もなし」は状況が一晩で一転するような状況で使われる

状況が一晩で一転するようなビジネスの世界では、「是非もなし」とつぶやいてしまう状況にも多く直面するでしょう。ビジネスで「是非もなし」は、「仕方がない」「とやかく議論をしていても意味がない」という状況で使われることがほとんどです。

しかし、負けの一手で引き下がっていてはビジネスで勝ち残ることはできません。ビジネスでは「是非もなし」と一旦状況を受け入れた上で、次の戦略や作戦に挑むことが多いでしょう。

「是非もなし」を使った例文

「是非もなし」を使った例文を5つ挙げてみます。

  • これだけの競合がいるとなれば、是非もないだろう。
  • 取引相手が好意的な契約内容に納得しない、とあれば是非もなしだ。
  • 是非もなしとあれば、次の作戦を考えるべきではないか?
  • 社長の意向であるため、是非もないのが当然であろう。
  • 是非もなしとは言うが、本当に改善策は見当たらないのか?

「是非もなし」は歴史的な背景と関係のある?

続いて「是非もなし」を歴史的な背景と照らし合わせてみてみましょう。「是非もなし」は2つの大きな舞台で使われた有名な言葉です。

「是非に及ばず」は”本能寺の変”で信長が放った言葉

「是非もなし」という表現は戦国の武将・織田信長が「本能寺の変」で受けた明智軍の陰謀に対し、戦いへの決意とともに「やむおえぬ=是非に及ばず」と放ったと言われています。

「是非に及ばず」は「是非もなし」と同様に「善悪を判断するには及ばない、仕方がない」という意味があり、明智軍にスキを狙われた信長の心情「戦うしかない」という決断の面持ちも想像できるでしょう。

「是非もなし」は”直江状”にも使われた

また「是非もなし」は「直江状」の中でも使われた言葉として知られています。「直江状」は上杉景勝の家老を務めた「直江兼続」が、上杉家との交渉の際に「西笑承兌」に送った書簡のことで、「他人を陥れようとありもしない事を言い広める者を調べるべきだ」と主張したことに対し「逆心と思召す処是非に及ばず候」」と「景勝に逆心があると言われても是非はない」と答えている様子が記載されています。

「是非もなし」の類語と英語表現とは?

「是非もなし」の類語は”選択肢はない・否も応もなし”

「是非もなし」の類語には「仕方がない」の他に、「選択肢はない」「否も応もなし」などが挙げられます。どれも状況的に追い詰められた際の心情を表す言葉と言えますが、加えて、日本で使われているカタカタ語「ノーチョイス(選択の余地なし)」も類語と言えるでしょう。

「是非もなし」の英語表現は口語”oh well”

「是非もなし」は「仕方がない」という切羽詰まった決断の意を示す言葉ですが、英語の口語表現で頻繁に使われるのが「oh well」です。「oh well」はビジネスでも日常でも、好ましくない状況に遭遇した時に、時間もなく成す術がない際に使われる表現です。いまさらガタガタ言っても仕方がない、どうすることもできない、状況の改善は見込めない、という状況で広く使われています。

その他、ビジネスチャットやメールで活用できる丁寧な表現では「There is nothing we can do」「It can not be helped」なども良いでしょう。

まとめ

「是非もなし」は「良いも悪いも言っていられない」「善悪を判断している議論している場合ではない」という意味があり、ビジネスでも「仕方がない」また「目の前で起きていることに何とか対応していくしかない」というニュアンスを持って使われる言葉です。

ビジネスにおいても裏切りや嘘に遭遇することもあるでしょう。「是非もなし」に込められた武将・織田信長の心情を思い浮かべながらも、前向きに「次への作戦」へと気持ちを入れ替えていきましょう。