「語るに落ちる」は、うっかり秘密を喋ってしまう意味を持つ慣用句です。しかし、間違った意味で使ってしまう人もいる誤用しやすい表現でもあります。
この記事では「語るに落ちる」の意味や語源、使い方について紹介します。あわせて類語や英語表現と、「語るに足らず」などの「語るに」から始まる慣用句も紹介します。
「語るに落ちる」の意味や語源とは?
「語るに落ちる」の意味は”勝手に自分から白状する”
「語るに落ちる」の意味は、“勝手に自分から白状する”です。「語るに落ちるとはこのことだ」などと、相手がうっかり秘密を白状してしまった状況を表します。「落ちる」とは「白状する」という意味です。
「語るに落ちる」の語源はことわざ”問うに落ちず語るに落ちる”
「語るに落ちる」とは、ことわざである「問うに落ちず、語るに落ちる」の前半が略されて慣用句となったものです。
「こちらから聞くと用心してなかなか白状しないが、自分から話すときは油断して思わず本当のことを言ってしまう」というのが本来のことわざの意味です。前半が省略された形で使われるため、意味がわかりにくく、誤用されることがあります。
「語るに落ちる」の使い方と例文とは?
「語るに落ちる」は意思に反して秘密を話してしまったときに使う
「語るに落ちる」は、自分の意思に反して、ついうっかり秘密を白状してしまうことです。たとえば、会話をしている相手がそのような言動をとったときに「語るに落ちましたね」「まさに語るに落ちるですね」というように状況を指摘するときに使います。
または、状況説明のまとめの言葉として小説などで使われることもあります。
「語る価値がない・語るに落ちない」は誤用
「語るに落ちる」は「語る価値がない」という意味で誤用されることがあります。意味は先ほど紹介したように「勝手に自分から白状する」ことですので、間違えないようにしましょう。
また、「語るに落ちない」という言い方もされることがありますが、「語るに落ちない」という慣用句はありません。
「語るに落ちる」の類語とは?
「口走る」の意味は”言うべきでないことをうっかり言うこと”
「口走る」とは、言うべきでないことをうっかり言ってしまうことです。「つい本音を口走る」「焦るあまりに思いもしないことを口走る」など、無意識のうちに、あるいは追い詰められたり焦ったりして思ってもいないことが口を衝いて出ることを表します。
うっかり言ってしまう行動としては「語るに落ちる」と同じ意味ですが、「語るに落ちる」は、「本当は言いたくなかったのに」という自分の意図に反するところが違う点です。
「口を衝いて出る」の意味は”次から次へと言葉が口に出る”
「口を衝(つ)いて出る」とは、次から次へと言葉が口に出るという意味です。思いがけずすらすらと言葉が出てくることを「たまっていた不満が口を衝いて出る」などと使います。
「口を衝いて出る」の意味では、「語るに落ちる」で喋ってしまうような秘密には限定していません。それよりも、無意識に心のうちにため込んでいたことなどが、なんらかのきっかけによって自然と言葉になることを表します。
「語るに」を使った慣用句とは?
「語るに足らず」は”語る値打ちがない”
「語る値打ちがある」という意味の「語るに足る」という表現を、否定の形にした「語るに足らず」という言い方をすることがあります。
「語るに足らず」は「語る値打ちもない」という意味で使われることがありますが、一般的に広く使われる表現ではありません。
「語るに足る」の意味は”語る値打ちがある”
「語るに足る」とは、”語る値打ちのある”または”語る相手としてふさわしい”という意味です。「語るに足る友人」などと、話をわかってもらえる友人という意味で使われます。
「語るに忍びない」の意味は”言うのが心苦しい”
「語るに忍びない」とは、それを言うのは心苦しいという意味です。口にするのが辛かったり、自分の口で伝えることが恥ずかしいというときに使います。「我が社の売上の惨状は語るに忍びない状況です」などと使います。
「語るに落ちる」の英語表現とは?
「語るに落ちる」は英語で”to let a secret slip”
「語るに落ちる」の意味であるところの、「勝手に自分から白状する」の英語表現には“to let a secret slip”があります。
「彼は聞かれても答えなかったが、うっかり自分から秘密を話してしまった」
He didn’t tell about it when asked, but inadvertently let the secret slip when having a conversation.
まとめ
「語るに落ちる」とは、「問うに落ちず、語るに落ちる」ということわざの前半が省略されて定着した言葉で、「こちらから聞くと用心してなかなか白状しないが、自分から話しているときは油断して思わず本当のことを言ってしまう」という意味です。
刑事ドラマなどで、「お前、語るに落ちたな」などと犯人に向かって刑事が言うセリフを聞いたことがあるかもしれませんが、一般的な会話でも使われることがあります。
また、「語る価値がない」という意味で使ったり、その意味で「語るに落ちない」と言ったりするのは誤用ですので注意しましょう。
「問い詰めても白状しなかったのに、自分から身の上話を始めるとあっさり罪を告白した。語るに落ちるとはまさにこのことだ」