「とばり」の意味とは?「帳」など漢字や熟語も紹介!類語・英語も

「とばり」は、和歌などによく使われる響きも美しい詩的な表現を持つ言葉です。カーテンのような”区切りを作る物“という意味で使ったり、“周りが見えない”と比喩的に用いられる場合もあり、幅広い用途で使うことができます。今回はこの「とばり」の意味と、漢字表現の「帳」や小説でよく使われる「夜の帳」、熟語・類語もあわせて解説していきます。

「とばり」とは?

「とばり」の意味は”たれぬの・おおいかくす物”

「とばり」の意味は、“たれぬの・おおいかくす物”です。室内と外部の境を区切ったり隔てるための「たれぬの」という意味と、あるものを見えなくするための「おおいかくす物」という意味を持っている言葉です。「たれぬの」の意味合いを持つ「とばり」は“カーテン”や“日除け”のような分厚い布、また「おおいかくす物」の意味合いで言えば“何かを遮るもの”と、身近な言葉に言い換えると意味がわかりやすくなります。

「とばり」の漢字表現は”帳・帷・幄・幌”

「とばり」は漢字で表記する場合もあります。その漢字は全部で4つ。細かいニュアンスを伝えたいときは、漢字を使い分けるといいでしょう。

  • 「帳」

まずは、1番といっていいほどよく用いられる「帳」です。「帳」には「張りめぐらす幕」という意味があり、この一文字で「蚊帳」(かや)を想像させることができます。

  • 「帷」

「帷」は、戦のための作戦をねる場所・大将の陣営を意味する「帷幄」(いあく)や「帷幕」(いばく)に使われている漢字です。男らしさや勇ましさを表現したい場合に適しています。

  • 「幄」

「幄」は、テントのような「上からかぶせる幕」「周りを囲む幕」という意味があります。祭儀などに建てる、布や織物でおおった仮小屋「幄舎」(あくしゃ)などに用いられる漢字ですが、近年ではあまり「とばり」として使われていません。

  • 「幌」

「幌」には、雨や日光などを防ぐための「乗り物にかけるおおい」、または「矢などの攻撃から身を守るために鎧にかける布」という意味があります。「何かから守る」の意味合いで使いたいときには適しています。

「夜の帳」は”真っ暗であること”をたとえた慣用句

「夜の帳」は、「夜になると真っ暗で何も見えなくなる」ということをたとえた慣用句です。「とばり」の“分厚い布”という意味合いで、「先が見えない真っ暗な状態」を比喩表現しています。

「とばり」の使い方と例文とは?

「とばり」は小説や歌詞によく使われる

「とばり」は文学に使うような詩的な言葉なため、小説や歌詞、和歌などに使います。基本的に日常会話の中で使われることはありません。男女関係の色恋沙汰や酒場などの夜のシーンが多い物語では、「夜のとばり」という表現でよく登場します。

「とばり」は人の名前としても使われる

「とばり」は人の名前としても用いられます。男女どちらでも使える名前ですが、女の子につける場合が多いようです。主に「とばり」や「帳」、そして「帷」の3つの表現で名付けられています。

「とばり」はビジネスシーンや手紙にはあまり使われない

美しい響きのある言葉「とばり」は、かしこまったビジネスシーンや手紙の中でもあまり使われません。NGワードというわけではないので、ユーモアが通じる相手に使うぶんには問題はありません。

「青いとばり」は感傷的なニュアンスを与える

寒い印象を与える色「青」と「とばり」をあわせることで、切なさなどの感傷的なニュアンスを表現することができます。別の色「白いとばり」や「むらさきのとばり」も同じように使えます。

「とばり」を使った例文

「とばり」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「このとばりの向こうに行けば、あなたに会える」
  • 「彼の態度は、とばりがおりているかのようだ」
  • 「夜のとばりがおりた頃、私たちはいつもの場所に向かった」
  • 「あのときの私は青いとばりの中にいて、誰のアドバイスも聞くことができなかった」

「とばり」の熟語と類語とは?

「とばり」を使った熟語は”蚊帳”

「とばり」を使った熟語には「蚊帳」(かや)があります。「蚊帳」は文字から想像できるように“蚊や害虫を防ぐための道具”で、窓を開ける機会の多い夏の季節に使われます。「たれぬの」の意味そのままを表現する熟語です。

「とばり」の類語は”幕・盲目”

「とばり」の類語はいくつかありますが、今回は身近な言葉である「幕」と「盲目」を紹介します。

「幕」は「仕切り」や舞台で使われる「分厚いカーテン」のようなものを指し、「とばり」の「たれぬの」と似た意味を持ちます。言い換えができる類語です。

「盲目」は「物事の分別がつかない」という比喩的意味を持っていて、「とばり」の「何かに遮られて周りが見えない」という意味と似ています。「とばり」は他からの力によって見えなくなりますが、「盲目」は自らの理由で見えなくなることを表しています。

「とばり」の英語表現とは?

「とばり」の英語表現は”shroud of”

「とばり」の英語表現は、「おおうもの・幕」の意味を持つ“shroud”です。「〇〇のとばり」と表現したい場合は、「shroud of 〇〇」とイディオムで使います。

「とばり」(shroud of)の例文

  • 「夜のとばりの下で会いましょう」

“Let’s meet under the shroud of night.”

  • 「あのとき、私は霧のとばりの中を歩いていた」

“I walked in the shroud of mist at the time.”

まとめ

「とばり」は日常会話やビジネスシーンではあまり使いませんが、小説を読んだり舞台を観たりするためには知っておくべき言葉の1つです。漢字表現はいくつかありますが、どれを使ってもさほど大きな違いはでません。無理に漢字表現にするルールもないので、迷ったときは「とばり」と平仮名で表記しましょう。