「召し上がる」本当の意味は?類語と間違いやすい注意点を解説!

「召し上がる」という言葉は知っていても、使ったことがないという人は多いのではないでしょうか?今回は「召し上がる」という言葉について解説します。召し上がるは「飲み物」にも使うの?など、召し上がるの意味だけでなく、使い方や注意点などについて正しく認識して心のこもったおもてなしができるようになりましょう。

「召し上がる」とは?

「召し上がる」は「食べる」「飲む」の尊敬語

「召し上がる」とは、相手が食べたり飲んだりする様子の尊敬語です。「召し上がる」は「めしあがる」と読みます。「召し上がる」の「召す(めす)」にはいくつかの意味があります。「服を着ること」「風邪などの病気をすること」「何かを気に入ること」「年齢を重ねること」そして「食べること」「飲むこと」です。

「召し」と「上がる」が一緒になった「召し上がる」は「食べる」「飲む」という行為を表す尊敬語として使われます。「上がる」には「申し上げる」や「差し上げる」などに使われているものと同じ「相手を一段上に上げて、自分の位置を下げる」という効果があります。

「召す(食べる・飲む)」+「上がる(敬う)」で「相手が食べたり飲んだりする様子の尊敬表現」となるのです。

「召し上がる」の使い方

お茶や食事を相手に勧めるとき

たとえば、人を招いて食事や飲み物をお出ししても、多くの場合は遠慮の気持ちから手をつけにくいものです。そんなときに「どうぞ、召し上がってください」などと一言伝えると、相手は食べたり飲んだりしやすくなります。

日本では「訪問先では相手に勧められるまで食べ物や飲み物に手をつけない」というマナーが一般的とされていることもあって、もてなす側が「召し上がる」という言葉を使って相手に勧める場面は多いものです。

自分以外の人の様子を表すとき

目上の方の行動や状態を表す場合にも尊敬語は使われます。たとえば、目上の方が「見る」は「ご覧になる」、「知る」は「ご存知」などです。これと同じように「食べる」「飲む」を「召し上がる」と表します。

「お食べになる」「お飲みになる」など、丁寧語と「なる」を使って表すこともできますが、「お食事を召し上がる」「お飲み物を召し上がる」と表現することでさらに尊敬の気持ちを強く表すことができます。

「召し上がる」の注意点

「お召し上がりになられる」は二重敬語

「召し上がる」という言葉は、正確に使えば品格を持って相手を敬うことができます。しかし「召し上がる」を使う相手やシーンを敬う気持ちが強すぎて、間違った使い方をしてしまうことも多いのではないでしょうか。

敬う気持ちが強すぎて起る間違いに多いのは「二重敬語」です。二重敬語は、過剰な敬語表現であることから、却って失礼な言葉を作り上げてしまいます。

中でも多い二重敬語は「お召し上がりになられる」です。「召し上がる」という言葉は、敬語表現としてしか使わないので、他の敬語と組み合わせる必要はありません。「お召し上がりになる」「召し上がってください」とシンプルに表現することで「召し上がる」という言葉が正しく機能します。

「お召し上がる」は二重敬語ではない

「召し上がる」という言葉の二重敬語の問題の中で、有名なのは「お召し上がる」「お召し上がりになる」は二重敬語なのではないか?というものです。

結論から言えば、これは二重敬語ではありません。「お召し上がり」の「お」は敬語表現の「お」ではなく、丁寧語の「お」だからです。

丁寧語の「お」というのは「お電話」「お手紙」の「お」と同じで、単語を聞き心地良くするためだけの配慮です。「ご連絡」「ご希望」の「ご」などと同じ役割しかありません。そのため「お召し上がりになる」は敬語表現として問題なく使うことができます。

「召し上がれ」は目上の人には使わない

物語の中などで「召し上がれ」という表現がでて来ることがあります。「召し上がってください」を命令形の「れ」を使うことで、強く「召し上がりなさい」と相手に伝えています。

まず「召し上がれ」は尊敬表現ではありませんので、目上の方には使いません。この「れ」の強さは、相手の遠慮を打ち砕くための、思いやりの気持ちから敢えて選択されていることが多いのですが、実生活の中ではほとんど使われていないでしょう。

実生活の中で使うとすれば、自分よりも目下の人へ「遠慮せずに、食べなさい(飲みなさい)」という意味で使われる程度です。

「召し上がる」の類語・言い換え

「おあがりになる」に言い換え、控えめに表現

「召し上がる」という言葉は、さまざまなシーンで使われています。来客時や会食の場などだけでなく、飲食店でも耳にしたことがある人は多いでしょう。しかし、いずれもフォーマルな場であることが多く、自分がもてなす側になったときに、少し大げさな気がして使うことを躊躇してしまうという人もいるのではないでしょうか。

そんなときは「おあがり」という言葉を使うこともできます。「どうぞ、おあがりください」と相手に食べ物や飲み物を勧めたり、「○○様は私の家でお茶をおあがりになりました」と第三者に状況の説明をすることもできます。

「召し上がる」の謙譲語は?

自分が食べる、飲むは「いただく」

訪問先などで、出されたものを自分が食べたり飲んだりすることがあります。相手からは「召し上がってください」などの尊敬語で勧められますが、それを受けるときには「謙譲語」を使わなければなりません。

「召し上がる」の謙譲語は「いただく」ですので、「ではいただきます」などが良いでしょう。食べ終わった後や飲み終わった後であれば「大変おいしくいただきました」「ごちそうさまでした」などと伝えることができます。

この「いただく」を「いただいてください」などとして、「召し上がってください」と混同している人を見たことがあるかもしれませんが、それは誤りです。「いただく」はあくまでも自分の行為を表す謙譲語ですので、正しく使えるようにしましょう。

「召し上がる」を使った例文

・目上の方の様子を表すとき
「社長は今、会議室でお弁当を召し上がっています」
「佐藤様は、昨夜の会食でお寿司を召し上がりました」

・相手に飲食を勧めるとき
「お口に合うかわかりませんが、よろしければお召し上がりください」
「おいしいと評判の紅茶です、ぜひ召し上がってください」

まとめ

「食べる」「飲む」という行為は、人間が生きていく上で欠かせないものですが、直接的な表現をすると、どうしても雑な印象を受けやすいものです。敬語は自分のためではなく、相手を想って使うものです。「召し上がる」という言葉を上手く使って、相手の品位や場の雰囲気を保てるように意識してみましょう。