「烏の行水」(カラスの行水)という言葉がありますが、その意味を正しく理解している方はいがいと少ないかもしれません。今回は、「烏の行水」について、意味と由来、使い方を例文も交えながら詳しく解説していきます。得意先や上司との付き合いでこの言葉が出てくるかもしれないので、しっかりと確認しておきましょう。
「烏の行水」の意味や読み方とは?
「烏の行水」の意味は”入浴時間が短いこと”
「烏の行水」の意味は、”入浴時間が短いこと”です。場合によっては「よく洗わず風呂から出てしまう」のようなネガティブな印象で使われることもあります。そのため使い方には十分注意が必要です。
「烏の行水」の読み方は”からすのぎょうずい”
「烏の行水」の読み方は、”からすのぎょうずい”です。漢字の作りが非常に似ていることもあり、1本画数の少ない「烏(からす)」を「鳥(とり)」と読んでいるケースが非常に多くあります。「鳥(とり)の行水」という言葉は辞書上では存在しないので、間違って使わないようにしましょう。
「烏の行水」の由来とは?
由来は「カラスの水浴び」
街中でよく見かけるカラスは、ゴミを漁っていたりと汚いイメージを持たれがちな鳥です。しかし実は綺麗好きで、羽やくちばしについたゴミや汚れを落とすために水浴びの習慣があります。
カラスの水浴びを一度は見たことがあると思いますが、人間と比べて非常に短いですよね?そんなカラスの水浴びの姿が由来となり使われるようになった言葉が「烏の行水」です。
「烏の行水」の使い方と例文とは?
「烏の行水」は入浴時間の短さを伝えたいときに使う
「鳥の行水」は入浴時間の短さを伝えたいときや、お風呂が長い相手に対し“ののしる”場合に使います。冗談が通じる間柄で使う分にはとくに問題はありませんが、そうではない相手に対しては不快な思いをさせてしまう場合があるので気をつけましょう。
「烏の行水」を使った例文
「烏の行水」を使った例文をご紹介しましょう。
●「父は“烏の行水”なので温泉に行っても楽しめない」
●「お風呂嫌いの息子は“烏の行水”なので、体をしっかり洗っているのかいつも心配だ」
●「体の疲れを取るためにも、“烏の行水”はやめてゆっくりと湯船につかろうと思う」
●「去年は水不足で、夏はずっと“烏の行水”だった」
「烏の行水」の類語と対義語とは?
「烏の行水」の類義語は”ひと風呂”
ひと風呂(ひとふろ・ひとっぷろ)
「ひと風呂」には2つの意味合いがあります。
1つ目は、「さっとお風呂に入る」のような入浴の短さ・簡素な入浴を表しています。「烏の行水」の類義語はこちらの意味合いです。2つ目には、「お風呂に入ってくる」と単純に入浴行為を表しています。こちらの場合、入浴時間が長い可能性もあります。
●「今のうちにひと風呂浴びてくる」
●「ひと風呂浴びに近くの銭湯に行ってくる」
「烏の行水」の対義語・反対語は”腰抜け風呂・垢も身の内”
腰抜け風呂(こしぬけぶろ)
「腰抜け風呂」は、入浴が長いことを例えて言う言葉です。相手をののしるときに使うことが多く、少し嫌みが込められています。
●「姉は“腰抜け風呂”だから先に入りたい」
●「兄弟なのに私は烏の行水、弟は“腰抜け風呂”と真逆である」
垢も身の内(あかもみのうち)
「身体の一部である垢を、長風呂してむやみに落とすものではない」と冷やかしで言う言葉です。「腰抜け風呂」よりもおだやかな表現ですが、やはり言われて嬉しい言葉ではありません。
●「“垢も身の内”と言われたので長風呂をやめた」
●「“垢も身の内”という言葉を言い訳に、私は毎日お風呂に入らない」
「スズメの行水」は同じ意味?
「スズメの行水」は間違って使っているケース
「烏の行水」に似た「スズメの行水」という言葉を聞いたことはありませんか?こちらは「烏の行水」を間違って使っているケースで、辞書には載っていません。ただ正しくないと分かってわざと使っている場合もあるので、「間違っていますよ」と指摘するのは少し考えた方がいいかもしれません。
スズメはカラスよりも水浴びの時間が短く、入浴時間の短さを強めて使ってくる方もまれにいます。思い当たる節のある方は、まず自分の入浴時間を見直してみるといいかもしれませんね。
「烏の行水」の英語表現とは?
「烏の行水」は英語で「quick bath」「short bath」など
入浴の短さを表すには「quick=早い」や「short=短い」という単語に、お風呂の意味を表す「bath」を組み合わせて使いましょう。また面白い表現として、「ちょっと浸す」という意味を持つ「dip」を使って「quick dip」と表現することもできます。
英語表現「烏の行水」の例文
英語で「烏の行水」を表現したいときは、以下の例文を参考に使ってみましょう。
●” His bath is always just a quick dip in the tub.”
「彼のお風呂はいつも“烏の行水”だ」
●” Your bath was like a quick bath.”
「あなたのお風呂ってまるで“烏の行水”ね」
まとめ
「烏の行水」(からすのぎょうずい)は、泊りがけ出張や温泉付きゴルフなどのお付き合いで出てくる場合があります。ネガティブな意味も含まれる言葉ですので、意味を知らず相手を怒らせないためにも、ビジネス用語の1つとして覚えておきましょう。