「風林火山」という言葉は、一度は聞いたことがあるでしょう。戦国武将の武田信玄に関係のある言葉として有名ですが、いざ意味を考えるとピンとこない方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は「風林火山」の意味や、続きの言葉を紹介します。言葉の由来や武田信玄との関係も紹介していますので参考にしてください。
「風林火山」のそれぞれの漢字の意味とは?
「風林火山」の意味は”すばやく動き、静かに構え、激しく攻め奪い、どっしりと構えて動かない”
四字熟語「風林火山」の意味は、”風のようにすばやく動き、林のように静かに構え、火の如く激しく攻め奪い、山のようにどっしりと構えて動かない”です。
「風林火山」の「風」の意味
「風林火山」の「風」となっている「疾(はや)きこと風の如(ごと)く」は、攻めるときのスピードの重要性を説いた文です。「攻めるときには、風のように速く行動しましょう」という意味です。
「風林火山」の「林」の意味
「風林火山」の「林」となっている「徐(しず)かなること林の如(ごと)く」は、敵に気づかれずに準備し、機会を待つことの大切さを説いています。「徐(しず)かなる」は、落ち着いて待つことを表しています。
「いいタイミングがくるのを、林のように、準備を整え、落ち着いて待ちましょう」という意味です。
「風林火山」の「火」の意味
「風林火山」の「火」となっている「侵し掠(かす)めること火の如(ごと)く」は、侵略するときの勢いの大切さを説いています。「いざ侵略し、攻め込んでいくときには、火が燃え広がるような激しさで、勢いよく戦いましょう」という意味です。
「風林火山」の「山」の意味
「風林火山」の「山」となっている「動かざること山の如(ごと)し」は、敵の挑発にのらずに、どっしりと構えることの大切さを説いています。「一度動かずに自分の陣営を守ることを決めたのなら、敵の挑発や攻撃に動じず、山のように落ち着いてどっしりと構えて守り抜きましょう」という意味です。
「風林火山」の由来とは?
「風林火山」は「孫子」の兵法を略した言葉
「風林火山」は、古代中国の文献「孫子」に書かれた文を略した言葉です。「孫子」は、戦争などの兵の用い方を解説した兵法書です。戦争で勝つためにはどのようにすればよいかを理論的に解説しています。
「孫子」には、「風林火山」という言葉が書かれているのではなく、複数ある文章から1文字ずつ取り出したものが「風林火山」です。
「風林火山」の原文と書き下し文
「風林火山」の由来となった原文と書き下し文を紹介します。
疾如風
疾(はや)きこと風の如(ごと)く
徐如林
徐(しず)かなること林の如(ごと)く
侵掠如火
侵し掠(かす)めること火の如(ごと)く
不動如山
動かざること山の如(ごと)し
それぞれ原文の最後についている漢字をとると、「風林火山」になります。
「風林火山」には続きがある?
「風林火山」の続きは「陰」と「雷」
「風林火山」とされている「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」には、続きがあります。原文は「難知如陰、動如雷霆」で、書き下し文は「知り難きこと陰の如し、動くこと雷霆(らいてい)の如し」です。
「知り難きこと陰の如し」とは、「味方の戦略などは、暗闇のように相手に知られないようにしましょう」という意味で、情報を守ることの大切さを説いています。
「動くこと雷霆(らいてい)の如し」は、「兵を動かすときには、雷のように激しくしましょう」という意味です。「雷霆」とは、激しいかみなりを表す言葉です。
「風林火山」と「武田信玄」の関係とは?
「武田信玄」の旗が「風林火山」
「風林火山」と言えば、戦国武将の「武田信玄」というイメージを抱く人も多いでしょう。武田信玄は、戦で掲げた軍旗に、「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の14文字を書いていました。戦国武将の中でも、軍旗に兵法を記載しているのは珍しいです。
武田信玄は130回ほど戦をし、敵は「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の14文字の書かれた旗を見ただけで、恐怖を感じたと伝えられています。
「風林火山」という言葉が戦国時代にあった事実はない
「風林火山」の由来とされている「孫子」には、「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」を「風林火山」の4文字にまとめた記述はありません。
また、戦国時代にも武田信玄の軍旗を「風林火山」と呼んでいたという事実は残されておらず、「孫子の旗」や「武田信玄の軍旗」という記述になっています。
そのため、「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の14文字を「風林火山」と略してまとめたのは、現代の創作や脚色ではないかとされています。
まとめ
「風林火山」は、古代中国の文献「孫子」に書かれた兵法を、略してまとめたものとされています。「風林火山」の元になったのは、「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」という記述で、「攻めるときには風のように速く、機会を待つときには林のように落ち着いて、侵略するときには火のように勢いよく、自分の陣営を守るときには山のようにどっしりと構える」という意味です。武田信玄が軍旗に使っていたため、「風林火山」というと武田信玄を思い浮かべる人も多いでしょう。知っておいて損はない知識ですので、覚えておくとよいでしょう。