「食べる」の謙譲語とは?接待で恥をかかない使い方(例文つき)

一日の中で年齢や環境を問わず、最も使われる言葉の一つが「食べる」です。日本語には丁寧語、尊敬語、謙譲語など、使う状況や相手によって言葉が変化しますが「食べる」の「謙譲」について正しい理解をしていますか?

ここでは「食べる」の謙譲語を中心に、丁寧語と尊敬語についても例文と一緒に紹介しています。誤用例とあわせてこの機会にマスターしましょう。

「食べる」の謙譲語とは?

「食べる」の謙譲語は”頂戴する・いただく”

「食べる」の謙譲語は、“頂戴する・いただく”です。接待やパーティーなどの席で食事が運ばれてきた時に目上の人に対して使う表現となりますが、実際の会話では「頂戴します」または「いただきます」となります。下記に例文を挙げてみましょう。

  • 美味しそうなケーキですね。本当に頂戴してもよろしいのですか?
  • いただくのがもったい程、手の込んだおせち料理ですね。
  • メンバーが揃いました。早速、オントレーからいただきましょう。

「頂戴する・いただく」はものをもらった時にも使える

「頂戴します」や「いただきます」は「食べる」の謙譲語として覚えておきたい表現ですが、「ものをもらった時」に相手に感謝の気持ちを込めて放つ言葉としても使えます。お土産やお祝いをもらった際は「遠慮なく頂戴します」「有難くいただきます」などのような表現を使ってみましょう。

「食べる」の謙譲語を正しく使うには?3つの注意点

日常的によく使われる「食べる」」という言葉。謙譲語を使う時に注意したい点を3つ挙げてみます。

「いただかせていただきます」は誤った表現

ビジネスシーンでは新規の顧客やお世話になっているクライアントと食事をすることもあるでしょう。緊張感漂う雰囲気に圧倒され、ついつい「丁寧過ぎる謙譲語」を使ってしまうこともあるようです。

たとえば「いただかせていただきます」は、「食べる」の謙譲語「いただく」をさらに丁寧な表現にした「二重敬語」になります。口癖で思わず言ってしまう場合も考えられますが、言葉が与えるニュアンスもくどく、敬語の使い方としても誤りとなる表現です。

また「いただかせていただきます」と同様に、「頂戴させていただきます」もNGとなります。

「食(しょく)する」は謙譲表現ではない

食に関するリポートでよく耳にする表現に「食する」があります。一般的には「食べる」を丁寧な形にした表現だという認識があるようですが、「食する」は「文章語的な言い回し」となるため、「食べる」の謙譲語として使わないようにしましょう。

「頂戴する」「いただく」は自分に対してのみに使う

「頂戴する」や「いただく」などの謙譲語は、基本的に「自分に対して使う表現」であり、いくら尊敬の念があろうとも、相手に対して使うことはありません。

たとえば、相手に対して「パスタを頂戴して下さい」「食事をいただかないのですか?」という表現は誤りとなります。この場合は「パスタを召し上がって下さい」「食事を召し上がらないのですか?」などの尊敬表現が適切です。

「食べる」の丁寧語と尊敬語とは?

「食べるの」謙譲語と一緒に覚えておきたい「丁寧語」と「尊敬語」についてまとめました。誤用が多い例とあわせてみてみましょう。

「食べる」の丁寧語は”食べます”

「食べる」の丁寧語は“食べます”です。相手が目上の人かどうか、謙譲語を使うべき人物であるかなど、状況的に問題ではない場合は丁寧語である「食べます」を使います。話している相手や周囲の状況からみて丁寧語でも失礼のない場合は「食べます」を用いましょう。

「食べる」の尊敬語は”お食べになる/食べられる/召し上がる”

「食べる」の尊敬語は“お食べになる・食べられる・召し上がる”の3つです。どの表現も相手に対する尊敬の意を示すことができますが、それぞれ言葉が与えるニュアンスが少し異なります。

おおむね「召し上がる」を好んで使う場合が多いようですが、相手の状況や会話の流れで適切な一語を選んで使うようにしましょう。

「食べる」の丁寧語と尊敬語の誤用例

「食べる」の丁寧語と尊敬語で誤用の多い例を挙げてみます。

<食事をすすめる時>
X どうぞ、お食べになられて下さい。(「お食べになって下さい」が正しい表現)
X どうぞ、お召し上がりになって下さい。(「お召し上がり」が二重敬語)
X どうぞ、いただいてみて下さい。(謙譲語を相手に対して使っているため誤り)

これら3つの誤用例の正しい表現は「召し上がって下さい」です。

<自分が食べる時>
X 召し上がってみます(尊敬語は自分に対して使わない)

正しい表現は「食べます」「いただきます」となります。「いただきます」は謙譲語ですが、現代では「食べる」という言葉はあまり品の良い表現ではないという風潮が出てきているため、おおむね「いただきます」を使う場合がほとんどです。

まとめ

「食べる」の謙譲語は「頂戴する」「いただく」で、目上の人や接待の場面で自分をへりくだる状況の時に使いましょう。「食べる」の謙譲語で誤用が多い例は「いただかせていただきます」です。いかにも舌を噛みそうな表現ですが、誤った使い方となるため気を付けましょう。

できるビジネスパーソンなら日本語の美しさの要素でもある「謙譲語」はしっかりマスターしておきたいものです。接待の場面でも自信をもって会話が進むように、「頂戴する」「いただく」を正しく使っていきましょう。