入社時に提出を求められることがある秘密保持誓約書ですが、そもそもこの「誓約書」とはどれほど重要な書類なのでしょうか。
そこで今回は「誓約書」の持つ意味とその法的効力について解説し、誓約書の書き方とテンプレートも紹介します。また英文での誓約書の書き方や、「覚書」や「契約書」との違いについても説明します。
「誓約書」とは
「誓約書」の意味は、契約を締結するために提出される覚書
誓約書とは、契約を締結するために提出される覚書です。その特徴は、契約を交わす双方が合意した内容を記載しているのではなく、当事者の一方が相手方に差し出す書類です。
そのため誓約書には、誓約書を書く当事者のみの署名と捺印が押されます。
その内容は、契約書を書く側が一方的に 〇〇をしないなどの約束をしたり、ある一定の事実を認めたりするときに提出します。
たとえば、不倫をしてばれたときに、当人がこれからは不倫をしないといった誓いを立てるときに誓約書が書かれます。
「誓約書」の読み方
「誓約書」は「せいやくしょ」と読みます。
法的効力は絶対ではないが有力
誓約書の法的効力は契約書ほどに強くはないものの、証拠として有力です。
ただし有力な証拠として誓約書が扱われる場合には、その内容が重視されます。誓約書の内容が、誓約書の提出先である相手が全く同意できない内容の場合には、その法的効力はなくなります。
あくまでも誓約書を交わす双方が納得のいく内容の場合に、その法的効果が表れます。
ビジネスにおける誓約書の種類
秘密保持契約書
ビジネス上で取り交わされる誓約書は、新入社員が入社時に提出する秘密保持誓約書があります。秘密保持誓約書とは、企業の製品情報や顧客情報など社外に漏えいされては困る事項を社外に漏らさないことを誓う書類です。
入社誓約書
内定者が内定辞退をしないように、会社側が内定者に入社誓約書の提出を求めることがあります。
取引契約前に交わされる誓約書
取引きでは、契約が締結される前に誓約書がやり取りされることも多くみられます。クライアントに対して仕事を受注する側が、個人情報の取り扱いや反社会的勢力に該当していないことなどを証明するために誓約書が提出されます。
誓約書の書き方とテンプレート
誓約書の書き方のポイント
誓約書の書き方として最も重要なことは、第3者が見ても納得できる内容にまとめることで誓約書に法的な有効性を持たせることができます。
誓約書の署名は手書きで
誓約書を手書きで書くかどうかが問われる場合がありますが、ビジネスでは手書きである必要はありません。
ただし署名は必ず手書きです。また捺印も忘れずに行ってください。
誓約書のテンプレート
ここでは秘密保持誓約書のテンプレートを掲載します。
誓約書は誓約する人だけの署名でも成立するのですが、秘密保持誓約書の場合は企業と個人との間で取り交わされることが明確なので社名も入ります。
またこれはあくまでも雛形ですので、詳細は個々の案件に合わせて変更してください。
「誓約書」の英語での書き方とテンプレート
誓約書は英語で「written oath」
誓約書を英語にすると正式な誓約書なら「written oath」です。
またビジネスで使える範囲でかしこまりすぎない表現なら「commitment form」や「promissory letter」もあります。
英文での誓約書では署名のみ
英文での誓約書は、基本的な内容に日本語で書く誓約書と違いはありませんが、ハンコ文化のない外国では捺印はいらず署名だけで済ませます。
英文での誓約書のテンプレート
ここでは山田太郎さん(仮名)とA会社との秘密保持に関する誓約書の参考例を紹介します。
Written Oath for Non-Disclosure of Confidential Information
TO: Mr Taro Yamada
As a condition of my employment with A Company, I solemnly swear to observe under mentioned conditions in the following issues:
- 英文で秘密保持内容1
- 英文で秘密保持内容2…
Date:(日付け)
Address: (住所)
Name of employee: Taro Yamada
Signature: (署名)
「誓約書」「念書」「覚書」「契約書」の違い
「誓約書」と「念書」は同じ
「念書」は約束事を証拠として残しておく性質の書類で、当事者の一方が相手に提出します。法的効力はなく、誓約書と同等な書類として扱われます。
覚書との違い
覚書とは、双方で交わされる契約書を交わすほどでないけれども、双方で契約事項を確認しておこうという状況のときに交わされる書類です。契約書の追記事項を証明するときにも覚書は使われます。
誓約書との違いは、契約の当事者双方が署名することで双方が内容に合意をしていることです。ただし誓約書と同じく契約書ほどの法的効力はありません。
契約書との違い
契約書と誓約書の違いは、契約書を交わす双方が合意の上に取り交わされる書類で確実な法的効力があることです。
契約内容に反したことがなされた場合には、法的手段を取られても仕方がありません。
まとめ
「誓約書」とは一方が相手にある内容のことを守ることを誓う書類です。法的に有効になるには、その内容が第三者が見ても納得のいく書かれ方がされていることが大切です。誓約書の提出先に一方的な押し付けになるような誓約書の場合は法的効力が失われることもありますので、注意しましょう。
秘密保持に関する誓約書
この度、私は、貴社に採用されるにあたり、下記の事項を遵守することを誓約いたします。
記
第一条(在職時の秘密保持)
就業規則及び貴社情報管理規定を順守します。
次に示される貴社の秘密情報を、貴社に許可なく不正に公開または使用しないことを約束します。
・製品など情報の説明(略)
第2条(退職後の秘密保持)
前条の秘密情報を、退社後も不正に公開または使用しないことを誓います。
第3条(損害賠償)
万が一、前条の秘密情報を第三者に漏洩した際には、法的な責任を負担することを確認して、これにより貴社が被った一切の被害を賠償することを約束いたします。
第4条(第三者に対する守秘義務の順守)など
以上
○年○月○日
株式会社 ○○ ○○
代表取締役社長 ○○ ○○殿
住所 ○○県○○市○○1-2-3
氏名 山田太郎 印