「いたしました」の意味と使い方!「しました」との違いも解説

「いたしました」は普段何気なく使っている方が多い言葉です。しかしふとした時に「この使い方で合ってるのかな?」と疑問に思うことはありませんか?今回は「いたしました」という言葉について解説します。

「いたしました」の正しい使い方や意味をマスターして、社会人として相応しい言葉使いができるようにしましょう。

「いたしました」とは?

「いたしました」の意味は”「した」の謙譲語”

「いたしました」の意味は、”「~した」の謙譲語”です。「出社いたしました」「ご連絡いたしました」など、日常で頻繁に登場する言葉です。

「いたしました」の「いたす」は「する」の謙譲語で、「ました」は過去形であることを示しています。そのため「いたしました」は「する」の過去形である「した」という意味と理解することができます。

「しました」は丁寧語

「いたしました」という言葉は主に自分や相手が実際にした行動について使われます。「私は入社しました」「彼女は結婚しました」「彼は出発しました」などあらゆる場面で使われます。

この「しました」は「~した」の丁寧語です。「いたしました」のように謙譲語の働きはありません。そのため自分の行動だけでなく、誰の行動にもにも使うことができます。

丁寧語である「しました」では目上の人へ失礼になることもあるため、自分や自分の身内が何かをしたことをへりくだって伝える場合には、主に「いたしました」が使われます。

「いたしました」の尊敬語は「なさった」

「いたしました」という言葉は謙譲語なので、自分や自分の身内の行動についてしか使うことができません。その行動をしたのが相手や第三者である場合には尊敬語の「なさった」を使います。

「なさった」は相手が何かを「する」という意味の「なさる」の過去形です。「昇進なさった」「退職なさった」など、その人が起こした行動を「なさった」という言葉で表します。

これからすることは「いたします」

「いたしました」という言葉は過去形です。すでにその行動を終えた状態であることを「いたしました」という言葉で表します。そのため、これからしようとしていること、つまり未来形としては「いたしました」は使えません。

これからしようとしていることについては「いたします」を使います。「これから電話いたします」「早速準備いたします」などとすれば「する」の未来形として使うことができます。

「いたしました」の使い方とは?

「致しました」との違いは特にない

「いたしました」という言葉は漢字で「致しました」と書きます。口頭で「いたしました」という言葉を使う分には気になりませんが、手紙やメールで使う場合は書き方に疑問を持ちやすいものです。

しかし「いたしました」でも「致しました」でも、言葉の意味や相手への敬意に変わりはありません。しいて言えば「致しました」の方がややフォーマルな印象が強く、その分相手への敬意を伝えやすくなります。

反対に「いたしました」と平仮名で書くと、印象がやわらかく穏やかな雰囲気で相手への敬意を表すことができます。そのためプライベートの手紙などに「いたしました」と平仮名を使う方は多いようです。

「いたしました・しました」の混在はOK

口頭や文章で「いたしました」という言葉は多く使われます。特に、相手に何かを報告したい場合などは、自分がした行動について述べるので気がつくと「いたしました」ばかりになってしまうこともあります。

そんなときは「しました」「ます」などの丁寧語と混在して使うと、話し方や文章が自然なものになります。「新入社員が出社いたしました。説明会の後は社内の見学に引率します。すでに部長にはご報告しました」など、全体のバランスを見ながら「いたしました」「しました」「ます」を上手く混在させると良いでしょう。

「いたしましたでしょうか」は誤り

「いたしました」という言葉は使いなれるととても便利で、つい何にでも使ってしまうことがあります。たとえば「いかがいたしましたでしょうか」などです。主にこの言葉が使われるのは、相手の様子がいつもと違う場合や、何か問題が起きたのではないかと懸念している場合でしょう。

しかし「いたしました」は自分がしたことについて使う謙譲語です。相手の様子をうかがうのであれば「いかがなさいましたでしょうか」となります。

「いたしました」という言葉を含む場合は、それを誰がしたのかという部分に注目すると間違えにくくなります。

「承知いたしました」は主にビジネスで使う

「いたしました」という言葉は日常のさまざまな場面で使われています。その中でも頻繁に耳にするのは「承知いたしました」です。主にビジネスの場で使われる「承知いたしました」には「わかりました」「理解しました」という意味があります。「わかる」「理解」などを自分が「した」ので「承知いたしました」です。「承知しました」としても間違いではありませんが目上の人へ使うのであれば謙譲語が含まれた「承知いたしました」が適切でしょう。

「致しました次第です」はくどい印象

「いたしました」という言葉は謙譲語なので、相手に対して失礼がありません。しかし「いたしました」という言葉だけで、ある程度の敬意を伝えられるため後に続く言葉が丁寧過ぎると、少しくどい印象になることがあります。

たとえば「このように手配いたしました次第です」などです。「次第です」とは物事の経緯や事情を説明する言葉で、目上の人へ向けられる丁寧な表現として知られています。「いたしました」も「次第です」も丁寧な表現のため、どちらかひとつにした方がすっきりとします。

「このように手配した次第です」または「~のため、このように手配いたしました」などとした方がスマートですし、相手への敬意もくどくなりません。

「メールいたしました」は不自然

「いたしました」は自分がした行動について使いますが、一般的な会話の中で「名詞」が行動を表す「動詞」として使われる場合があります。その場合は「いたします」と一緒に使うと不自然な印象を受けやすくなります。

たとえば「メール」という言葉です。「メールしました」などと使われることも多くその場合は「~を送信」という部分が省略されて使われます。しかし「いたしました」は行動について使う言葉なので「いたしました」を使うのであれば「メールを作製いたしました」「メールを作成いたしました」「メールをお送りいたしました」となります。

電話なども同様で「お電話にてご連絡いたしました」「電話でお伝えいたしました」など、行動について「いたしました」を使うようにすれば、自然な言葉として「いたしました」を使うことができます。

「いたしましたので」「いたしましたら」は使い方に注意

「いたしました」という言葉は、主に言葉や文章の最後に使われます。しかし中には「~をしたので」「~をしたら」という接続詞と一緒に使われる場合もあります。この場合に使われることがあるのが「~いたしましたので」「~いたしましたら」です。

まず「~いたしましたので」は自分がした行動によって、何かが発生する、あるいは発生したという状態を伝えます。この場合は「~」の部分に来るのは自分や自分の身内がした行動です。相手や目上の人がした行動が「~」の部分に来る場合は「~なさったので」と変化するので注意しましょう。

「~いたしましたら」も同様です。「~」に来る部分は自分、または自分の身内がした行動に限られます。相手や目上の人がした行動についてであれば「~なさいましたら」です。

「いたしました」の類語とは?

類語①言い換えやすい「しました」

「いたしました」という言葉は丁寧な謙譲語で、相手に失礼はありません。しかし相手との関係や話の内容によってはやや大げさと感じることもあるでしょう。その場合は「しました」を使うと話しやすくなります。「転勤しました」「食事をしました」などとすると、仰々しさもなく、丁寧な言葉で伝えることができます。

相手が敬意を払わなくてはならない人であったとしても、会話の間中常に「いたしました」では耳に残りやすくもなるので、バランスを見て「しました」とする部分も作っておくと良いでしょう。

類語②「~させていただきました」は重複に注意

「いたしました」を多用し過ぎずに、丁寧な言葉で「いたしました」という言葉を使いたい場合は「~させていただきました」という表現もあります。「お伺いさせていただきました」「ご連絡させていただきました」などです。

しかし「~させていただきました」は言葉通り「相手にさせてもらうこと」について使うので、「いたしました」と全く同じ使い方ができるわけではありません。相手の了解を得て行ったことなどであれば「いたしました」の代わりに「~させていただきました」を使うことができます。

「いたしました」のメール例文とは?

「確認いたしました」「完了いたしました」で報告

「ただ今、確認いたしました」
「履歴書を拝見いたしました」
「お申し付け頂いた件は完了いたしました」
「例の件は手配が完了いたしました」

「志望いたしました」「することといたしました」で宣言

「学生時代に培ったフットワークを活かしたく、御社を志望いたしました」
「お客様と直接お会いする業務に就きたく、営業部への異動を志望いたしました」
「本日より残業を廃止することといたしました」
「本年度より経費を節減することといたしました」

「いたしましたため」「いたしましたところ」で接続

「私がご迷惑をおかけいたしましたため、お詫びに伺いました」
「弊社課長の○○が入院いたしましたため、代わりの者を伺わせます」
「○○様にご連絡いたしましたところ、お会いいただけるとのことです」
「今回のプロジェクトに参加いたしましたところ、問題点が見えて参りました」

まとめ

「いたしました」は「した」というとてもシンプルな意味を持っています。しかしそのシンプルさが故に誤った使い方をしやすく、使い方に迷うことも多い言葉です。「いたしました」は正しく使えばスマートでわかりやすく会話や文章の中でも便利に使うことができます。ぜひこの機会に自分の「いたしました」の使い方を見直してみましょう。