「自家撞着」の意味とは?類語「自己矛盾」「撞着」との違いも

「自家撞着(じかどうちゃく)」という四字熟語を「自己矛盾」と同じ意味で使うことがあります。両者の使い方に違いはあるのでしょうか?この記事では「自家撞着」について解説します。類語と例文や英語も紹介しています。

「自家撞着」の意味と由来とは?

「自家撞着」の意味は”言動のつじつまが合わないこと”

四字熟語「自家撞着」の意味は、”一人の人間の言動が一致せず食い違うこと・つじつまが合わないこと”です。

「自家」とは「自分自身」という意味で、「撞着」とは「前に言ったことと後に言うことが食い違うこと、つじつまが合わないこと」という意味です。「撞着する」というように単体でも使われます。

「自家撞着」の由来・語源は禅の公案集

「自家撞着」の由来は、14世紀の元(中国の王朝)において、禅宗の公案の集大成として成立した『禅林類聚』(ぜんりんるいじゅう)に書かれた公案です。「回頭撞著自家底」という漢文が語源です。

「自家撞着」の類語や「自己矛盾」との違いとは?

「自家撞着」には同じ意味の四字熟語が複数あります。「自家撞着」の類語や、「自己矛盾」と「自己撞着」との違いを説明します。

類語①「自己撞着」「矛盾撞着」

「撞着」の語が入る四字熟語に「自己撞着」「矛盾撞着」がありますが、どちらも「自家撞着」と同じ意味です。

「撞着」ではなく「撲滅」の語が入る「自家撲滅(じかぼくめつ)」も、自分を滅ぼすというたとえで「自家撞着」と同じ意味を持ちます。

類語②「自己矛盾」

「自己矛盾」も「自家撞着」と同じ意味の四字熟語です。「自己」と「自家」はおなじく「自分自身」を意味し、「矛盾」と「撞着」はおなじく「つじつまの合わないこと」という意味です。

「自己矛盾」に比べて、「自家撞着」は一般的に多く用いられる言葉ではないといえます。「自家撞着」は、聞きなれないために難しそうな言葉という印象があるため、矛盾を強く指摘したい時などに、あえて効果的に使うことができます。

「撞着」「矛盾」のみでも同じ意味として使える

「撞着」「矛盾」はどちらも「前後が矛盾すること・つじつまが合わないこと」という意味のため、「自家撞着」と同じ意味で使うことができます。例えば、一人の人の前後の言動が一致しない時に「撞着している」「矛盾している」と指摘することができます。

しかし「自家」がつくことで「一人の人」「自分自身」という、矛盾している対象の範囲を特定することになるため、矛盾に陥っている個人の状況をよりいっそう強めたい時には「自家撞着」や「自己矛盾」の四字熟語を使った方が効果的だといえます。

「言語道断」は類語ではない

「自家撞着」は、相手の話しの前後が矛盾している時に、相手を非難する時に使うこともあるため、「言語道断(ごんごどうだん)」と同じ意味のようにとらえられることがありますが、両者は類語ではありません。

「言語道断」とは、もともとは奥深い真理は言葉で説明しきれないという意味の仏教用語でしたが、転じて「言葉で言い表せないほどひどい」という意味で使われます。相手の話しがあまりにも矛盾していてひどい、ということを表したい時は、「あなたの話しは自家撞着に陥っていて、言語道断だ」というように別々の意味合いで使います。

「自家撞着」の使い方と例文とは?

「自家撞着」の使い方と例文を紹介します。先に紹介した類語でも同じように使えます。ビジネスシーンにおいては、「自家撞着」は自己の内部で論理の矛盾が起った時に使うことができます。

「自家撞着に陥る」の例文

「自家撞着に陥る」という言い回しで使うことができます。

  • 議論が進むと、彼の主張は自家撞着に陥り、収拾がつかなくなった。
  • 意見をまとめきれず自家撞着に陥り、レポートが書けなくなった。
  • 物語のはじめと終わりでは状況に矛盾があり、作家は自家撞着に陥っていたようだ。

「自家撞着をきたす」の例文

「自家撞着をきたす」という言い回しでも使えます。「きたす」とは、「結果として招く」という意味です。

  • 無理やり結論を出そうすると、自家撞着をきたすだろう。
  • Aさんの案はBさんの案との整合性をはかろうとするあまり、自家撞着をきたしている。
  • 自家撞着をきたさないように第三者の意見を聞くべきだ。

「自家撞着」の英語表現とは?

英語では「You contradict yourself.」

「自家撞着」の英語表現を紹介します。

  • Your argument is self-contradictory. 「あなたの議論は自家撞着(自己矛盾)だ」
  • You contradict yourself. 「あなたは自己矛盾(自家撞着)に陥っている」

まとめ

「自家撞着」は「自己矛盾」と同じく、「言動のつじつまが合わないこと」という意味です。「撞着」「矛盾」のみでも同じ意味で使うことができますが、特に「一人の人」の中で論理的に整合性がない場合に、それを強調する目的で四字熟語を使うことができます。

ビジネスシーンにおいては、矛盾に陥った主張をあえて鋭く指摘することで、その状況を打開したい時などに効果的に使える言葉です。特に印象強く言葉を使いたい時は、よく聞く言葉の「自己矛盾」よりも、あまり耳にしない「自家撞着」を使うと効果的かもしれません。