「肝に銘じる」の意味は?正しい漢字や使い方・類語と英語を紹介

「肝に銘じる」という言葉は、見聞きしたことがあっても詳しい意味や言葉の由来まではご存知でない方も多いのではないでしょうか。また、間違った漢字の使い方をしているケースも多く見受けられます。今回は、「肝に銘じる」の意味と正しい漢字を紹介します。また例文を用いた使い方や、類語と英語での表現もお伝えします。

「肝に銘じる」とは?

「肝に銘じる」の意味は”心に強く刻みこみ忘れないようにする”

「肝に銘じる」の意味は、“心に強く刻みこんで忘れないようにすること”です。「忘れる」の言葉が一切入っていない「肝に銘じる」の言葉が、なぜ「忘れない」ことを意味することになるのかは、「肝」と「銘じる」それぞれの言葉の意味に由来します。

「肝に銘じる」の由来は臓器の”肝臓”

「肝」とは、私たちの体にある「肝臓」のことを指しています。肝臓は臓器の中で一番大きく、体に入りこんだ毒性を持つ物質を中和するなどの大切な役割を果たしています。このことから「肝」という字は、「肝心」や「肝要」など、物事の「大切な部分」を表す言葉に使われています。

「銘じる」の「銘」は、元々は碑や板などに刻み込まれた文章自体を指していましたが、「刻み込む」「記す」「心に刻み込んで忘れない」の意味も持つ言葉です。

つまり「肝に銘じる」という言葉は、「大切なところに刻み込んで忘れないようにする」という意味の言葉になります。

正しい漢字は「銘じる」、「命じる」と書くのは間違い

「肝に銘じる」という言葉の「めいじる」の漢字を、「命じる」と間違えて書くケースが多く見受けられます。

「肝に銘じる」とは「刻み込んで忘れないようにする」という意味なので、「銘」を「命」と書くと「(肝に)命令する」と意味が変わってしまうこととなります。「命」の漢字を使うのは間違いとなりますので、覚え間違いやパソコンでの変換間違いなどに注意しましょう。

また、「姪」を「銘」と間違えて書いているケースも見受けることがあります。「姪」は、兄弟や姉妹の娘のことを意味しますので間違いです。

「肝に銘じる」の使い方と例文とは?

「肝に銘じる」は自分自身でも相手に対しても使う

「肝に銘じる」は、自分自身でも、相手に対しても使う言葉です。

自分自身で使う場合には、相手から言われたことを「自分は忘れない」と相手に対して宣言する言葉となります。一方、相手に対して使う場合は「忘れないよう」にと相手に依頼や命令をする言葉となります。

ビジネスでは「肝に銘じて○○する」と使うのがベター

「肝に銘じる」の言葉は「心にしっかりと刻み込み忘れないようにする」ことを意味します。

しかし、ビジネスの場で使う場合には、「肝に銘じます」や「肝に銘じて頑張ります」だけでなく、「肝に銘じて○○します」と具体的な行動を添えることがおすすめです。例えば、上司にミスを叱られた時お客様からクレームを受けた時など、「肝に銘じ、今後は細心の注意を持って扱うようにいたします」と答えることで、肝に銘じたことでどいういった行動をしようとしているかをより相手に伝えることができます。

「肝に銘じる」を使った例文

「肝に銘じる」を使った例文をご紹介しましょう。

  • お話をお伺いして、自分の至らぬ点や今後どのようにすべきかが良くわかりました。今日のお話を肝に銘じて、今後より一層頑張っていく所存です。
  • 取り返しのつかないミスを起こしたにもかかわらず、誰一人自分を責めずにフォローしてくれた。このことを肝に銘じて、恩返しができるよう努力せねばと思う。
  • お客様から我が社の電話対応に対して厳しい指摘が入りました。この指摘は肝に銘じ、二度と不快な思いをお客様に与えないよう対応の見直しが必要です。

「肝に銘じる」の類語とは?

「骨に刻む・心に刻む」は同じ意味の類語

「肝に銘じる」の類語には、「骨に刻む」「心に刻む」があります。

「肝に銘じる」の「銘じる」も「刻み込む」の意味を持っており、「肝に銘じる」「骨に刻む」「心に刻む」のいずれも「強く刻み込んで忘れないようにする」の同じ意味を持ちます。

「留意する」は敬語の場合に適した類語

「肝に銘じる」は、一般的には上司や取引先など目上の人に対しては使わない言葉です。「肝に銘じる」を使うのではなく、類語「留意する」を使い「ご留意ください」という敬語表現とするのがよいでしょう。

「肝に銘じる」に類似した表現

「肝に銘じる」同様に、「肝」を使った他の慣用句を紹介します。

「肝が据わる」の意味

「肝が据わる」とは「度胸がある」ことを表しています。「肝に銘じる」とは別の意味を持つ言葉となります。

「肝を冷やす」の意味

「肝を冷やす」は「びっくりする」ことを意味し「肝に銘じる」の類語ではありません。

「肝に刻む」という言葉はない

「肝に刻む」という慣用句はありません。「肝に銘じる」「胸に刻む」の2つの慣用句を間違って誤用した例と思われます。

「肝に銘じる」の英語・韓国語表現とは?

「肝に銘じる」の意味の英語は”keep in mind”

「肝に銘じる」を英語で表現する場合は、“keep in mind”“take to heart”のフレーズを使うのが適しています。「keep it in mind that ○○」や「take ○○ to heart」とすると、「○○を肝に銘じる」の意味となります。

「肝に銘じる」の意味の韓国語は”가슴에새기다”

韓国にも「肝に銘じる」と同じ意味の言葉“가슴에새기다”があります。「명심」は「心に強く刻み込む」の意味の「銘心」に当たるハングル語で「가슴에새기다」を「肝に銘じる」として使います。

まとめ

「肝に銘じる」は、「心に強く刻み込んで忘れないようにする」の意味を持ち、ビジネスの場面でも使われることが言葉ですが、漢字の間違いが多く見受けられます。言葉の意味をしっかりと理解した上で、正しい漢字の使い方と適切な使い方をするようにしましょう。