「粛清」の意味とは?粛正との違いや類語を紹介!「大粛清」も

「粛清」(しゅくせい)という言葉を聞くだけで歴史上の悲惨な事件が頭をよぎり、あまり意味を知りたくないと思うかもしれません。ところがそもそもの意味は残酷な意味ではないのです。ここでは粛清の意味やその類語と、同音の「粛正」との意味の違いなどについて解説します。

「粛清」とは?

「粛清」の意味は”内部の反対者を徹底的に追放すること”

「粛清」の意味は、”内部の反対者を徹底的に追放すること”です。「粛」は「きびしくする」という意味があり、厳しく、おごそかな様子という意味の「厳粛」にも使われる語です。「清」は濁っていない、穢れがないなどの意味があります。

「粛清」はその漢字が示すように、もともとは厳しく取り締まって「不正な者を除く」という意味でしたが、政治的な意味で用いられるうちに現在のような「反対者を徹底的に追放する」という意味が定着しました。

また、「粛清」という時、命まで奪う処刑の意味で使われることもありますが、本来の意味に処刑の意味はありません。

「粛清」の英語は”パージ”で公職から追放すること

英語で「粛清」をパージ (purge) といい、一掃や抹消という意味もあります。日本で政治的な意味で「パージ」という時は、公職から追放することの意味で使われます。

特に、連合国軍占領下の日本において、総司令官ダグラス・マッカーサーの指令により日本共産党員やその支持者が公職を追放されたり、民間企業においても解雇されたりした動きを「レッドパージ」といいます。「赤狩り」とも呼ばれました。

さらに、昭和21年に戦争指導者や協力者を公職や報道機関などから追放した公職追放の動きを「パージ」と呼びました。

「大粛清」(ロシア語:ボリショイ・テロル)はスターリンの弾圧のこと

「大粛清」とは、名詞として使われる場合は「大規模な粛清」という意味ですが、通常は固有名詞として用いられます。歴史上での「大粛清」とは、ソビエト連邦(ソ連)の最高指導者であったヨシフ・スターリン(1878年~1953年)が、1930年代にソビエト連邦やその周辺国で行った大規模な政治弾圧のことをいいます。ロシア語では「ボリショイ・テロル」といいます。

スターリンの治世のもと、粛清(処刑)された人は4千万人~5千万人といわれます。大粛清は1938年~39年が頂点となり、この2年間だけでも処刑された人は70万人にのぼります。1939年の第二次世界大戦の勃発により規模は小さくなるものの、スターリンの死まで大粛清は続きました。

「血の粛清」とは処刑のこと

「血で血を洗う粛清」などとも表現される「血の粛清」という表現があります。この時の粛清とは、追放ではなく命を奪う処刑を意味します。特に革命運動や独裁政党などで行われることが多く、歴史をひもとく時、血の粛清の歴史を避けて通ることはできません。

「粛清」と「粛正」の違いとは?

「粛正」(しゅくせい)と「粛清」の違いについて説明します。

「粛正」とは厳しく取り締まり不正をなくすこと

「粛正(しゅくせい)」は同音異義語の「粛清」としばしば混同されます。「粛正」とは、「きびしく取り締まって不正をなくする」という意味です。「綱紀粛正」(こうきしゅくせい)の熟語でよく用いられ、国家や政治のあり方の規律や秩序や政治家および役人の態度を正すという意味です。

「粛清」は追放で「粛正」は正すこと

両者の違いは、「粛清」は追放で「粛正」は正すこと、という違いになります。

「粛清」の類語とは?

「粛清」の類語は”弾圧”や”恐怖政治”など

  • 弾圧

「弾圧」(だんあつ)とは、おさえつけるという意味です。支配者が絶対的な権力を行使して、反対勢力などの活動を抑圧することや、「言論を弾圧する」などとして不当な圧力をかけて言論の自由を奪う時に使われます。

  • 恐怖政治

拷問や殺りくなどの恐ろしい手段によって、反対者を弾圧して行う悪政のことを「恐怖政治」といいます。フランス革命期の政治体制が恐怖政治と表現されます。

  • ホロコースト

第二次世界大戦中のナチス・ドイツがユダヤ人などに対して組織的に行った大量虐殺を「ホロコースト」といいます。もともとはユダヤ教の供犠(くぎ:いけにえを神に供える事)を意味する言葉でした。

  • 民族浄化

支配的集団が特定の望まない民族集団を強制移住や大量殺りくなどによって強制的に排除することを「民族浄化」といいます。「他民族粛清」と表現することもあります。「民族浄化」は旧ユーゴスラビアの1990年代の内戦の中で生まれた語だとされています。

  • 圧制

権力をもつ者が、その権力を不正に使って、他人の言動を無理におさえつけることを「圧制」といいます。暴力を伴う場合もあります。

まとめ

「粛清」とは厳しく取り締まって不正を排除するという意味の言葉でしたが、政治的な厳しい追放の意味で用いられ、さらに処刑を伴う追放の意味でも使われています。

某都知事が2016年に会見で「都庁全職員を粛正したい」と述べ、「粛正」の言葉が注目を浴びました。「綱紀粛正」の意味で、厳重に取り締まりたいとの発言でしたが、ニュースを聞いて「粛清」の方の漢字が頭をよぎった人もいたかもしれません。