「灰燼(かいじん)」は、「灰と燃え殻」を意味する言葉です。慣用句としては「灰燼に帰す」という言い回しでよく使います。
今回はそんな「灰燼」について、意味や例文、類語を紹介します。似た言葉の「灰塵」の違いも含めて解説します。
「灰燼」とは?
「灰燼」の意味は”灰と燃え殻”
「灰燼」の意味は、”灰と燃え殻”です。形のあるものが灰と燃え殻になってしまった状態(跡形もなく焼けた)、また比喩的に“形のないものを失ってしまった”ことを表します。
「灰燼」は単体でというより、「灰燼に帰す」や「灰燼と化す」など慣用句で使うことが多いです。かしこまった表現なので、口語的に使われることはほとんどありません。
「灰燼」の読み方は”かいじん”
「灰燼」の読み方は、”かいじん・かいしん”です。「灰」を「はい」と訓読みする「はいじん」と間違われることがあるので注意が必要です。「かいしん」という読み方は古い表現で、現在ではほとんど「かいじん」と読まれています。
「灰燼」と「灰塵」は使い方が異なる
「灰塵(かいじん)」の読み方は「灰燼(かいじん)」と同じです。意味も非常に似ていて、“灰と塵(ちり)のように跡形もなく砕けてしまった状態”を意味します。
「灰塵」の場合は「灰燼」と違い、「取るに足らないもの」や「価値がないもの」と比喩的な表現で使う方が一般的です。
「灰燼に帰す」の意味と使い方とは?
使い方①「灰燼に帰す」の意味は”すべて燃え尽きてしまうこと”
「灰燼と帰す(かいじんときす)」は、“原形をとどめないほど跡形もなく焼けてしまった状態”を意味します。単語「灰燼」と同じように比喩表現はなく、焼けたその状態そのままを表しています。
- この前の火災で歴史的な建物が灰燼に帰した
- タバコのポイ捨てが原因でアパートが灰燼に帰した
- 木造の建物が多かった時代は、火災のたびに家が灰燼に帰した
使い方②「灰燼と化す」の意味は”物事が完全に消滅すること”
「灰燼と化す(かいじんとかす)」は、今まで物事に向けてたきた努力や苦労が完全に消滅する、つまり“台無し”になってしまうことを意味します。単語「灰燼」で使うときと違い、比喩表現でも使われます。
- 灰燼と化すことを恐れていては前に進めない
- たった一夜にして、準備していた舞台が灰燼と化した
- 昔この街は灰燼と化したが、今ではこんなに発展している
「灰燼」の類語とは?
「灰燼」の類語は”焦土”
「焦土(しょうど)」は、建物や草木などがすっかり焼けて黒くなった土地「焼け野原」を意味します。「焦土と化す」という慣用句で使うことが多く、その意味は「灰燼」とほぼ同じの「すべてが焼け落ちて跡形もない状態」です。
- このまま放っておけば、この土地は焦土と化すだろう
「水泡に帰す」は”努力が泡のよう消える”
「水泡に帰す(すいほうにきす)」は、水の泡のように消えてしまう状態を表すことから「せっかくの努力が無駄になってしまうこと」を意味します。「水泡に帰す」は“消滅する”という意味合いを持つ「灰燼と化す」と同じように使います。
- ささいなことで今までの苦労が水泡に帰すこともある
「灰燼」の英語表現とは?
「灰燼」の英語表現は”ash”
「灰燼」の英語表現は、“灰”や“燃え殻”を意味する「ash」が適切です。名詞「ash」を複数系の「ashes」にすることで「灰燼」と翻訳されます。慣用句「灰燼に帰す」と使いたい場合は、“ある状態に変える”という意味を持つ動詞「reduce」を使い「to be reduced to ashes」と表現します。
英語表現「灰燼(ash)」の例文
英語表現「灰燼(ash)」を使った例文をご紹介しましょう。
●”The house was reduced to ashes.”
「家が灰燼と帰した」
●”It was from the ashes that the present Japan rose.”
「現在の日本は灰燼の中から立ち上がったのである」
●”The precious treasure is reduced to ashes.”
「大切な宝物が灰燼に帰す」
まとめ
「灰燼(かいじん)」は、単語で使うか慣用句として使うかによって若干ニュアンスが変わってきます。“形があるもの”がなくなるのか、それとも“形のないもの”がなくなるのかによって使い分けましょう。
「灰燼」はかしこまった表現なので、日常的に使うことは少ないと思います。しかし、本を読んだり文章を書くときに登場することがあるので覚えておくと便利です。