「不惜身命」の意味とは?「但惜身命」「粉骨砕身」との違いも解説

「不惜身命」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。普段あまり耳にしない言葉ではありますが、テレビのインタビューなどで強い想いを表現するときなどに使われたこともあります。今回は「不惜身命」の意味を紹介します。似ている言葉である「但惜身命」や「粉骨砕身」との違いも紹介していますので参考にしてください。

「不惜身命」の意味と読み方とは?

「不惜身命」の意味は”仏道を極めるために身体も命も惜しまない”

四字熟語「不惜身命」の意味は、“仏道を極めるために身体も命も惜しまない”です。仏教用語の1つです。仏教用語ですので「仏道を極めるために」という意味になっていますが、仏教以外の場面で使うこともあり、その時には、「身体も命も惜しまない」という意味になります。

例えば、「主君のために不惜身命を貫きます」という文章があったとしたら、「主君のために身体も命も惜しまず尽くしていきます」という意味です。

「不惜身命」の意味は漢字からも解釈できます。「不惜」は、「惜しむ」という漢字に、否定を表す「不」がついており、「惜しまない」という意味です。

また、「身命」は、「身体」と「命」という意味ですので、「不惜身命」は、「身体や命を惜しまない」という意味になります。

「不惜身命」の読み方は”ふしゃくしんみょう”

「不惜身命」の読み方は、“ふしゃくしんみょう”です。「惜」は、音読みでは「惜別(せきべつ)」などの「せき」と読むのが一般的で、「しゃく」と読むのは珍しいので注意しましょう。

特に似ている漢字の「借りる」は「しゃく」と読むのが一般的ですので、間違うことのないように気をつけましょう。

「不借身命」の由来とは?

「不借身命」は法華経の譬喩品の言葉

「不惜身命」は仏教用語で、「法華経(ほけきょう、ほっけきょう)」の「譬喩品(ひゆほん)」に記載されています。「若人精進、常修慈心、不惜身命、乃可為説」という記述があり、書き下し文は「若し人精進して、常に慈心を修し、身命を惜まざらんに、乃ち為に説くべし」となります。

意味は、「もし、ある人が仏道の修行に精進して、いつも慈悲の心を修め、身体や命も惜しまないのなら、このような人のために法華経を説きなさい」という意味です。「修行する人は、身体や命も惜しまずにいるべきだ」という考え方です。

「不惜身命」と「但惜身命」「粉骨砕身」の違いとは?

「不惜身命」と「但惜身命」の違いは”惜しむ”か”惜しまない”か

曹洞宗の開祖である道元の書いた「正法眼蔵」に、「不惜身命なり、但惜身命なり」という言葉があります。「不惜身命」は、「身体や命も惜しまない」という意味ですが、身体や命をずさんに扱い、大切にしなくていいという意味ではありません。

「但惜身命」は、漢字の意味をそのまま解釈すれば「ただ、身体や命は惜しいものだ」となります。つまり、「不惜身命なり、但惜身命なり」とは、身体や命は大切なもので、無駄にすべきものではない、ということを理解しているからこそ、仏のために身体や命も惜しまないことが大切だと考えられる、と解釈できます。

「不惜身命」と「粉骨砕身」の違いは”命”

「粉骨砕身」は、「骨を粉にし、身を砕く」という漢字で、「自分の身体を犠牲にしてでも全力で働くこと、心身の続く限り努力すること」を指しています。

「不惜身命」と「粉骨砕身」は、どちらも自分の身体を犠牲にすることが挙げられていますが、「不惜身命」は、命すらも惜しまないという意味で、「粉骨砕身」は、身を削るという意味です。「不惜身命」を使っている方が、話に重みを感じることが多いでしょう。

「不借身命の六文銭」とは?

「不惜身命」は、「不惜身命の六文銭」という言葉で聞いたことがある人もいるかもしれません。ここでは「不惜身命の六文銭」について紹介します。

「不借身命の六文銭」は戦国武将”真田幸村”の家紋

「六文銭」とは、もともとは仏教の用語である「六道銭」のことです。「六道銭」とは、亡くなった後に渡ると言われている三途の川の通行料で、遺体と一緒に埋める風習があります。

戦国武将として有名な「真田幸村」の家紋は「六文銭」でした。真田氏は、戦場だけでなく日常でも、自らの身体や命を惜しまないという「不惜身命」の覚悟を表すために、六文銭を家紋にしたと言われています。

「不惜身命の六文銭」は、真田幸村の家紋として有名ですが、実際には、真田幸村の祖父である真田幸隆が旗印として使ったのが始まりと言われています。

相撲と「不惜身命」の関係とは?

大相撲力士の貴乃花関の言葉として有名

大相撲力士の貴乃花関が、横綱昇進の時に「相撲道に不惜身命を貫く所存です」と述べました。これは、「身体や命を惜しまずに相撲道に精進する」という意味で、横綱として、相撲道を極めていくという真剣な想いを伝えた言葉です。

まとめ

「不惜身命」は、「ふしゃくしんみょう」と読み、「仏道を極めるために、身体も命も惜しまない」という意味の仏教用語です。仏教以外の場面で使われることもあり、その際には「身体も命も惜しまない」という意味になります。命も惜しまないという意味から、真剣な想いを伝える場面などで使われています。