「引導を渡す」の意味や語源は?類語や例文と間違いやすい表現も

「引導を渡す」という言葉をどこかで耳にしたことがあるでしょう。スポーツやビジネスで相手と契約を切る時に使われるなど、あまり良くないイメージを持っている人は多いでしょう。しかし、由来知ることで言葉のイメージが少し変わるかもしれません。

ここでは「引導を渡す」の意味や例文、語源や類語を紹介していきます。間違いやすい表現もありますので、合わせてチェックしておいてください。



「引導を渡す」の意味と例文

「引導を渡す」の意味と読み方

「引導を渡す」は、「いんどうをわたす」と読みます。意味は、諦めるように最終宣告をすることです。ビジネスにおいては、上司が部下に対して退職を促す時や取引先との契約を解除するといった場合に用いられます。スポーツ選手が所属チームや監督から契約解除を言い渡される時にも用いられます。

「印籠」と間違えないように

「引導を渡す」の「引導」とよく似た響きの言葉に「印籠」があります。歴史ドラマでおなじみのものなので「印籠」の方がなじみのある人も多いため、「印籠を渡す」と勘違いしている人もいるかもしれません。

「印籠」は薬などを携帯するために腰に下げて使われる入れ物のことです。当初は印を入れたことからその名が付きました。「印籠を渡す」と言っても、最終宣告を下すことにはならず、単なる携帯用の入れ物を渡すということにしかなりませんので注意してください。

「引導を渡す」を使った例文

「引導を渡す」という言葉を実際に使ったことのある人はそう多くないでしょう。どのような使われ方をするのか例文を見て確認しておきましょう。

  • この選手はこの5年間で全く成績を残せていないので、近い将来引導を渡されることになるだろう
  • 所属チームから技術の向上が全く見られないとの理由から、もう世話をしてやることはできないと引導を渡されてしまった
  • 祖父の葬儀で、僧が引導を渡した
  • 人事部長から「彼に解雇の意向を伝えて欲しい」と、引導を渡す役目を与えられた
  • こん睡状態であった祖母に、医師が「これ以上治療をしても助かる見込みがない」と、引導を渡されてしまった

語源と宗派による「引導」の違い

「引導を渡す」の語源

「引導を渡す」の語源は、仏道に人々を導いて入れることから来ています。仏教の葬儀の際、僧が棺の前で死者が迷うことなく悟りが開けるよう、つまり死んだことを死者に理解させる法語を唱える行為を意味していました。そこから、相手に諦めされるための最終宣告という意味を持つ言葉となったのです。

宗派による「引導」の違い

ほとんどの仏教の葬儀では、故人を称え、法語を唱える引導の儀式が行われます。引導渡しの際に「喝!」という言葉を発し、この世の未練を断ち切らせる場合が多いようです。各宗派によって具体的な内容が異なっており、引導そのものがない場合もありますので詳しく見ていきましょう。

  • 禅宗系の曹洞宗と臨済宗

引導の儀式の際、松明を用いて投げる行為が一緒に行われます。これは古来中国の黄檗希運禅師の逸話が由来しており、禅師が発した引導法語で行われています。

  • 浄土宗 

浄土宗でも禅師の逸話に由来しており、引導下炬(いんどうあこ)と呼ばれています。松明に見立てたもの2本を用い、この世を離れることを意味してそのうち1本を捨てます。もう1本で円を描きながら法語を唱えて、その後捨てるという儀式が行われています。

  • 浄土真宗 

浄土真宗では、死後は必ず浄土へ行けるとの考えから引導がありません。これは成仏のために祈念する必要がないと考えるためです。葬儀で拝む対象となるのは阿弥陀如来です。

「引導を渡す」の英語と類語

「引導を渡す」の英語表現

「引導を渡す」を英語では”say a requiem”になります。”requiem”は鎮魂歌や哀歌の意味で、死を悼むことを含んでいる場合もあります。最終宣告をするという意味よりは、語源に近い死者を弔う言葉を投げかけるといった意味になります。

最終宣告をすることや終わりを告げることを英語で表現したい場合は、「終止符を打つ」の意味もある” put an end to”や、「最後の言葉を与える」の意味もある” give someone the final word”が的確でしょう。

「引導を渡す」の類語

  • 最終宣告をする

「引導を渡す」の意味の説明でも登場した「最終宣告」は、類語として使える表現です。裁判の言い渡しや公に告げて知らせる意味を持つ「宣告」が最後となるので、これ以上後がないということを表現しています。

  • お払い箱にする(お祓い箱にする)

語源から考えると「お祓い箱」が正確な漢字なのですが、「お払い箱」でも問題ありません。お祓いの札を入れておく箱のことで、毎年新しいお札に取りかえたことから、不要になったものを捨ててしまうことを「お払い箱」というようになりました。切り捨てるといった意味で使われます。

まとめ

「引導」は仏教用語であり、語源も葬儀で行われる儀式からきていることが分かりました。なかなか実際に使う機会のない言葉ではありますが、意味や言葉自体を間違って覚えているといざという時に恥をかいてしまいます。社会人としても日本人としても正しく理解しておきたい言葉ですので、すでに知っているという人も改めて確認しておくようにしましょう。