「しっぽり」の意味とは?語源や類語・対義語を解説(例文つき)

「今日はしっぽり一人で飲むとするか…」残業続きのビジネスパーソンがボソッとつぶやきそうなセリフですが、一体「しっぽり」とはどのような意味があるのでしょうか?

ここでは「しっぽり」の主な意味を3つのパターンに分けて、例文とあわせて紹介します。類語・対義語や英語表現も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

「しっぽり」の意味と語源とは?

意味1「しっとりと濡れるさま」「雨が静かに降るさま」

「しっぽり」の意味は、”しっとりと濡れるさま・雨が静かに降るさま”です。洋服や髪、また街並みの情景がしっとりと濡れる様子を指し、小雨や春雨など細かく静かな雨が降る様子そのものも意味しています。

「しっぽり」を解釈するカギは「ゆっくり、小さな」です。「びっしょり」や「豪雨」など、激しく規模の大きなものではなく、「しっとり」「静かに」という軸のニュアンスがある言葉として解釈しておきましょう。

  • 突然のにわか雨にしっぽりと濡れた。
  • しっぽりと、街並み濡らす、小雨かな。

意味2「男女の愛情が細やかなさま」

「しっぽり」の2つ目の意味は「男女の愛情が細やかなさま」つまり「男女の距離がゆっくりと縮まっていくさま」です。

男女がお酒を静かに嗜みながら共に時間を過ごし、少しずつ心が通じ合うような情景を思い出してみましょう。二人の距離が狭まり、ゆっくりと親交を深めるさまを「しっぽり」という言葉で表現します。

  • 古びたバーで二人の男女がしっぽりとお酒を飲んでいた。
  • しっぽりとワインをすすりながら、二人は次第に距離を縮めて行った。

意味3「静寂でしんみりと情にひたるさま」

「しっぽり」の3つ目の意味は「静かにしんみりと情にひたるさま」です。物思いにふけり、ゆったりした時間を過ごすような状況に対して使います。例を挙げれば、忙しい職場や束縛された立場から離れ、自分の気持ちが赴くまま、まったりとした空間にひたるさまです。そこには穏やかな空気と落ち着いた時間が流れていることでしょう。

  • 久しぶりに夕暮れのベランダで、しっぽりと彼女への思いを巡らせていた。
  • しっぽりとした情に浸りながら、一人、将来のことを考えていた。

「しっぽり」の語源は”しっとり・しみじみ”という説がある

「しっぽり」という言葉の響きから「はんなりとした柔らかな印象」を受ける人もいるしょう。しかし「しっぽり」の語源は、「しっとり」または「しみじみ」など、いくつかの説がありますが、正しい語源・由来はわかっていません。

また「しっぽり」は「文語=文章だけに用いる言語」ではなく、現代社会で雑談や話し言葉として使われている「口語」や「俗語」に分類されます。言葉が伝えるニュアンスをベースに日本独特の表現としてやんわりと確立したのが「しっぽり」なのです。

「しっぽり」の類語と対義語とは?

「しっぽり」の類語と対義語について紹介します。

「しっぽり」の類語は「しとしと」「しょぼしょぼ」

「しっぽり」の類語は「しとしと」「しょぼしょぼ」、また「じとじと」「そぼそぼ」「しんしん」などです。文脈によって「雨がしとしと降る」「服がしょぼしょぼと濡れた」などと言い換えることもできます。

「しっぽり」の対義語は「すぐに」「騒然と」

「しっぽり」の対義語にあたるのは、「静かでゆっくり」と反対の意味を持つ「すぐに」「早くも」「急速に」「即座に」、また「騒がしい」「騒然と」などと考えられます。素早くスピードがあることを示す言葉、また物音がうるさく情緒のない様子を指す言葉が「しっぽり」に対して逆の意味を持つ言葉です。

「しっぽり」は京都の方言でもある?

「しっぽり」が京都の方言であるという説について解説します。

「しっぽり」は「京言葉」の一つ

「しっぽり」は京言葉で「物静かで上品なさま」を表す言葉でもあります。所作や話し方が優雅で物腰が柔らかく、見ていて心が落ち着くようなさまを指す言葉です。

口語として存在する「しっぽり」と意味の上では近いものの、直接的な関連はよくわかっていません。しかし、京言葉の「しっぽり」は雅の精神を残した美しい言葉であることは間違いなさそうです。

京言葉「しっぽり」を使った会話文

京言葉「しっぽり」を使った会話文を挙げてみます。

  • お隣のお嬢さんは、しっぽりしていはるなあ。
  • しっぽりとして、ほんまに素敵な会長さんやわあ。
  • 今晩は都会の喧騒を忘れて、しっぽりといきしょ。

「しっぽり」の英語表現とは?

英語で表現するなら「little by little」など

「しっぽり」は日本独自の言い回しであるため、他の言語に訳すことはできませんが、英語なら「little by little(少しずつゆっくりと)」「soaked by drizzle(小雨に濡れた)」などと表現してもよいかもしれません。

まとめ

「しっぽり」は「しっとりと全体的に濡れるさま」「男女の愛情が細かいさま(距離が静かに縮まるさま)」また「情にひたり物思いにふけるようす」を指す言葉です。

職場では同僚や上司に「今日はしっぽり行きますか?」とお酒を誘うこともあると思いますが、誤解を招かないように、異性や誘う相手には気を付けましょう。