「拙速」の意味とは?使い方や類語・対義語を例文つきで解説

「拙速」という言葉を使ったことはありますか?ビジネス文書で記載されており、漢字でなんとなく意味を判断している…という方も多いかも。今回はこの「拙速」についての解説です。「拙速」の使い方や類語に反対語などを知っておけば、ここぞというときに絶妙な表現ができます。この機会に「拙速」を語彙のレパートリーに入れておきましょう。

「拙速」の意味と読み方

意味は「充分な内容ではないが、速く仕上がる」

「拙速」とは、「充分な内容ではないが、速く仕上がる」という意味です。

「拙速」という言葉は、状況や人によっては「良い意味」にも「悪い意味」にも取ることができます。そのため「拙速」という言葉だけでは、良い意味で言っているのか悪い意味で言っているのかは判断することができません。

「拙速」の「拙」の部分を相手が重く受け止めれば「もう少し時間をかけても良いから、充分に仕上げたものを用意して欲しい」と考えますし、「速」の部分に重点を置けば「精度はこれから上げて行けば良いのだから、速く仕上がったことは良かった」と考えるでしょう。

「拙速」の読み方は「せっそく」

「拙速」は「せっそく」と読みます。「充分な内容ではないが、速く仕上がる」という意味です。ビジネスの場では、提案書や企画書など時間をかけようと思えばいくらでもかけることができるものを、改善の余地があることを承知の上で、敢えて速い段階で一度仕上げて提出することを指しています。

「拙速」という言葉は「拙」と「速」で構成されていますが、「拙」の意味を正しく理解することが大切です。「拙」は「拙い(まずい)」「拙い(つたない)」という意味を持っています。「上出来には届かない拙い(まずい)仕上がり」「上手な人には及ばない拙い(つたない)できばえ」を表すのが「拙」です。

「拙」の意味を踏まえた上で、予定や一般的な速度よりも「速く」仕上げることを「拙速」といいます。

「拙速」の使い方

「拙速に過ぎる」は忠告の意味

たとえば、自分以外の人が仕上げたものが「拙速」であると感じ、もう少し考えてみて欲しいと感じることがあります。そんなときに使えるのが「拙速に過ぎる」という表現です。

「拙速に過ぎる」という言葉では、仕上がったものの内容を否定しているのではなく、もう少し時間をかけることでさらに良くなる、またはタイミングが合う、ということを相手に伝えられます。

これは「速」に重きを置いている受け止め方の場合であり、内容についての否定ではないので、相手を必要以上に萎縮させない忠告として使われることが多いでしょう。

「拙速」を自分に使う場合は言葉を添える

自分の作成物を「拙速」に提出するときには、「拙速ではございますが、少しでも速く一度お目通しいただいた方が良いと思いまして」など、なぜ拙い状態で仕上げたのかの説明を加えるなどの配慮をすると誤解を招きにくくなります。

ビジネスの場では「完全でなくても早い段階で一度見せる」ということを良しとされることは多いでしょう。しかし、「拙速」とだけ言ってしまうと、提出するものが「拙い」ということまでを正当化するような印象を持たれることがあります。状況や相手によって「拙速」に添える言葉を選ぶと良いでしょう。

「拙速」の類語と対義語

「拙速」の類語は「速断」「拙劣」

「拙速」と似た意味を持つ言葉はたくさんあります。しかし、「拙さ」と「速さ」を兼ね備えた言葉はほとんどありません。ニュアンスが近い類語は以下の二つです。

 ・速断
「速断」は「素早く決断する」という意味もありますが、「早まって、軽率な判断をする」という意味も持っています。「速断かとは思ったのですが」などと使うことで「拙速」と同じように、自身が速さを重視して行ったという心情を伝えることができます。

 ・拙劣(せつれつ)
「拙劣」は「下手で見劣りがする」という意味です。「拙劣な文章ではございますが、ご確認いただければ幸いです」などとすることで「内容には自信がありませんが」というニュアンスを伝えることができます。

「拙速」の対義語・反対語は「巧遅」

「拙速」の反対語は「巧みであるが、仕上がりが遅い」という意味の「巧遅(こうち)」です。ここでいう「巧み(たくみ)」には「熟考されている」「隅々まで配慮ができている」というニュアンスがあります。

「拙速」を使った言葉

「巧遅拙速」(巧遅は拙速に如かず)の意味

「拙速」という言葉を熟語やことわざの中で聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。「拙速」を使った言葉には有名なものがあります。

「巧遅は拙速に如かず(しかず)」ということわざを四字熟語にしたものを「巧遅拙速(こうちせっそく)」といいます。これは中国の歴史書が元となっていると言われており、意味としては「上手く巧みだが仕上がりが遅いよりも、出来は拙いが仕上がりが速いほうが良い」というものです。

この言葉の背景では、「巧遅」よりも「拙速」が優れているとされており、その考えが現代のビジネスシーンにも引き継がれている傾向があります。

「拙速」を使った例文

  • 「私は巧遅拙速を信条に仕事をしております。至らない点が多々あるかと思いますので、遠慮なくご指摘ください。」
  • 「アイデアはとてもおもしろいと思うが、拙速であることも否めない。もう少し時間をかけてみてはどうだろうか?」
  • 「今回の件では、私も含めて全体的に拙速であったように感じています。今一度各自で検討してみてはどうでしょうか?」

まとめ

「拙速」は日常で頻繁に使われる言葉ではないかもしれません。しかし、意味を知ってみると「そういう状況って経験があるな」と思う人は多いのではないでしょうか?ビジネスの場では、速かろう、悪かろうでは通用しませんが、改善を前提に速さを優先するという手法は好まれやすいものです。必要に応じて「拙速」を意識できると良いですね。