「権謀術数」の意味や語源とは?使い方と類語も例文つきで解説

「権謀術数(けんぼうじゅっすう)」とは、人を巧みにあざむく策略を意味する四字熟語です。もともとは中国の儒学者「朱子」による著書に記されていました。

そこで今回は「権謀術数」の意味と語源を解説。例文とその使い方、類語・英語表現も紹介します。また「権謀術数主義」のマキャヴェリズムにも触れていきます。

「権謀術数」の意味とは?

「権謀術数」の意味は「人を巧みにあざむく策略」

「権謀術数」の読み方は「けんぼうじゅっすう」です。意味は「人を巧みにあざむく策略」となります。

ビジネスの世界でも、自分の発言力や地位を高めるために、あらゆる計略・策略を練って他者を陥れたり排除しようとするといった世知辛い状況はあるものです。このような状況で「権謀術数」という言葉が使われます。

また「権謀術数」は「権数(けんすう)」と略されることもあります。

語源は中国の儒学者・朱子による『大学章句序』

「権謀術数」という言葉は、中国の南宋出身で12世紀に活躍した儒学者「朱子」が著した『大学章句序』が出典です。「権」は権力、「謀」は謀略、「術」は技法、そして「数」は計算を意味していて、「権謀」で「その場に応じた策略」、「術数」で「はかりごと」という意味になります。

『大学章句序』はなにも人を貶めるために書かれた本ではなくて、人は思いやりをもち、質素にほどよいバランスの中で善し悪しを判断できるようになるべきだ、という生きるための訓示が述べられた本です。

そんな中でも「権謀術数」という言葉が使われたのは、本来の人の生き方の悪い例のひとつとして挙げられたのです。

「権謀術数」の使い方と例文

「権謀術数」は利益のためならばどんな術策も問わない

「権謀術数」とは自分が利益のためなら、決して倫理的には正しいとは言えない術策でさえも行って、勝利を得ようとする人の行為を説明するときに使います。

よく使う表現には「権謀術数を弄する(ろうする)」があります。単に策を弄する(=思うままに操る)のではなく、「権謀術数」と言うことで、その方法が「きれいごとばかりではない」といった状況を表すことができます。

「権謀術数」を使った例文

  • 「部長は権謀術数にたけた人。だからあそこまでこんなに短期間で昇進したんだ」
  • 「どうも専務は次期社長の座を巡って、権謀術数を駆使して勢力を拡大しようとしているらしい」
  • 「きれいごとばかり言ってられない。勝つためにはスポーツの世界でも権謀術数は必須だ」

「権謀術数」の類語

「権謀術数」と「権謀術策」は同じ意味

  • 権謀術策(けんぼうじゅっさく)

権謀術数に似ている権謀術策は同じ意味で、違いはありません。どちらも「自分の利益のために他人をだまし咎める策略のこと」です。

「手練手管」「奸智術策」も類語

  • 手練手管(てれんてくだ)

「手練」と「手管」という同義の言葉を二つ並べて、「偽りごまかすこと」という意味です。

例:「手練手管にたけた人」

  • 奸智術策(かんちじゅっさく)

「奸智」とは「よこしまな知恵」という意味で、「奸智術策」と言えば「よこしまな知恵を使った策略」という意味になります。

「権謀術数主義」のマキャヴェリズムとは?

マキャヴェリズムとは「結果さえよければ正当化されること」

権謀術数をひとつの主張としてとらえたのが、マキャヴェリズム(Machiavellianism)です。マキアベリズムとも訳されることもあり、権謀術数主義といいます。

マキャヴェリズムとは「どんなに倫理的に正しくない非道徳的な行為でも、結果さえよければ正当化させること」という意味です。自分の利益のためならば何をしてもいいとも解釈される考え方です。

思想家N.マキャヴェリが著した『君主論』の中で、15~16世紀のイタリアで国を統一するために、君主は政治目的のためならばどんなに反道徳的な方策を取ったとしても許されると説いたことから発しました。

「マキャヴェリスト」とは権謀術数主義支持者のこと

マキャヴェリズムを推奨する人やその行為をする者は、日本語で「マキャヴェリスト」、英語では「マキャヴェリアン」(Machiavellian)と呼ばれます。

「権謀術数」の英語表現は?

英語で言うと「scheming」「trickery」

英語で「権謀術数」は「scheming」または「trickery」で、「陰謀」や「策略」を意味します。

2つの語の違いは「scheming」は名詞として使われるだけでなく、「ずるい」といった形容詞として使うこともできて、形式ばった表現です。一方「trickery」の方は名詞であり、書き言葉として使われます。

  • “a scheming politician”
    「策謀にたけた政治家」
  • “He has been plotting scheming to get the property from the rich.”
    「彼はその金持ちから財産を奪おうと陰謀をくわたてていた」
  • “He stops the trickery.”
    「彼がその策略を止めた」

まとめ

「権謀術数」とは「自分の利益を得るためには行わる策略」という意味ですが、マキャヴェリズムにも通じ、倫理的に不道徳であっても結果さえよければ構わないという悪いことでさえも肯定的に受け止めるなニュアンスが含まれています。しかし実際には、権謀術数な策略とは決してフェアなものではないということを承知しておきましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。