「蓋然性」とは?具体的な例文や類語と対義語の「必然性」も紹介

「蓋然性」という言葉を正しく説明することができますか?何となく「実現性」などの言葉に置き換えているという方は多いかもしれません。今回は「蓋然性」の意味や読み方、由来や類語・対義語の「必然性」などについて解説します。投資や特許、会計のシーンでの具体的な例文もご紹介するのでぜひ参考にしてください。

「蓋然性」の意味や読み方とは?

「蓋然性」の意味は「実現性が当然のように高い」

「蓋然性」の意味は、“実現性が当然のように高い”です。簡単に表現すると「確率」「可能性」という意味に置き換えることができます。「蓋然性」とは、そのものごとが実現する割合のことです。

確率や可能性にはさまざまなものがあります。たとえば「明日雨が降る確率(可能性)」は、天気予報などで0%~100%まであります。しかし、この0%~100%のどれでも蓋然性というわけではありません

「蓋然性」とは主に「そうなる確率や可能性が当然のように高いこと」について使われる言葉です。先の例で言えば、前日の夜の時点で大雨が降っていて、雲も厚く降りやむ気配が全くしない場合などに「明日雨が降る蓋然性は高い」と使います。

反対にそのものごとがどうなるか見当がつかない、あるいはどちらかと言えばこうなるであろう、という程度の確率や可能性の場合には「蓋然性」とは言いません。

「蓋然性」の読み方は”がいぜんせい”

「蓋然性」の読み方は、“がいぜんせい”です。「蓋然性」は、目にすることはあっても読み方が難しく、何と読めば良いかわからないという方も多いかもしれません。

「蓋然性」の「蓋」は音読みで「ふた」とも読みますが、この場合は訓読みの「がい」です。

「蓋然性」の由来とは?

「蓋然性」の由来は中国語の”蓋し(けだし)”

「蓋然性」という言葉が「そうなる確率や可能性が当然のように高いこと」に使われるということは、言葉の由来で判断することができます。

「蓋然性」は元は中国語だったと言われています。中国語で「蓋」は日本語にすると「けだし」と読める漢字で、現代語にすると「恐らく」「たぶん」という意味です。そして「蓋」を言葉の頭に付けると、後に続く言葉を「推測する」という意味になります。

「蓋然性」の「然」は「もっとも」「当然」という意味なので、「蓋然」で「恐らく当然に」と解釈することができます。つまり「蓋然性」は「恐らく当然に推測される割合」という意味で、中国語の「蓋し」の意味をそのまま持っている言葉です。

「蓋然性」の使い方と具体的な例文とは?

「蓋然性」は高い・低いで使う

「蓋然性」という言葉は、最後に「性」という「物事の性質や傾向」を示す文字が使われています。「蓋然性」の他にも「可能性」や「必然性」「積極性」などさまざまな言葉に使われている文字です。

この「性」が最後に付く言葉の多くは「高い・低い」で表されます。「可能性が高い・低い」「必然性が高い・低い」「積極性が高い・低い」などです。そのため、「蓋然性」も「蓋然性が高い」「蓋然性が低い」と、その割合を表します。「強い・弱い」「多い・少ない」などではないことに注意しておきましょう。

  • 「新商品は既にSNS等でかなり話題になっており、ヒットの蓋然性は極めて高いと言えます」
  • 「社内アンケートによると、社員が自社に不満を持っている蓋然性は高いようです」
  • 「今回の指導だけで彼が態度を改める蓋然性は低いと言えるでしょう」

「蓋然性合理主義」とは確率に基づいた投資行動

「蓋然性」という言葉は、日常のさまざまな場面で使われています。「蓋然性」という単語として使われることが大半ですが、「蓋然性合理主義」という言葉もあるので、一緒に覚えておくと良いでしょう。

「蓋然性合理主義」とは、株式投資関連でも使われる言葉で、「確率に基づいた考え方を持つ」という姿勢のことです。自分の想いよりも、損得に重きを置く主義と言い変えることもできます。

しかし、「蓋然性合理主義」は特にネガティブな意味に限った言葉ということでもなく、株式投資などでは「確率に基づいた合理的な判断をする」という意味で使われることもあります。

  • 「確かに利益は大事だが、蓋然性合理主義だけというのも寂しいものだ」
  • 「蓋然性合理主義は必ずしも悪いことだけではないだろう」
  • 「彼は蓋然性合理主義として有名だから、こういう案には乗ってこないと思う」

「特許権侵害訴訟で使う蓋然性」は侵害された確率の高さ

「蓋然性」という言葉は、法律用語としても頻繁に使われています。特に、特許権侵害訴訟では、特許権侵害の被害立証に必要な4要件という4つの要素があります。その4つの中に含まれているのが「蓋然性」です。

これは、客観的に見た人が、特許権を侵害されて訴えを起こしている側が、相手方に特許を侵害されているということを当然に判断できる、という意味です。

このように、訴訟で使われる「蓋然性」には、当事者同士だけでなく、傍から見ても、特許権の侵害をされているということに納得できる要素が必要と言っています。

  • 「今回の訴訟では、蓋然性がキーとなる」
  • 「客観的な蓋然性がなければ、この訴訟には勝てない」
  • 「要件としての蓋然性は明らかだ、後はこれを形にする必要がある」

「会計で使う蓋然性」は認識要件における蓋然性要件

企業会計の世界でも「蓋然性」という言葉が使われます。会計で使われる「蓋然性」は、範囲が広く、一概には言えませんが、主には「引当金に関する認識要件」の中にある「蓋然性要件」のことです。

「蓋然性要件」とは、その要件が発生する確率が高い要件のことです。反対に発生の確率が低い要件のことは「偶発事象」と言われます。

  • 「企業会計では、発生の可能性が高い蓋然性要件が求められている」
  • 「債務がある場合は資源流出の蓋然性に限らず負債とするべきだ」

「蓋然性」の類義語・同義語と対義語・反対語とは?

言い変えに使える「可能性」との違いは確率の高さ

「蓋然性」という言葉は、一般的には「可能性」「確率」という言葉に置き換えて使われています。しかし、先に説明したように、「蓋然性」は「当然のように高い確率」について使う言葉です。

一方「可能性」は、そのものごとが持つ確率が0であっても100であっても「可能性」という言葉で表すことができます。そのため「わずかな可能性」「大きな可能性」など、可能性を大小で表すこともできますし、蓋然性と同じように「高い・低い」で表すこともできます。

蓋然性の対義語は「必然性」

「蓋然性」という言葉の反対の意味を持つ対義語は、「必ずそうなる」という意味を持つ言葉です。一見「そうなる可能性が低い」という意味の言葉が反対語として使われそうにも見えますが、それは「可能性が低い」などの言葉でカバーできます。

「蓋然性」の反対語は「必然性」です。「必然性」とは「必ずそうなる」「そうなることが決まっている」という意味の言葉で、ものごとの未来が決まっていることを表します。

「朝が来て、昼が来て、夜が来たら次はまた朝」という自然の摂理も「必然性」ですし、「1日10時間の猛勉強をした上で試験に合格した」など、ものごとの道理として「そうなるだろう」と思えることも「必然性」です。

「蓋然性」の英語表現とは?

「蓋然性が高い」は英語で”be highly probable”

「蓋然性」は英語で「probability(名詞)」と言います。そのため、「蓋然性が高い」という表現は、形容詞の「probable」を使います。

「It is probable」で「それは十分にありえる(蓋然性が高い)」、「It is not probable」で「そんなことはありえない(蓋然性が低い)」と表現することができます。

まとめ

「蓋然性」という言葉は、使われている状況や雰囲気だけではなかなか本当の意味を知ることができない、難しい言葉です。しかし、一度理解してしまえば「蓋然性」が持つ「当然のように高い確率」というニュアンスをつかみやすくなります。ぜひこの機会に「蓋然性」という言葉を語彙に取り入れて、「これは蓋然性が高い」「これは蓋然性が低い」などとシンプルに使ってみるところから始めてみましょう。