誤用が多い「なし崩し」の意味とは?言い換え表現と正しい使い方

なぜかネガティブな意味合いで使われることの多い「なし崩し」ですが、本来は「少しずつ進んでいく」といういい意味の言葉です。

そんな誤用も多い「なし崩し」の意味を解説して、正しい使い方や例文を紹介します。

「なし崩し」の意味や読み方とは?

「なし崩し」の意味①”借金を少しずつ返却すること”

「なし崩し」の意味は、”借金を少しずつ返却すること”です。元々は、借金返済により、借金が少しずつ減っていくという状態を表した表現です。

例文:
「借金をなし崩しにする」
「友人から借りていた借金をなし崩しに返済する」

「なし崩し」の意味②”物事を少しずつ片づける”

①の意味から派生した意味が、「物事を少しずつ片づけること」や「物事を少しずつ行っていくこと」です。

例文:
「たくさんの書類をなし崩しで片づける」
「たくさんの洗い物をなし崩しに洗っていく」

「なし崩し」の意味③”勢いのまま物事が進む”

更に転じて「物事の持つ勢いのまま状況が進んでいくこと」や「既成事実が少しずつ積み重なり物事が進んでいくこと」という意味でも使われるようになりました。

この「勢いのまま物事が進む」という意味は、一般的にもよく使われています。

例文:
「企業計画がなし崩しに変更される」
「部長の仕事を手伝っていただけで、なし崩し的に次期部長候補になった」

「なし崩し」の読み方は”なしくずし”

「済し崩し」とも書く「なし崩し」の読み方は、「なしくずし」です。

そしてその意味は3つあります。

「なし崩し」の使い方と例文とは?

「なし崩し」は”少しずつ前に進む”という意味で使う

「借金の返済を少しずつすること」や「物事が少しずつ行うこと」など、取り扱われる事柄が違うものの「なし崩し」とは少しずつ物事が前へと進むことを表した表現です。

例文:
「本来の事業計画とは違うものの、このままなし崩しで進めていこう」
「なし崩しで進めていった結果、予想外の結果になった」

誤用に注意!「なし崩し」にネガティブな意味はない!

「なし崩し」が「悪い状況はその場の悪い雰囲気のまま、なあなあの状態で悪い方に進んで行く」といった意味で使われることがあります。

例えば「会長の挨拶でパーティの雰囲気が悪くなり、結局そのままなし崩し的にパーティが終わった」のようにです。

しかしこれは誤用で「なし崩し」には「うやむやにする」や「曖昧にすること」、または「どんどん悪い方に進んでいく」といったネガティブな意味合いはありません。

また「なし崩しでお願い」のように「なかったことにする」という本来の意味からはかけ離れた使い方を聞くこともありますが、これも間違った使い方です。

つまり「なし崩し」は、物事が少しずつ進んでいく状態を表しています。いいか悪いかといった主観的な意味合いは含まれていません。

「なし崩し」は物事が収束していく状況に使われる表現

また「なし崩し」は物事が収束していく過程において使われます。曖昧な状況が少しずつ修正されて、落ち着くべきところに落ち着いたといった状況に使用されるのが「なし崩し」の正しい語法です。

例文:
「新しい事業計画は、なし崩しに進んだ。」
「混沌とした状態だったものの、なし崩し的に事態が安定した」

「なし崩し」の類語や言い換え表現とは?

類語①「少しずつ」「じわじわと」

「なし崩し」の物事が少しずつ進んでいくという意味から、「少しずつ」や「じわじわと」または「徐々に」と言い換えることができます。

類語②「着々と」「着実に」「一歩一歩」

また少しずつ進んでいくさまが確実な状態ならば、「着々と」や「着実に」といった表現にも言い換えることができます。

また「一歩一歩」ならば少しずつ目標に近づいていく様子が伝えられます。

「なし崩し」を使った表現とは?

「なし崩し的に○○する」

物事がその勢いのまま少しずつ進んでいくさまを「なし崩し的」と形容して、「なし崩し的に○○する」のように使われます。

例文:
「なし崩し的にこの問題が風化してしまう前に、議題に挙げるべきだ」
「なし崩し的に進めようとするAさんのやり方はあまり好きじゃない」
「私は部長になりたかったわけではないが、なし崩し的になってしまった」

「なし崩す」

「なし崩し」を動詞化して「なし崩す」という言い方もできます。ただし「なし崩す」は借金の返済という意味でのみ使われます。

例文:「地道に稼いで借金をなし崩した」

「なし崩し償却」

「なし崩し償却」とは経理用語のひとつで、営業権利や施設権利などの会社の収益を確保した無形の資産である無形固定資産に対して適用される借金返済方法です。

無形固定資産の償却は、原価配分の原則により、資産を取得したときの原価のまま償却されることを意味します。つまり、資産が使用される間についた付加価値や最終価格などは考慮されません。

このような償却方法を「なし崩し償却」といいます。

まとめ

「なし崩し」は元々の意味である「借金を少しずつ返済する」よりも、そこから派生した「物事を片付ける」や「勢いに乗せて物事を進める」という意味の方がよく使われるようになりました。一方「あいまいに」や「うやむやにする」といった意味で誤用も多いため、正しい意味で使うように心がけましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。