「敬天愛人」の意味とは?西郷隆盛との関係や由来・類語も解説

「敬天愛人」と聞いてちょっと邪な考えを持った方がいるかもしれませんが、そうではありません。「敬天愛人」とは「天を敬い人を愛する」という意味で西郷隆盛が好んだ言葉であり、稲盛和夫も自著のタイトルに使っています。

そこで今回は「敬天愛人」の意味や由来、その使い方や類語、英語表現などを例文とともに解説します。

「敬天愛人」の意味と由来

「敬天愛人」の読み方と意味

「敬天愛人」とは「けいてんあいじん」と読み、「天を敬い人を愛する」という意味です。

「敬天」の「天」とは空というより、「大自然の力」や森羅万象のように「この世界にあるすべてのこと」、時には「神」のことだと解釈されます。

「敬天愛人」の由来

「敬天愛人」という言葉は、中国の清の時代の字典「康煕字典(こうきじてん)」(1716年成立)の編纂を命じた康煕帝が額に「敬天愛人」と書き、キリスト教に与えたのが初めて「敬天愛人」が使われた起源だとされています。

その後、日本では明治初期の啓蒙思想家であった中村正直がサミュエル・スマイルズの『自助論(ヘルプ・セルフ)』を翻訳・出版(1871年)したときに、「敬天愛人」を紹介しました。

「敬天愛人」の使い方と例文

座右の銘としての「敬天愛人」

「敬天愛人」という言葉は特に企業の経営者が座右の銘として使われることが多いようです。

「敬天愛人」の「天を敬い人を愛する」という考え方が、経営においても自己の利益追求のための経営ではなく、世のため人のためになされるべきだという考えと合致しているからでしょう。

例文:
「私の座右の銘は敬天愛人だ」

その意味を知りたいから使われる「敬天愛人」

座右の銘として「敬天愛人」が使われますが、「敬天愛人」の大変奥深い意味の言葉です。天を敬い人を愛するとはどういうことなのか、実感して理解するということはなかなか難しいと言えるでしょう。

そのためその意味を知りたいがために、この言葉が使われることがよくあります。

例文:
「敬天愛人という言葉の意味をもっと知りたいと思った」
「敬天愛人というどういう意味なのか。それを実行に移そうと思っても難しいのではないか」

「敬天愛人」は西郷隆盛が好んで使った四字熟語

「敬天愛人」を好んだ西郷隆盛

「敬天愛人」は西郷隆盛が好んだ言葉としても有名で、西郷は「敬天愛人」を学問の目的として述べました。

その西郷隆盛(1871-1877)とは、倒幕運動の指導者として薩長同盟や戊辰戦争に尽力し、大久保利通、木戸孝允とともに明治維新の三傑と呼ばれました。

「敬天愛人」の出典は『南洲遺訓』

その西郷は数々の心に残る言葉を発し人々を勇気づけたり励ましたのですが、そうした西郷の遺訓を戊辰戦争で西郷の恩情にあずかり感謝した旧庄内藩の人々がまとめたのが、『南洲遺訓』(なんしゅういくん)という書です。

その中の遺訓41条追加2条に、次のような文章があります。

道は天地自然の道なるゆえ、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己をもって終始せよ

この文章の意味は、「道は天地とともに自然に備わった道なのであって、学問の道は「敬天愛人」を目的として、終始一貫して自分に克つように努めなくてはいけない」ということです。

学問の目的としての「敬天愛人」

つまり学問を通してなにかを学ぶことの最終的な目的には「敬天愛人」という思想があり、その意味は「この世のすべての事象を尊いものとして賛美し敬うと同時に、人に対しても慈愛をもって接すること」だと説いています。

このように「敬天愛人」という信仰的な意味合いのある言葉を大切にしたことに西郷の人となりを感じますが、さらには「敬天愛人」を学問の目的として使ったことに驚きを隠せません。学問とは何かを学ぶことが目的ではなく自己修養の目標だとした西郷の考え方は、現代を生きる私たちにとっても教えられることの多い考え方ではないでしょうか。

「敬天愛人」の類語と英語表現

「敬天愛人」の類語は「敬天愛民(けいてんあいみん)」

「敬天愛人」ほどに一般的ではありませんが、「人」を「民」に代えて「敬天愛人」と同義として使われることがあります。

「敬天愛人」は英語で“Revere heaven, love people.”

「天を敬い人を愛する」という文を英訳すると、“Revere heaven, love people.”になります。

「revere」とは「崇拝する」という意味の動詞ですが、この代わりに「尊敬する」という意味の「respect」を使うこともできるでしょう。

また「天」という意味で「heaven」を使いましたが、その代わりに「神」を意味する「the Divine」が使われる場合もあります。この時の「Divine」は文中であっても頭文字は大文字です。

例:”Respect the Divine and Love People.”「敬天愛人」

まとめ

「敬天愛人」とは「天を敬い人を愛する」という意味です。「天」とは「空」という意味よりも「万物」や「大自然の力」を意味したり、時には「神」だとする場合もあります。人生の教訓ではなく学問の目的として「敬天愛人」を説くあたり、西郷隆盛の思慮深さが感じ取れます。