「独壇場」の意味と使い方とは?「独擅場」との違いや類語も解説

一人で思うがままに振舞っていることを意味する「独壇場」という言葉。これに似た言葉で「独擅場」がありますが、その二つの言葉にどのような相違点があるのでしょうか。

今回はこの「独壇場」の意味と使い方に、言葉の由来についても解説します。また独壇場に見た目に似ている「土壇場」との違いや、類語なども紹介します。

「独壇場」とは?

「独壇場」の意味は”ひとり舞台”

「独壇場」の意味は、”ひとり舞台”です。ある人だけが思いのまま振舞うことができる場所や場面で、ほかの人の追随を許さない状態のことです。

ビジネスからスポーツなど様々なシーンで使われていて、ある人が決まった分野や状況でほかの人とは比べ物にならないほどの力を発揮して活躍しているようなときに使われます。

例文:
「前回のバスケットボールの試合では、○○君の独壇場だった」
「結局、今回のプロジェクトでは始めから終わりまで○○さんの独壇場だった。僕たちはサポートしただけだよ」

「どくだんば」の読み方は間違い!

「独壇場」の読み方は、”どくだんじょう”です。「どくだんば」とも読めますが、誤りなので注意しましょう。

「独壇場」は本来”独擅場(どくせんじょう)”だった

「独壇場」に似た言葉で「独擅場(どくせんじょう)」があり、実は本来、「独壇場」は「独擅場」だったのです。

しかし「独擅場」の「擅(せん)」の字が「壇(だん)」の字と読み間違えられて、そのまま「独壇場」で定着してしまいました。

両方とも意味が同じであるため、両方の言葉が今でも使われていますが、「独壇場」のほうが一般的です。

「独壇場」には使われなくなった意味があった

「独壇場」は現在では「独擅場」と同じく「ある人が思いのままに振舞える場所や場面」という意味で使われていますが、それは「独壇場」が「独擅場」を誤読したからだと説明しました。

では「独壇場」が誤読される前の本来の意味はどういう意味だったかというと、「一人が立てる少し高いところ」という意味でした。「独」は「ひとり」という意味で、「壇場」は本来土をもって高くしたところで、その上で祭事や任命式などの公式な行事が行われる場所でした。

その二つの意味が一緒になり、「独壇場」という言葉が生まれました。

「独壇場」の使い方とは?

「〇〇の独壇場」

ある人の独壇場という意味で、当事者の名前を独壇場の前において使う「○○の独壇場」という使い方が一般的です。

〇〇のところに人名や社名などの事物の名前が入ります。

例えば、ある分野でほかの人の追随を許さないといった状況で使われます。

例文:
「天体の話となると、○○君の独壇場だ」
「この分野においてわが社では○○さんの右に出る者はいない。○○さんの独壇場だと言える」
「結局、通信業界ではA社の独壇場だ」

ポイント:複数の人では独壇場は使われない

ちなみに、○○のところに複数人の名前は入りません。独壇場の意味は、一人が思いのまま振舞っているという状態ですから、複数の人がいては独壇場にはならないからです。

「独壇場」と「土壇場」の違いとは?

「土壇場」の意味は”物事が切羽詰まった状態”

「土壇場」とは「どたんば」と読み、「物事が切羽詰まった状態」という意味です。

もうこれ以上待てない、決断しなくてはならないというように追い込まれた状態で使われます。

「土壇場」のこの「切羽詰まった状態」の意味が生まれた理由は、江戸時代に首切り刑が施行されたときに高く土を盛ったところを「土壇」(どだん)と呼んだことから始まります。

「独壇場」と「土壇場」は全く違った言葉

パッと見たときに似ていますが、「独壇場」と「土壇場」では読み方も意味も違います。

それぞれ関係もないことから、読み間違いには気をつけましょう。

「ドタキャン」は「土壇場」から生まれた

「どた」の音で始まる「ドタキャン」は、「土壇場になって急にキャンセルをした」という意味を略して作られた言葉です。

90年代に生まれた造語で、この日本語とカタカナ語を合わせて作られた造語には、ほかにも「イクメン」(育児+メンズ)などがあります。

「独壇場」の類語とは?

独壇場の類語①「総なめ」

「総なめ」の「総」は「すべて」の意味で、この場合の「なめ」の意味は「被害を与えること」または「打ち負かすこと」です。

「総なめ」の本来の意味は「火が猛威を振るい、広大な土地が被害を受けた状態」でしたが、この意味が転じて、「敵や相手を打ち負かす」という意味になりました。

例文:「○○さんは今季のタイトルを総なめにした」

独壇場の類語②「独り勝ち」

「一人勝ち」とも書き表せる「独り勝ち」ですが、その意味は「ほかの人全員が負けて、一人だけ勝つこと」です。

例文:「今回のコンペは始まる前から勝負が見えていた。A社の独り勝ちだ」

「独り勝ち」も「独壇場」も同じようにたった一人が活躍しているという状態ですが、前提が違います。

「独り勝ち」の場合は、勝負事でほかの人が負けるという状態があって、勝った者と負けた者との差がはっきりしています。

それに対して「独壇場」は勝負事を事前にしておらず、その人以外の追随を許さないという状態のときに使われます。

独壇場の類語③「一人天下」

だれもその人を抑えることができず、その人だけが勝手に振舞う様子を「一人天下」と言います。

「独壇場」の状況を一人が勝手なことをしているとネガティブに捉えるときに、「一人天下」という表現が使われます。

「独壇場」の英語表現とは?

「独壇場」は英語で”unchallenged”

ある人が独占しているという状態を表すには、「unchallenged」という表現が適切です。慣用句的な表現ならば、「be entirely something in one’s hand」という表現も使えます。

また「ほかの人の追随を許さない」「匹敵する者がいない」という意味を強調したければ、「unrivaled」がいいでしょう。

例文:
“A company has an unchallenged position in the telecommunication market.”
「通信業界はA社の独壇場だ」
“He is entirely the new project in his hand.”
「新プロジェクトは彼の独壇場だ」
“She is unrivaled in the interpretation of Chopin.”
「ショパンの楽曲解釈では彼女の独壇場だ」

まとめ

「独壇場」は「独擅場」の誤読から始まったわけですが、似たように見えてもそれぞれ読み方は違います。同じ意味で使われていても、「独壇場」は「どくだんじょう」、「独擅場」は「どくせんじょう」と読みますのでよく覚えおきましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。